赤川次郎




恐怖の報酬
ストーリィ
生の世界と死の世界。生の世界で起こる様々なこと、特に不思議なことには死の世界からの影響があるかもしれません。

 「神の救いの手」:何故か次々と不幸から救われるOL
 「使い走り」:課長に苛めを受け続けたサラリーマンと、逆の立場になった課長
 「最後の願い」:最後の願いを叶えた元警察官と約束を守る死の住人
 「人質の歌」:銀行強盗とアイドルと銀行員の戦いの裏にも潜む死の世界
感想
ホラーですから完全に後味の良い作品とは言い切れません。ですが、どこかに救いのあるのも事実。特に「使い走り」では、どろどろだった前半が、ステキな終わり方をします。ホラーらしくはないかもしれませんが、こういう澄んだ読了感は好きです。展開も早く、死と身近な生の世界がテンポよく流れていきます。
↑リストへ   感想へ戻る



月もおぼろに三姉妹(三姉妹探偵団19)
ストーリィ
婦女暴行の容疑で逮捕された父。「父さんを信じてくれ」なんて伝言が百合子先輩を通して届いたけれど、何でこんなことになっちゃったんだろう。弟もナカナカ学校に行きたがらないし、お母さんはもっと大変だし…。百合子の後輩・牧野幸は逃亡する父親と、それに伴う生活環境の変化に悩んでいた。しかも当の父は、テレビにも出演したり、何が何だか。彩子・珠美・国友刑事も当然の如く巻き込まれるドタバタ劇。
感想
こまった父です。ストーリィが進めば進むほど、こまった度が上がっていく感じ。私だったら最後にドカンと鬱憤をぶつけなければ気が済みません。でも、この作品に出てくる方々は寛容で、どんなにドタバタで、どんなに大変なことになろうとも、心が広いのですね。父の行動パターンや心理的なものは、相当不自然ではありますが、そういうところは気にしない方が良いのでしょう。
↑リストへ   感想へ戻る



校庭に、虹は落ちる
ストーリィ
過去に大切な何かを置き忘れた少女・さつき。転校した学校にも迷子になり、辿り着くことが出来ません。公園でぶらぶらしていた彼女を見付けたのは、転校先の生徒・畑山。学校での出来事を忘れてしまうさつきと、中学での辛い思い出を持つ畑山。二人は過去の自分との対決を余儀なくされます。
感想
学校を舞台に、人間の汚らしさと都合の良さと暖かさ。色々な側面を全て見せてくれる様な作品です。学校で起きる悲惨な事件。それがどれ程心に影響を与えるか、そこがスタートになっています。過去と向き合う事の大変さ、そして上手く行かないもどかしさ、つらさ。それでも収束へ向かう感じは赤川作品らしさに溢れています。
↑リストへ   感想へ戻る



作者消失
ストーリィ
作家の赤川次郎が姿を消した。新米編集者の榎本悦子は、連載小説の解決編に当たる原稿を求め、赤川次郎を探す。ところが早々に頭を殴られ、気付いたら殺人事件の容疑者に。彼女を助けるのも、追いかけるのも赤川作品のシリーズキャラクタです。
感想
ホームズ+晴美(三毛猫ホームズシリーズ:光文社)、大貫警部+井上刑事(四字熟語シリーズ:講談社)、マリとポチ(天使と悪魔シリーズ:角川)、南条美知+大岡(南条姉妹シリーズ:集英社)。これだけのメンバが登場する豪華作品。どたばたの展開ですが、悪役(?)・大貫警部の存在感が良いですね! 赤川作品を沢山読んだ人なら、絶対に読んでおきたい一冊でしょう。
↑リストへ   感想へ戻る



赤頭巾ちゃんの回り道
ストーリィ
妻のため、警察官を辞職した尾田和成。再就職先に選んだ探偵社。そこでの初仕事は、小学生のボディーガードだった。複雑な家庭環境。屈折した思い。職務を正確にこなす尾田だったが、彼が休暇を取ったその日、小学生は誘拐されてしまう。
感想
主人公の家庭、依頼人の家庭。どちらも問題を抱えています。それがメインであり、読み手を惹きつける面は持っています。が、不必要な物が、それを邪魔しています。探偵社社長の娘・靖子の存在がそれ。色事が過ぎます。誠実な人柄であるはずの尾田。靖子の行動が、それを打ち消してしまっています。ちぐはぐ。
↑リストへ   感想へ戻る



