コーラスライン (2010/10/9)

　観劇を始めた初期に一度観たきり、ずっと縁がなかった作品だったので、全国公演に飛びつきました。しかし、全国公演とは思えないほど素晴らしいキャスト、直前までチェックしていなかったのでびっくりしました。

　飯野さんって、まだまだしっかり踊れるんですね。前回も飯野さんだったのですが、声の印象はあれど、踊りの印象はありません。アイーダのゾーザー役で踊っているのを観た時（と云っても、ゾーザー自身は殆ど踊りませんが）、すごい統率力を感じました。ザックでもそれは健在、しかも今回は、ザック自身がきっちり踊ります。大変失礼ですが、年齢的なこともあり、こんなに踊れるなんて思ってもいませんでした。素晴らしかったです。

　ストーリィは単純、単調。しかし、CDで聞いているよりも、ずっと「コーラス」しています。また、一人が歌っている時に別の人が入ってきたり、誰かがザックに告白を続けている間に他の人たちの心境を表現したり。そういった繊細な部分が、適切な間とともに表現されていました。こういう作品だったのか、と改めて認識。

　それぞれの告白は性に関する物が多いですね。しっかり聞いていると、けっこう凄い内容が多くて、これも驚き。四季はもっとクリーンなイメージでしたから。少しだけ、「春の目覚め」を思い出しました。
狭い劇場でも、精一杯役者魂（？）をぶつけられる、表現できる、そんな作品なのだと思います。この作品が作られた当時、ミュージカルは下火だったのかな。ただ、やはり単調なだけに、中弛み系の作品であることは否めないと思います。

　ザックは大半見えないので、注目は樋口さん。やっぱり素晴らしいですね。それに、初めて気付いたのですが、素晴らしいプロポーションでした。役的にぴったりかと思います。これまでヴァルに対するイメージは、「整形してもその程度のスタイルなの？」と云う感じだったのですが、「整形してこうなるなら役ももらえるだろうなぁ」に変わりました。明瞭で、強い意志を感じる発声、特にこれだけパワーのある歌声、やっぱり樋口さんは最高です！

　ダンの松浦さん、ものすごく久しぶりです。マンマ・ミーア！を当初大阪へ遠征して観に行っていた頃、ビルは松浦さんだったんですよね。しかし、ビルはあまり踊らないので、ここぞとばかりに踊る姿を目で追っていました。

　すごい格好良いダンスしている人がいる…誰だろう？　と思って、終劇後にキャストチェックしたら、萩原さんでした。気付けなかったのは淋しかったですが、名前をみて納得。

　坂田キャシー、すごく期待していたのですが、ダンスは当然問題ないとして、台詞の部分が少し弱いかな、と。途中に休憩のない作品のため、ちょうど観ていて疲れてくる頃でもあり、するする～と終わってしまいました。

　増本シーラ、格好いいです。増本さんって、ここまでねっとり（？）になりきれないイメージがあったのですが、そんなことはありませんでした。

　岩崎リチー、すごく力強かったです。松島勇気に対するイメージと近かったです。表現の幅が広いな、と思いました。（特にダンス）

　アルの菊池さん、台詞は良かったです。が、ダンスに目を引かず。ちょっと期待し過ぎちゃったかな？

　小川クリスティン、可愛かったです。えぇ、ほんとに。

　田邊ポール、最初のダンスから、どこか目を引く物がありました。線が若干細い気はしますが、それでも何かが違う。何か持っている人ですね。

　熊本ディアナ、ずいぶん味のある歌い方でした。また、役に対して慣れているというか、ディアナが染みついている様にさえ感じました。ただ、私は、ディアナにはもっと「音」だけで心を掴んで欲しいです。心に響く歌い方ですが、全体をリードする時、愛した日々に悔いはない、この曲は強烈に圧倒して欲しかったです。

　全体的なまとまり、素晴らしかった。やはり、四季が得意とする、四季のベースとなる作品なのでしょう。ディアナに樋口さんを入れたら、もっと違った雰囲気になったのではないかな、と思いました。個人的な趣味ですけどね。（2010/10/23記）