赤川次郎




三毛猫ホームズの世紀末
ストーリィ
三毛猫ホームズシリーズ第27弾。片山義太郎刑事、妹の晴美、石津刑事、そしてホームズの通常メンバに加え、今回は石津刑事の従姉妹・雪子が登場。ふとしたことから有名詩人と知り合いますが、どうも怪しい影が見え隠れ。一方、義太郎は大学生の売春に関わる事件を調べます。
感想
冒頭から登場する有名詩人・白鳥聖人。彼の怪しい行動と、雪子の関係。そして義太郎が捜査に当たる売春事件。その2本が柱となり、絡み合い構成された作品。聖人の母親が例によって(作者お得意の?)、少々極端なお人。雪子はどうなってしまうのか。そしてホームズは今回も推理をせず、ボディガードでした。
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三毛猫ホームズの好敵手
ストーリィ
幼馴染みにして、ライバル。同じ小学校。同じ中学校。同じ高校。同じ大学。トップを争ってきた二人は、同じ女性を奪い合う仲に。方や一流企業の社長。方やその企業で使われる一社員。二人の差は何なのか。そして幸せなのは?
感想
三毛猫ホームズらしい作品でした。ただ単に、シリーズの登場人物が登場するだけという作品もありますが、本作はちゃんとこのシリーズらしさを保っています。ストーリィはストレートで、表現もストレート。その中でも作品の個性を出すことは勿論可能なはずです。この様に「らしさ」を大切に、量産して欲しいと思います。
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幽霊温泉
ストーリィ
幽霊シリーズ第16弾の短編集です。

 「自由をこの手に」:突然人が変わってしまった様に、仕事と遊びに精を出す男
 「生きるべきか、死すべきか」:3000円のチケット30枚を買うことになった宇野警部
 「幽霊温泉」:メールで不倫の約束をした妻に気付いた夫
 「聖者が街へやって来る」:ノイローゼになってしまった夫と、女王様の妻
 「見えない鉄格子」:過換気症候群の妻と、義弟の恋人の死
感想
「自由をこの手に」と「聖者が街へやって来る」は同じような展開。夫は仕事の関係で人が変わってしまい、妻は宇野警部と旧知の間柄。それでも事件の裏側には大きな違いが。妻も普通の女性と、女王様。似た様な物が、少しの違いで大きく姿を変える、そんな2作です。「生きるべきか、死すべきか」の動機は意外性があります。「幽霊温泉」は作品の入り方が面白い。「見えない鉄格子」は過換気症候群を、最初から最後まで巧く使っています。
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幽霊博物館
ストーリィ
幽霊シリーズ第17弾の短編集です。

 「幽霊博物館」:知り合った男性の妻に殺された男の兄弟が現れる
 「海より深く」:TVに出演することになった宇野警部
 「火葬場の煙はななめに上る」:またまたTVに出演する宇野警部
 「見知らぬ人への挽歌」:ラウンジで席を譲ってくれと云われる
 「旅路の終り」:愛人と逃げた父は入院して愛人にも見捨てられた
感想
表題作の「幽霊博物館」は幽霊シリーズらしい作品。完成度も高く、第1作目の「幽霊列車」を思い出しました。ミステリィ要素もしっかりしていますし、シリーズの1作としてみても良い作品です。「見知らぬ人への挽歌」は不思議なシーンから始まり、最後のオチまで、楽しく読める作品です。逆に「旅路の終り」はしっとりとした落ち着きのある作品。作者も色々と変化を付けようとしているのではないかと感じました。
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待ちわびた花嫁
ストーリィ
亜由美と聡子の大学生コンビ、少女アニメ大好きな亜由美の父、殿永刑事、亜由美の恋人の谷山先生、そして犬のドン・ファンがドタバタと事件を引っかき回す花嫁シリーズ第14弾。

 「三十年目の花嫁」:2億円を作るため誘拐を企てる新婦
 「待ちわびた花嫁」:結婚式の最中に逮捕された夫を10年間待っていた妻
感想
どちらも2億円のお金が絡んだお話です。簡単に人が死んでしまって、しかも誰も悲しんでいない感じなのはちょっと淋しいですが、軽い雰囲気に仕立てるためには仕方ないのでしょうか。「待ちわびた花嫁」のトリック(?)はちょっと面白いですが、法律的にはどうなんでしょう? もっとも、現在の世の中ではあまり効果がないでしょうね。
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花嫁は女戦士
ストーリィ
亜由美と聡子の大学生コンビ、少女アニメ大好きな亜由美の父、殿永刑事、亜由美の恋人の谷山先生、そして犬のドン・ファンがドタバタと事件を引っかき回す花嫁シリーズ第15弾。

 「花嫁は心中しない」:夜の仕事をする女子大生はストーカまがいに付きまとわれる
 「花嫁は女戦士」:異国で消息を絶った女子学生は時を経て日本へ戻る
感想
「花嫁は心中しない」は展開がころころ変わるめまぐるしさが魅力です。夜の仕事、付きまとう男、古過ぎる風習と結婚、そして亜由美をはじめとするレギュラ陣。中編の魅力を十二分に生かした作品です。「花嫁は女戦士」は遠くから作品を見ている印象。読んでいても若干冷めた感じになってしまいます。リアリティに乏しい…と言い出したら、どの作品もそうなのですけれど。
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モンスターの花嫁
ストーリィ
亜由美と聡子の大学生コンビ、少女アニメ大好きな亜由美の父、殿永刑事、亜由美の恋人の谷山先生、そして犬のドン・ファンがドタバタと事件を引っかき回す花嫁シリーズ第16弾。

 「名門スパイの花嫁」:犬猿の仲の食品会社とスパイの存在
 「モンスターの花嫁」:亜由美の目撃証言が切っ掛けで窮地に追い込まれた男性
感想
「名門スパイの花嫁」の方が面白い! 二つの食品会社の対立と、そこで振り回される家族,婚約者たち,そしてレギュラーメンバ。ストーリィ展開も、最も赤川氏らしいパターンではないでしょうか。「モンスターの花嫁」はちょっと重い人間感情が絡んだお話。人間のキタナイ部分を見せているところは良いのですが、このシリーズの雰囲気とマッチしているかどうかは疑問です。
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花嫁よ、永遠なれ
ストーリィ
亜由美と聡子の大学生コンビ、少女アニメ大好きな亜由美の父、殿永刑事、亜由美の恋人の谷山先生、そして犬のドン・ファンがドタバタと事件を引っかき回す花嫁シリーズ第17弾。

 「花嫁よ、永遠なれ」:新婚旅行から帰ってきた直後、夫は殺人容疑で逮捕された
 「花嫁に明日はない」:誤解が重なり勢いにも押されアフリカへ飛んだ亜由美
感想
「花嫁よ、永遠なれ」の展開は赤川氏らしさに溢れています。イキナリ読者を意外性で引き込み、レギュラー陣の登場、意外性との融合、そして…。このワンパターンな展開に微妙な変化を持たせ続ける赤川作品に、味わいを感じる今日この頃です。
「花嫁に明日はない」ももちろん同様の設定、展開です。が、この作品でナットクできないのが、必ずしも必要としない悲劇が含まれている点です。赤川氏の作品では良くある悲劇なのですが、なぜこれが必要なのか、私には理解できません。
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