異国の丘 (2006/2/25)



演目
異国の丘 (1回目)
劇団・劇場
劇団四季 , 京都劇場
同行者
酒飲みねずみさん
キャスト
九重 秀隆 下村 尊則
宋 愛玲 佐渡 寧子
吉田 中嶋 徹
神田 深水 彰彦
西澤 神保 幸由
大森 江上 健二
杉浦 香川 大輔
平井 維田 修二
宋美齢 武 木綿子
李花蓮 団 こと葉
劉玄 青山 祐士
宋子明 山口 嘉三
蒋賢忠 中村 啓士
九重菊麿 武見 龍磨
アグネス・フォーゲル夫人 久野 綾希子
クリストファー・ワトソン 志村 要
メイ総領事 高林 幸兵
ナターシャ 西田 有希
抑留兵士
学生
パーティ客
軍人
憲兵
阿川 建一郎
鈴木 聡
島崎 孔明
村澤 智弘
井上 隆司
奈良坂 紀
遠藤 敏彦
中島 淳治
田井 啓
中村 巌
小島 良太
小林 遼介
趙 浩然レックス
鄒 靖宇
学生
パーティ客
戸田 真美
松田 英子
楠見 朋子
西田 桃子
田村 圭
長島 祥
グッズ等
後日CDを購入しました。CDのキャストは以下の通りです。

九重 秀隆 石丸 幹二
宋 愛玲 保坂 知寿
李 花蓮 坂本 里咲
劉 玄 栗原 英雄
吉田 中嶋 徹
神田 深水 彰彦
平井 有馬 光貴
抑留兵士たち 青木 朗
キム スンラ
八巻 大
北沢 祐輔
阿川 建一郎

美しい曲と感動的な台詞で、一番好きなCDです。特に愛玲を演じる保坂さん。九重秀隆と最初に出会い最初に発せられる「それはルール違反じゃありませんか?」の一声が、とても可愛らしいのです。これがマンマ・ミーア!で飛んでるドナの声と同一人物とは到底信じられません。愛玲の見せ場は何度もありますが、その度に美しい声が響き渡ります。登場人物が限られてのが唯一の難ですが、だからこそ纏まりが生まれています。何度聞いても感動で身体が震える一枚です。
感想など
 初観劇から約1年。戻ってきました原点、戻ってきました京都劇場。座席は…何と最後列(数学的に云うと「行」ってのが正しい気がする)の中央付近。ひぃ〜、人が豆粒だよ(^^; 表情なんてさっぱり分かりませんが、全体は見えるので、ま、我慢。

 モヤッとした舞台から、ふっと浮かび上がる抑留者たちが「いつの日〜か〜」と歌い始めるトコからスタート。ライトが当たった瞬間、いきなり大勢の人が舞台に瞬間移動してきたみたいでとても神秘的でした。光の当て方と霧で死角を作っていたんですね。すごいすごい(と観劇の仕方が理系的(^^;) そしてこの曲、一発で気に入りました。ナレーションの声が静かに響き、この作品が決してハッピーエンドではないことが観客に対し明らかなものとなります。これは難しそうな作品です。

 と思ったら、いきなり舞台は賑やかな過去のシーンへ。あ〜、なるほどっ。そうだよね。こういうシーンも上手く絡めていかないと、重い雰囲気だけの舞台になっちゃうもんね。そうかそうか、と妙に納得。冷静な部分を持ちつつも、しかし心は舞台の中へ、ずるずるずる。

 舞台から遠い席なので、役者さんがどうのこうのとか、細かい所は気にならず…の筈だったのですが、心に響く澄んだ声、これが主役の九重秀隆。あ〜、良い声だわ。後で知ったのですが、主役を演じていたのは下村さん。いろいろな作品のCDでその声を聴くことができます。すっごく良いです!

 九重と愛玲の出逢い、そして別々に夜道を歩く二人のシーンがリンクして、とても綺麗です。何が綺麗って、具体的な一つの物が綺麗な訳じゃなく、夜景,歌,リンクする二人の想いなど、それら全体が合わさって、とても綺麗なんです。そして心の奥底で私たちは知っているのです、二人の運命が良い結果には決してならないことを。

 この作品はとても音楽が素晴らしく、愛玲が自分の国を愁い歌う曲は、とても中国の雰囲気を表していて、自国愛がひしひしと伝わってきます。日本の軍隊が登場する時の曲も、如何にも戦時的な曲調。それに合わせて更新する兵士も、その雰囲気をさらに強調しています。

 舞台セットも素晴らしく、歌や表現も含めて最も好きなのが前半最後のシーン。九重と愛玲が別々に、己の国へと船で帰るシーンなのですが、船が出航する様の表現(素晴らしいです!)、お互いを想い合う心、そしてすれ違い、その諸々すべてのことを一気に表現しています。歌も一番好きで心に深く深く残るものでした。景色や雰囲気、想いまで伝わってくる曲です。
 CDで聞き返せば、すぐさまシーンが目に浮かび、涙がにじんできます。それは悲しみだけの気持ちでは決してはなく、表現の素晴らしさ、曲の素晴らしさも含めた全てが思い起こされるから。舞台を観ずCDを聞いただけで、涙ぐむことはきっとないでしょう。

 三木たかしさんの作る曲と、それを演じる劇団四季の素晴らしさ、それを身体全体で浴びながら、気付けばもう涙でボロボロです(^^; 涙を止めようとか、もぅ、無理です。涙がにじんでくる、ではなく、滝の様に頬を伝うのです。もうそのまま好きに流れてしまえ! と開き直り集中。鼻水をすする音だけは注意しながら没頭。決して辛いシーンばかりではありません。楽しいシーンもあります。しかし、戦争の虚しさが、ひしひしと伝わって来るのです。

 この作品は、悪い人は一人もいないのです。みんなが戦争のため、不幸になり、お互いを憎み合い、理解し合いたい人もいるけれど、そんな単純には物事が進まない。戦争がもたらすもの、決して繰り返してはいけないその悲劇を、ただただ、切々と観客に訴え続けただけの純粋な作品でした。

 観劇後、しばらくは重い雰囲気が身体中に残り、連続して公演されていた李香蘭,南十字星は観に行くことができませんでした。あぁ、勿体ない(><) いつかもう一度、絶対に観たい、最も心に残った大好きな作品です。

 そういえば、主役の九重秀隆は近衛文麿の子どもをイメージしているんだなぁと舞台を観て思ったのですが、後日、本当にそうだったことを知りビックリ(^^; 自分の目もナカナカ確かじゃないか、と妙に感心してみたり(笑) (2006/11/12記)

Return