そして、楽隊は行く
ストーリィ
妻のため、警察官を辞職した尾田和成。再就職先に選んだ探偵社。そこでの初仕事は、小学生のボディーガードだった。複雑な家庭環境。屈折した思い。職務を正確にこなす尾田だったが、彼が休暇を取ったその日、小学生は誘拐されてしまう。
感想
主人公の家庭、依頼人の家庭。どちらも問題を抱えています。それがメインであり、読み手を惹きつける面は持っています。が、不必要な物が、それを邪魔しています。探偵社社長の娘・靖子の存在がそれ。色事が過ぎます。誠実な人柄であるはずの尾田。靖子の行動が、それを打ち消してしまっています。ちぐはぐ。
↑リストへ   感想へ戻る



明日なき十代
ストーリィ
懐かしの名画ミステリー第4弾の短編集です。

「明日なき十代」:ラブホテルで起きた殺人事件の犯人は女子高生?
「泳ぐひと」:元気に泳ぐ老人に心惹かれた女性の行く末とは…
「たそがれの維納」:ウィンナコーヒーを楽しんでいたことが、そもそもの始まりでした
「愛情の瞬間」:タレント志望の女性が自殺したのは不釣り合いなマンション
感想
表題作の「明日なき十代」が、最も赤川作品らしい雰囲気と展開。容疑者の女子高生。その母親は捜査に当たっていた刑事にとって、昔の恋人。性格は相当強引で、目的のためには手段を選びません。この辺の設定がいかにもです。「泳ぐひと」はホラー色が強い作品で、怪しい魅力に溢れています。「たそがれの維納」はいかにも映画的なシーンから始まります。このシリーズに相応しい作品だと思います。
↑リストへ   感想へ戻る



白鳥の逃亡者
ストーリィ
チェロの天才少女・涼子は、まだまだ多感な16歳の女子高生。音楽、家庭の問題、そして恋。ふとした切っ掛けで殺人犯と知り合った彼女は、同情心から逃避行に同行します。
感想
やはり赤川作品らしい展開のストーリィ。安心感とマンネリは常に背中合わせ。同じ様なシチュエーションの作品は何本も書いてきた赤川氏。それでもスタイルを変えずにいるのは、或る意味、頑固なのかもしれません。だからこそ、洗練された自分の持つ世界に、少しずつアクセントを含ませる術を心得ている様にも感じます。
↑リストへ   感想へ戻る



友よ
ストーリィ
離ればなれになった仲良しの少女3人は女子高生になった。互いに何かあった時はすぐに駆けつける約束をして。修学旅行の直前、一通の絵葉書が届いた。テディベア。友人が危機に陥っていることをしり、修学旅行もほっぽり出し、真っ向から危険に立ち向かっていきます。
感想
作品の中心に案が一つ。今回は「別れた少女が約束したテディベアの絵葉書」です。その幹を伸ばしていき、作品にしてしまうのが赤川氏のパターン。典型的な氏の雰囲気です。ドタバタあり、ヤクザ的な存在もちらほら。人間の扱いがやや軽い感じはうけますが、シリーズ物にはない新鮮味があります。
↑リストへ   感想へ戻る



さすらい
ストーリィ
変わってしまった日本。誰も云いたいことが云えず、弾圧の日々。戦争への道。そんな日本から追い出されてしまった一人の作家が海外で死を迎えたという報道が伝わります。
感想
これが赤川作品なのでしょうか。初読でそれを看破できる人は少ないと思います。「あれ、違う人の作品?」と思わず作者を確認してしまいます。世界の作り方、ストーリィを収束させる感じは、まさしく氏の作品です。しかし、普段よりも重厚な世界、シチュエーションは進化し続ける作家・赤川次郎を感じました。
↑リストへ   感想へ戻る