天童荒太
<ノンシリーズ> |
孤独の歌声 (新潮文庫) 永遠の仔 (幻冬舎文庫) |
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孤独の歌声 |
ストーリィ
心にキズをもつ女性警察官、朝山風希。世間を騒がしている、一人暮らしの女性を狙った誘拐事件が気に掛かり、本来の職務にもイマイチ熱が入らない。そんな折、近所のコンビニで強盗事件が発生。店員の一人が刃物で刺され、重傷。その防犯カメラに写っていた一人の人物に、風希は注目した。
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感想
日本サスペンス大賞の優秀作となった作品。一筋縄ではいきません。それは「読者を騙してやろう」とか「ストーリィをややこしくしよう」と云うことではありません。展開が一本調子ではない、と云うことです。作品の中の世界、そこで暮らしている人、生きている人がいると、確かに感じます。何故なら、心があるから。登場人物に、魂が注入されているからです。作者の作品に対する愛情がなせるワザでしょう。
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永遠の仔 |
ストーリィ
瀬戸内海のとある病院で知り合った3人、優希・ジラフ・モウル。彼らが過ごした第八病棟は児童精神科、通称「動物園」。親になりきれない親のため、心と身体にキズを負った彼らだが、少しずつお互いに心を通わしていく。やがて訪れる退院の日、一部の退院する患者と家族は、霊山・石鎚山に登る。そこで3人は、人を殺すつもりであった。17年後、彼らは再会を果たす。看護婦となった優希、刑事となったジラフ、弁護士となったモウル。再会が彼らにもたらした物とは…。
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感想
とにかく凄い作品。文庫版では全5巻ですが、冗長な感じは一切ありません。読み始めると止まらない。それは、確かに生きている世界が、そこに描かれているからです。多くの人物が登場しますが、そこには魂があります。一人一人が、作者にとって本当に子供の様な物なのでしょう。それ程の愛情を感じます。優希たち3人の行動・言動は、多くのことを教えてくれます。忘れていたこと、当たり前になっていたこと、気付かなければならないことを、伝えてくれます。決して軽い作品ではなく、息苦しささえ覚える展開ですが、頑張って読む価値が充分ある作品です。
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