西村京太郎




十津川警部 長良川に犯人を追う
ストーリィ
東京のホームレスが焼死する事件が発生。事件当時不審な二人組を見かけた新聞記者の白木は放火を疑い調査を始めます。岐阜は長良川まで行き調査を進めた白木でしたが、何者かに襲われ命を落とします。十津川警部と亀井刑事も白木の死の真相を探るため岐阜へ。ホームレスと繋がる二年前の事件を探り当てた二人でしたが、関係者の口は重く、圧力までかかることに。
感想
十津川警部と亀井刑事の行動力は相変わらず。東京が関係しているのはホームレスと白木殺害事件だけ。舞台は殆ど長良川になり、その間ずっと行きっぱなし…なのはいつものパターンです。ホームレスの焼死からストーリィを始め、その調査を最初に始めたのが新聞記者という設定が良い感じ。いきなり十津川警部が乗り出すよりも展開に変化ができますし、事件の見え方が徐々に変わってくるので読みやすい作品です。
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裏切りの特急サンダーバード
ストーリィ
やり手のスリ、元JRの運転手、銃の名手、自殺未遂の美女、落ちぶれた双子のボクサー。一人の人間によって集められた彼らが特急サンダーバードを乗っ取り、乗客の身代金を要求。偶然にもその列車に乗っていた北条早苗と連携をとる十津川警部だが、用意周到な犯人に見事出し抜かれてしまう。
感想
特急サンダーバードとは、旧雷鳥のことなのですね。不思議な犯罪者たち。彼らの行動は自信に満ち溢れ、警察や関係者をあざ笑うかのよう。手際も見事で爽快感すら覚えます。ところが途中から何やらおかしな雰囲気に。前半と後半では犯人たちの像が可成り違います。バタバタした感じなのですね。作品自体も忙しく集結してしまいました。少々釈然としない物が残ります。
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十津川警部 雪と戦う
ストーリィ
小説「伊豆の踊子」の舞台となった天城トンネル。現在は使用されていないそのトンネルが、何ものかに爆破されます。その現場を目撃した女子大生が東京で殺害。十津川警部は捜査に乗り出します。その後、越後湯沢のスキー場でも小爆破が発生。犯人の狙いが絞りきれない状況でしたが、事件は急展開を見せます。
感想
最近の作者は事件の起こり、設定に気を使う事が多い様です。本作は「伊豆の踊子」の舞台であるトンネルを選んだことに加え、そのトンネルを爆破した理由が分からない「不思議さ」がポイント。さらに事件がスムースに流れていきます。例によって東京でも事件が発生したことから登場する十津川警部。早々に東京を離れて捜査に当たるところは勿論強引なのですが、それを問題視することもないでしょう。行動力に拍手。
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竹久夢二 殺人の記
ストーリィ
東京駅でミス岡山の女性が射殺された。彼女は竹久夢二の未発表スケッチブックを持っており、数千万円の値打ちが付くとも云われていた。しかしスケッチブックはどこからも見付からない。果たして夢二の作品を巡る事件なのか。彼女の父親はやり手の弁護士で、牛窓の再開発反対派と対立していた。そして反対派のリーダ夫妻もまた、夢二と深い関わりがあったのである。
感想
題名だけを見ると、西村京太郎と云う雰囲気がありません。しかし十津川警部は今回も東奔西走です。夢二に関して殆ど知らない人でも、本作を読むことで分かりやすく知識を仕入れることが出来るでしょう。夢二に関する史実と、フィクションの事件。そのバランスがとても良い作品です。
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金沢加賀殺意の旅
ストーリィ
カメラマン湯浅の元に届いた一通の手紙。「加賀の女」とは誰なのか。当たりを付けた湯浅は東京から北陸へ。目的の女性が片山津で女将をしていると突き止め、会いに行くことに数年ぶりの再会を喜ぶ二人ですが、彼女は手紙を出していないとのこと。しかもその晩、何と湯浅が射殺されてしまいます。手紙を出したのは誰なのか、またそれは何のために。
感想
不思議な手紙が、ストレートに読者を作品の世界へ誘います。謎の手紙の真実を探る湯浅、ところが一気に雲行きが怪しくなります。この辺りは流石です。例によって十津川警部は事件がある限り、日本全国何処へでも。東京で仕事をしなくて良いのでしょうか…。
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愛の伝説・釧路湿原
ストーリィ
