マインド1(読書) 「カバー」


 本は大事にしたい。いつも想います。それは色々な意味で想います。ただ、ここで述べるのはカバーについて。

 本と云う物には不思議とカバーが付いています。このカバーと云う物、考えてみると不思議です。ハードカバー,新書,文庫本、どれも一番表面はしっかりとした紙なのです。その上に更にカバーが。さしずめ作品の二重梱包です。

 ところが不思議な世界には、さらなる不思議が。書店で文庫本を購入すると、聞かれます。「カバーは如何なさいますか?」って。「お願いします」と答えれば、三重梱包の出来上がり。そして多くの場合、それらが紙袋に入れられます。はい、四重梱包。

 こんな不思議な状況に首を傾げつつも、「お願いします」と云うのが私。それはカバーを大事にしたいと想うから。勿論製品の一部になっているカバーのことです。そのためには書店でカバーを付けて貰いたいのです。

 多くの場合、本は文字ばかりで埋め尽くされています。その中で、唯一、圧倒的な視覚的魅力で訴えかけてくるのがカバーです。辰巳四郎さんの手掛けたカバーを見掛けたら、それだけで手に取ってしまうでしょう。何を隠そう、私が初めて新本格作品を読もうと手に取ったのは、十角館のカバーに魅かれたからでした。(新本格と云う言葉すら知りませんでしたが)

 そんな求心力を持つカバーです。が、如何せん傷みやすい。出版社によってその強度はまちまちですが、一番外側で作品を守護している存在ですから大同小異、結局傷みやすい。当然です。ちょっと引っかけたら「ビリッ」、心は「プチッ」。

 或る日、想いました。「カバーを外して読めば良いんだ!」って。でも単に外すと、作品を護るナイトが居りません。それは危険窮まりない。本末転倒です。

 想いの行き着く先は、「カバーを外してカバーをかける」でした。即ち、三重梱包を疑似二重梱包にしてしまうのです。読む本を選別したら、先ずカバーを外します。そして徐に取り出すカバー、それは書店で付けて貰ったもの。それをピッタリ本に合わせて折り込めば準備完了。心おきなくカバーの傷みも気にせずに、読書が満喫できます。

 書店で付けてくれるカバーは、時と場所により紙質が異なります。鞄の中に入れて持ち運ぶ場合は厚い紙のカバーを、ただただ自宅で読む時は薄い紙のカバーを、それぞれ選択。当然のことながら、私の引き出しには沢山のカバーが常駐してます。

 本来のカバーを外し、別のカバーを付ける。そんな可笑しなことをしているのは私だけかと想っていました。が、世の中は広い、いるもんです。知った時はびっくりでした。その人は誰でも知っている有名な作家、宮部みゆきさんでした。ちょっとしたお仲間気分。

 自己満足に浸っていると、心の奥底から微かに聞こえてきます。「そこまでする必要あるの? 大事なのは中身でしょ!」。

 ちょっと考え、矢っ張り、想います。「外見も中身も大事にしたい」、と。

Return