深谷忠記




飛鳥殺人事件
ストーリィ
知人の女性から「夫が帰らない」と連絡を受けた刑事の宇津木。高松塚古墳のある飛鳥へ行ったらしい、との言を元に捜査を進めると、知人から借りていたマンションへたどり着く。そこには微かな血痕が。やがて失踪者は首無し死体となって現れる。
感想
作品を通して、色々な親子・家族が登場します。中でも気になるのが、宇津木刑事の家族。離婚を経験し、妻・娘と別れて暮らす日々。その離ればなれの状態に変化が…と、なったにも関わらず、とってもあっさと片付いてしまいます。折角シリーズ作品外なのですし、もっともっと焦点を絞って欲しかった。宇津木刑事に完全なスポットを当てた構成…って無理だったのでしょうか?
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横浜・木曾殺人交点
ストーリィ
代議士が殺される。姿を目撃された一人の女性は何者か。数日後、「助けて頂いたお礼に」と送られたソーセージを食べた男性が、毒死する。さらに見付かる死体。事件に関連性はあるのか。勝部長刑事、宇津木刑事が捜査に当たります。
感想
宇津木刑事が再び登場です。時間的には飛鳥殺人事件の後。宇津木家の家族がどうなるのか、ドキドキ。…だったのですが、特に大きなイヴェントはありません。その代わり、心安らぐほのぼの感がありました。今後も登場して欲しい家族です。成長過程はまた一つのドラマを生むでしょう。
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0.096逆転の殺人
ストーリィ
性器を切り取られた男性の遺体が発見。彼は何故かくも無惨に殺されねばならなかったのか。やがて性器はバーのママに送られて発見されます。何故ママの元へ送られたのか。被害者の妹早苗や勝刑事らは一つずつ解決と云う糸を解していきます。
感想
残虐な事件、その異常性は或る意味魅力的。「何故だろう」と考えさせられます。が、正直期待はずれ。トリックは幾つも現れますが、それがとりあえず成立しているのは警察が無能だから。それでトリックを大きく見せているようにも思えます。普通に科学捜査をすればすぐに判明することも無視されていますし、トリックも成立しないものがありそうです。(途中で終わってしまいましたが)プランクトンの講釈とか面白かったんですけどね。短編でスパッと終わらせると良い感じになったかも。
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甲子園殺人事件
ストーリィ
甲子園出場決定。 しかしその直後、部員が酒を飲み女性に乱暴?! 真相究明乗り出したのも束の間、被害者の女性がマスコミに事実を吹聴していた。計画的に見える事件。背後に潜んでいるのは誰なのか。やがて事件は血なまぐさい殺人へと様相を変えていく。
感想
主人公は一応高校2年生の洋子でしょう。が、この女性がどうしても女子高生とは思えません。口調、行動、雰囲気。どれ一つ取っても社会人を数年経験した20代後半の女性に感じます。キャラクタが変わっても常に同じ口調の女性が登城する。とても残念。トーリィは平坦ですが、テンポは悪くありません。もうすこし人物の変化が欲しいところです。
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ハーメルンの笛を聴け
ストーリィ
いじめが原因で自殺した中学生。母親から警察に届けられた一通の手紙。そこにはハーメルンの笛吹男を名乗る者が、次なる事件を予感させる言葉を記していた。第2、第3の事件。その度に届く手紙。何故この様な手紙が届くのか。何故事件は起きるのか。江戸川乱歩賞最終候補作。
感想
いじめや子供社会を描いた作品です。ハーメルンの笛吹男を名乗る者からの手紙が「何故」と云う疑問を、常に読者に抱かせます。全体的とてもまとまった印象で、完成度も高い作品。ただ、最後は少々型どおりと云うか、ありきたりな収束になってしまった感じも受けます。型に収まりきることの出来ないい人々を描いた作品でもあるだけに、その雰囲気を最後まで残して欲しかったと思います。
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