タンチョウを愛護する団体が釧路湿原にある。ここでは数百匹のタンチョウが、人の助けを借りて生きてきた。その愛護団体を訪れたボランティア希望の女性。多額の寄付をする彼女にどこか気に入らない感情を抱いていた愛護団体の持田も、彼女の献身的な活動により心を開いていく。傷ついたカモの世話をしたり、孤児となったタンチョウの親代わりとなる日々。しかし一人のボランティア男性が死体となって発見される。
感想
釧路湿原のタンチョウと愛護団体の活動。とてもドラマティックです。長い歴史と現在まで受け継がれるその活動。そこへ飛び込んできた謎の美女。彼女の行動に不審さを感じつつも、その行動は真実と知る持田。…という展開なのですが、これは十津川警部シリーズ作品。殺人事件が発生します。十津川警部が登場すれば売り上げは大きく伸び、出版社としてはシリーズ物を求めるのでしょう。ただ、西村作品を殆ど読んできた私が思うのは、「西村京太郎は十津川警部物以外も凄い!」と云うことなのです。ミステリィにせず、十津川警部も登場せず、ただただ釧路湿原とタンチョウのドラマを描いて欲しかった。それができる人だけに、少々勿体ない作品と思います。でも十津川警部の台詞、「なんだ、畜生!」。こんな十津川さんが好きです。
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十七年の空白
ストーリィ
5人の刑事にスポットが当たった、十津川警部シリーズの短編集です。

 「十七年の空白(十津川警部)」:学生時代の友人夫妻が助けを求めてきた
 「見知らぬ時刻表(亀井刑事)」:亀井刑事が拾った時刻表と殺人事件
 「青函連絡船から消えた(西本刑事)」:西本刑事が青函連絡船で人を突き落とした?
 「城崎にて、死(日下刑事)」:日下刑事がコンビニで見かけた美女が死ぬ
 「琵琶湖周遊殺人事件(田中刑事)」:サイクリング中に狙撃された田中刑事
感想
警視庁捜査一課の十津川警部グループ。そのメンバ一人一人にちょっとだけ重点をおいて、短編集とする。良い趣向です。が、何故に北条早苗刑事がいないのでしょう? 逆に、田中刑事って誰? 「琵琶湖周遊殺人事件」は、別の短編集に入れるべきだったと思います。また、「見知らぬ時刻表」は、かなり以前に書かれた作品の様です。JRでなく、国鉄でしたから。カメさんにスポットが当たった作品は、相当多いのですし、或る程度時代設定がそろっていた方がより良い感じになったことでしょう。
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風の殺意・おわら風の盆
ストーリィ
カメラマンの田村が知り合った知的な女性・小野寺ユキが姿を消した。彼女の住むマンションを訪ねた田村は、小野寺ユキが実名でないことをしる。彼女を探すため、富山県八尾へ。折しも町は祭りで賑わっていた。
感想
ストーリィは前後半で完全に2分されています。前半はカメラマン田村が主役。一人の女性の姿を探し求め、閉鎖的な雰囲気の町へ飛び込むサスペンス色の強い展開。後半は十津川警部が同じように町と闘います。が、前半あれほどスポットの当たった田村はさっぱり登場せず。もう少し出番を与えてやりたいと思ってしまいます。寧ろ、十津川警部を登場させないくらいで、ちょうど良かったのではないでしょうか。
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十津川警部 帰郷・会津若松
ストーリィ
十二年前代議士を刺し殺した男・高木は刑期を終えて出所した。彼のポケットには一つの手紙。差出人は「福島県東山温泉内 佐々木綾」。彼の知らぬ名である。故郷からの手紙と云うことに興味を惹かれた彼は、福島へと向かう。
感想
会津若松と云ったら白虎隊。事件の背景に、舞台に、それを引っ張って来ています。そのため、思いの外しっかりと白虎隊についての説明があります。それがとても面白く、興味を惹かれます。事件の方は、何故、高木は事件の動機を黙秘し続けたのか、と云うところがポイント。高木の視点と十津川警部の視点が絡み合い、分かりやすい展開となっています。
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十津川警部「射殺」
ストーリィ
亀井刑事が息子と釣りをしていて見付けたビン入りの手紙。「タスケテ」と書かれた内容に、誘拐事件を感じ取った十津川警部たちは捜査を開始。時を同じくして、連続射殺事件が発生した。
感想
きっかけ。今回は海で見付けたビン入りの手紙でしたが、最近の西村作品は最初が肝心。ちょっぴり興味を惹くイヴェントが、十津川警部を事件へと駆り立てます。内容は昔から西村氏が好むタイプ。何度か同じ様な組織の話を読んだのですが、初めて読むと結構面白いのかも知れません。
