アニメビジネスフォーラム・レポート

アニメビジネスフォーラムという、アニメファンにはある意味縁遠い話にもともと興味があるので、わざわざお金を払って1日だけ参加してみました。

このフォーラムは、アニメーション製作のプロデューサーはどんなことを考えて仕事をしているか、ということがメインでしたが、普通の会社の管理職が(どちらかというと部長職くらいの)やっていることと、それほどかわらないなぁ…というのが感想です。
また、出版社・放送局・制作会社・広告代理店、それぞれの立場でやることは違うけれど、大きなくくりではお金と企画を中心とした調整業務で、それがまだ普通の会社のようなある程度定型化されていない部分で大変なことになっているという感じがしました。

さて、ここから個別に幾人かの講師の話を書いてみます。

<小学館>の久保さんは、ポケモンを中心としたキャラクター管理をしている方です。久保さんが、出版社について「大きな規模の会社ではない」ということを強調していたのが、妙に印象的でした。確かに、出版社ってそんなに規模の大きい会社じゃないんですよ。むしろそれに絡む会社の方が大きいくらいです(印刷会社などの製造業に類する方が大きいんです)。そこで、一つのテーマに雑誌企画として偏って展開できるということが出版社のキャラクターを育てるためのメリットになるといっていました。
それもそうだけど、アメリカでキャラクタービジネスをするためには、訴訟なしでも20億円/年 法廷費用がかかることを覚悟した方がいいというのは…厳しいという感じです。ポケモンも、そうやって何とか市場を作っていったんでしょう。

<よみうりテレビ>の諏訪さんは、犬夜叉や名探偵コナンをはじめとするNTV系月曜19時のアニメのプロデューサーです。関東地区のゴールデンタイムを中心としたアニメ視聴率の表で視聴層の解説をしたり、犬夜叉・名探偵コナンの編集版を作ってCMや手間入れの説明をしてくれました。中CMは、犬夜叉は19:20頃 名探偵コナンは19:45頃とずいぶん違いがあることなど、かなり細かい説明をしてくれて、この手の話を知らない人には助かる説明だったと思います。
それと、放送局の人は、視聴率戦争の中にいるということを、話を聞いていて感じました。

<WOWOW>の海部さんは、WOWOWでは映画調達の仕事をしておられます。元TBS社員で、バラエティー・芸能番組(笑ってポン!、ザ・ベストテンなど)もやっていたそうです。アニメについては、3年ほど前の「ブレンパワード」「アニメコンプレックス」がはじめての接点だったとのこと。権利購入番組が多く、継続的視聴を促すためにアニメというのは WOWOWに取っては欠かせないものとなっているとのことです。
映像表現について、主題、内容を検討して考査判断するという、他の民放ではほとんどやられていない(NHKは結構やっているが)ことをやっているのには、感心しましたね。十分な議論と私見の排除(考査見解は一つ)は、WOWOWらしさを感じました。ちなみに、映画でいうR指定までの放送しかできないようで、そのR指定も22:00-5:00という限定があるとのこと。カウボーイビバップ(TXでは途中まで放送)やからくり草子あやつり右近など、かなり今の民放では厳しい内容のものも放送できることが、何となく納得できました(でも、同じ民放連の基準を使っているのに、どうしてこんなに違うんだろう)。

<東映アニメーション>の関さんは、おじゃ魔女どれみ#やデジモンのプロデューサーとして、その筋では有名な方です。制作会社・出版社・テレビ局・広告代理店・スポンサーの調整がメインであるので、その調整の難しさと、どれみなどで取り入れている制作会社が原作となり、代理店としての調整機能をもつという形態の説明がありました。
それよりも、マンガなどの原作者が最近アニメ化に対しての個人的な要望を提示したりすることで、なかなか原作をおさえにくいということや、オタク層はマーケットとして5から20万程度のスケールしかないし、さらにそれが10パターンくらいに指向性が分かれていて、関さんが対応しているアニメとは相容れないものであるということもおっしゃっておりました。
さらに、アニメはあくまで小さい子どもたち向けのものがメインであり、TVの多くあるジャンルの一つにすぎないということもおっしゃっておりました。 私が聞いた感じでは、あくまでオタク向けのアニメは子供向けアニメの上にのっかっているものという認識にとれました。

<マーベラスエンターテインメント>の片岡さんは、もともとアサツーDKという広告代理店(その昔は旭通信社)でアニメビジネス全般の調整をされていた方です。日本のアニメは、番組の提供主が商品化権を持つという妙なシステムで成り立っているが、それも厳しくなっているのではないか、という話がありました。TX6局ネットで電波料(放送するためのネット費用など)2000万/月 制作費が4300万/月もかかる。30秒1枠で900万/月もする費用を、キャラクター使用権を得るためには割に合わないというのがその論拠らしい。それと、エヴァンゲリオンで提供している会社のほとんどは実は電波料しか払っておらす、制作費はキングレコード(というよりスターチャイルド事業部)が全額負担したとのこと。いろんなことをやっている大月氏を何かと批判するファンも多いが、それは筋違いだと思います(少なくとも、プロデュースという面から見ると)。
70年代にアニメ番組によって商品がヒットするようになってきたこと(☆マジンガーZの超合金☆キャンディ・キャンディの女児玩具☆ガンダムのガンプラなど)
80年代では商品ヒットがなく、週刊少年ジャンプがある意味アニメ番組による商品としての成果としてあげられる
90年代は、☆エヴァンゲリオンによるビデオ☆ポケモンによるゲームボーイ☆そして遊戯王でのカードがあげられるといった内容についても、説明しておりました。

それにしても、片岡さんは敵に回してはいけない人のようです。ある講師の方が好調なことを述べられていたのに、具体的に別の側面について述べましたし、損害補償請求権を契約につけた方がいいことを述べたときも、その実例をだして説明していましたから。

かなり長い文になりましたし、なかなか難しい話ではありましたが、おつきあいいただきありがとうございました。

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