深谷忠記




人麻呂の悲劇
ストーリィ
柿本人麻呂。歌人として名高い人麻呂も、その存在に関しては謎が多い。覆面作家・飛鳥彰が取り上げた題材は、その人麻呂。24年前に失踪した人気作家・山岡竜一郎を探すため、美緒は飛鳥彰と対面することになる。
感想
人麻呂の話が兎に角多い。作家・飛鳥彰の書いた文面が、これでもかと続きます。全体の半分くらいがそれに当たるでしょう。その中には壮や美緒たち、レギュラー陣が登場するわけでもなく、単調。純粋に歴史関連書物を読んでいる様な印象です。でもそこに集中仕掛けると、殺人事件。このバランスの悪さが苦痛です。
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釧路・札幌1/10000の逆転
ストーリィ
美緒の友人が殺される。容疑者は別居中の夫と、恋人。しかしどちらにも鉄壁のアリバイが存在する。便利屋を利用した不審な車移動、ウィルス騒ぎ。壮と美緒はアリバイを崩すことが出来るのか。
感想
プロローグで便利屋が登場し、いかにも怪しげなところが良い感じ。誰がどう見ても怪しい。本編が進んでも、読者の頭に「いつ関係してくるんだろう…」と思わせます。また、長編らしい長編で、色々な事件・視点が一点に収束していく展開を楽しめます。
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能登・金沢30秒の逆転
ストーリィ
美緒が友人の知世と出掛けたのは北陸・能登。そこで知世の兄の恋人だった女性を見掛ける。数日後、その女性は死体となって発見。カレンダーに残されたSの字は何を意味するのか。捜査の結果浮上した容疑者には、鉄壁のアリバイが存在した。
感想
壮と美緒の、もっとも典型的なパターンを踏んだ作品の一つです。美緒が事件を持ってきて、容疑者にはアリバイ、壮がそれを崩す。このパターンを純粋に楽しむには良い一冊でしょう。逆に、少々物足りなさを感じるかもしれません。安心感と物足りなさが背中合わせの作品です。
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弥彦・出雲崎殺人ライン
ストーリィ
美緒が取材のため出雲崎へ。壮はアシスタントとして同行。そこで二人が見掛けた一人の女性が謎の死を遂げた。「ヤヒコニイッテ ウラ」と云うダイングメッセージを残して。彼女は何を伝えようとしたのか。壮と美緒は勝部長刑事に捜査協力をする。
感想
婚前旅行崩壊パターンの第3弾。美緒の父が逮捕された1回目。美緒が腹痛に倒れた2回目。3回目の二人に割り込んできたのは…って、ここまで云ってしまうと或る意味ネタバレ? 事件自体には全然関係ないのですが、シリーズとしてはこういうパターンは重要だと思います。ダイイングメッセージはとても明解ですんなり読めるところがベターです。
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尾道・鳥取殺人ライン
ストーリィ
美緒が大学時代の友人4人と向かったのは鳥取。女4人で楽しい旅、の筈だったのに、仲間の一人が突然怒り出し、帰ってしまいます。釈然としないものを感じつつも旅を続ける3人でしたが、別れた彼女は鳥取砂丘で死体となって発見された。砂の上にはダイイングメッセージが…。
感想
ダイイングメッセージ物。今回は鳥取砂丘の砂の上です。曖昧に判別できるその文字が、様々な可能性を考慮させ、捜査はなかなか進捗せず。そこで壮と美緒が事件に首を突っ込み口を出す訳ですが、刑事の一人と衝突を起こします。刑事の態度が悪い! ってことで片が付くのですが、部外者の態度が大き過ぎだと思うのは私だけでしょうか…。
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指宿・桜島殺人ライン
ストーリィ
美緒の友人の叔母は事件に関係しているのか。取材のため鹿児島に向かった壮と美緒。そして勝部長刑事も事件の捜査で鹿児島へ。彼らが出会う時、事件は解決への道を歩み始めます。
感想
美緒の友人の叔母、彼女の周りで起こる不思議なことが事件の匂いを漂わせています。しかし何も起こっていない。叔母の様子も、どこかおかしい。それと平行して、勝部長刑事は事件に一直線。素人探偵と本職の刑事と、バランスがとれた作品です。
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伊良湖・犬山殺人ライン
ストーリィ
笹谷美緒は、担当の作家・水戸雄太郎から、轢き逃げ事故にあった弟・水野大二郎への届け物を引き受ける。神戸から東京へ。弟・大二郎へ荷物を届けた美緒は、彼の友人渡と出会う。その数日後、美緒と壮は誕生日を祝ったホテルで殺人事件に遭遇。美緒は壮を待つ間、挙動不審な渡を見掛けていた。
感想
愛知県を舞台にしたシーンが多数登場。やはり使われるのが明治村ですね。他に舞台にしたくなる場所が乏しいのかもしれません。本作には一卵性双生児が登場します。これはもう、入れ替わりトリックのアリバイか! と、ついつい考えてしまいますが、そこまで単純ではありません。展開が進むに連れて深まる謎。最後は一気に解決してくれました。
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札幌・オホーツク逆転の殺人
ストーリィ
日本エンターテイメント賞を受賞した新人作家・鳥海昌夫に会うため、美緒は北海道へ向かった。美緒の手には、たった今製本された彼の処女作が。一刻も早く見せようと北海道に辿り着いた美緒だったが、約束の時間を過ぎても鳥海昌夫は現れない。そして発見された死体。鳥海昌夫が手にした賞金500万円はどこへいったのか。
感想
プロローグが面白く、人間関係、それぞれの背後(背景)が気になります。そして第一章。美緒が登場すると「あ、いつも通りだなぁ…」と。それは一長一短があるのですが、このプロローグだったらば、美緒の登場がもっと遅くても良かったのではないかと思います。極端に云えば、壮と美緒のシリーズでなく仕上げて欲しかったとさえ思います。でも、これまでのシリーズ作品に比べると、若干リアリティに富んでいて、面白く感じました。
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萩・津和野殺人ライン
ストーリィ
美緒を両親に紹介するため、郷里の萩へ向かった壮。無事に壮の両親と対面を果たした美緒は、萩の町を散策する。そこで見掛けた一人の男性が、萩城跡で死体となって発見された。被害者は壮の親類が経営しているホテルの宿泊客。彼は死の間際に「イシバシ」と云う言葉を残していた。イシバシ…それはホテルの長女が7年前に駆け落ちをした相手の名前だった。
感想
これ程続いていたシリーズですが、漸く両親に紹介と云うシーンが登場。この調子だと、ゴールインにはまだまだ十年くらいかかりそうです。が、二人の関係に進展があると、シリーズ物としての面白さを感じることが出来ます。作品全体の纏まりも十分で、テンポも良い。壮の推理は相変わらず根拠が薄弱ですが、それでも楽しめる作品です。
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