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怒りの北陸本線
ストーリィ
両名を繰り取られた死体が、東京新宿の公園で発見される。残虐な事件に立ち向かう、十津川警部とその部下たち。被害者は、何故、かくも無惨な殺されたのか。捜査のため、北陸へ向かった十津川警部と亀井刑事は、東京で新たな事件が発生したとの報せを受けた。
感想
西村作品において、これほど残虐な、惨い死体が登場するのはとても珍しい筈。ちょっと記憶にありません。何故、西村氏は、このような事件を発生させたかったのか。そんなところが気に掛かってしまいました。が、結局、いつもの西村作品らしい雰囲気へと近付いていきます。ちょっと意外な展開も、普段通りの雰囲気も、一気に味わうことが出来る一冊です。
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松山・道後十七文字の殺人
ストーリィ
亀井刑事が投稿した俳句が特別賞に入選した。表象のため、妻と共に四国へ向かった亀井刑事だが、他に入選者の姿はない。彼が呼ばれたのは、「3つの気になる内容の俳句が投稿された」ことを相談するためだった。東京に戻った亀井刑事は、上司の十津川警部に相談。別の事件で手が離せなかった十津川警部は、元部下で私立探偵の橋本に捜査を依頼した。
感想
何とも亀井刑事を馬鹿にした特別賞と云う気がしますが、そんなことで気を悪くするカメさんではありません。或る意味、十津川警部よりも存在感のあるカメさん。生粋の刑事というキャラクタがしっかり描かれています。容疑者に対するときは、ちょっと感情的。十津川警部と話すときは、聞き役であり、視線を転換する役割を担う。カメさんに注目して読むと面白い作品です。
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伊豆 下賀茂で死んだ女
ストーリィ
実力よりも、その容姿で脚光を浴びた若手女子テニスプレイヤーが殺された。伊豆下賀茂の現場に残されていたのはメロン最中。事件と最中が密接な関係にあると推測した十津川警部は、全国の警察に調査を依頼するが芳しい結果が得られなかった。
感想
現場に残されていたアイテムに、メロン最中というちょっと変わった物を使ったところがポイントです。誰もが「ん?」と思い、かつ、「事件と無関係でした」って結末もあり得るものです。誰もが注視しきれないものに、十津川警部は己の「勘」を信じて突き進む強さと楽しさがあります。
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南九州殺人迷路
ストーリィ
警視庁捜査一課の西本刑事は、大学の先輩から勧められお見合いをすることに。先輩の住む地・九州まで休暇を取って訪れる。しかし先輩はお見合い相手を紹介するやいなや、鹿児島へ旅立ってしまう。一方、お見合い相手の女性からは「全部嘘です」との手紙を受け取り、女性も姿を消していた。
感想
西本刑事と云えば、テレビシリーズでは森本レオ氏が演じるあの方です。ハネムーンで新妻を殺された過去を持つ…らしいですが、私は忘れていました。どの作品でしたっけ? 本作はそんな西本刑事が新たな恋をする物語。九州で一人右往左往する西本刑事。東京では十津川警部が操作をしていますが、多くの場合、部下に何かあると十津川警部自身がすぐにカメさんと出てきて事件を横取り(?)するものです。しかし今回はしっかりと西本刑事に任せていた感じ。十津川警部も大人になった?
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東京湾アクアライン十五・一キロの罠
ストーリィ
東京都内で発見された絞殺死体。それは事件の序章に過ぎなかった。「タクサンノヒトガシヌ」と云う書き置きには、三角形の図形が描かれていた。一体何を意味しているのか。十津川警部ら捜査陣が頭をひねる中、計画は着々と進行していた。ハローワーク(職安)に通っていた顔見知りのグループは、今、東京湾アクアラインの破壊に動き出す。
感想
ハローワークに通っていた人々が、社会に対する不満を共感し、犯罪行為に走る。実にありそうでなさそうな展開です。だからこそ、小説としては読みやすいのでしょう。文字通り、一直線の一気読み。展開に勢いがありますから、気楽に楽しく読める作品です。
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