アルカロイド (goa) 目が醒めて、まわりを見まわす。 いつもと変わらない自分の部屋だ。 あまり整頓されていない普通の部屋。 しかし、僕の日常の中で唯一世間とかけ離れている個所がひとつある・・・ それは、薬品庫。決して「くすり箱」ではない。 茶色の薬瓶がたくさん並び、白いラベルが整然とこちらを向いている。 僕はその中のひとつに手を伸ばす。 『アルカロイド』 ラベルにはそう記されている。 口元に笑いを浮かべ内容物を小瓶に移す。 (すけっち) 『誰をヤルのか決まっている・・・』 そんな言葉が口にでる。 そうあいつだよ。あいつ。 僕はこの小瓶さえあれば生きてゆける。 (夕月 勉斗) カーテンを開けると、どんよりとした空が覗く。 絶好の天気だ。 僕は羽織った真っ白なジャンバーのポケットに小瓶を詰めて外へと向かう。 3丁目のスーパーを過ぎればあいつの家はすぐそこだ。いつもなら、付近の 道路を通ることさえ嫌悪を感じるが、今日という日は特別だ。 片一方のポケットから、ジャンバーとお揃いの皮手袋を取り出し身に付ける ・・・。 (舞奈) 「あっ!」 皮手袋をだすついでに小瓶まで出てきた。 僕は反応しきれず、 ガシャン!!! 先ほど苦労して詰めた薬は、無惨にも道端に散った。 (goa@残業中) 辺り一面に砕けたガラスの破片と飛び散った錠剤・・・ 小瓶はどうでもいい。錠剤を拾わなくては! このまま放置して子供や動物が誤って口にしたら大変なことになる。 僕はクスリを拾い集めた。 !!2錠足らない! 小瓶に移すときに確かに25錠入れた。 管理ノートにも25と数値を記入したのを覚えている。 どこにいったのだ? 辺りを更に見回す。 (夕月 勉斗) しかし、どれほど辺りを隈なく探しても見当たらない。 こうなってしまうと、可能性としては排水溝から下水に流れ込んだとしか 考えられない。 (すけっち) ふとっ…後ろに人の気配が、  振り返ると…。 (夕月 勉斗) 「・・・猫か。」 僕は安堵の溜息をついた。 人の気配と猫の気配を間違えるとは、緊張のしすぎだろうか。 僕は猫を一瞥して排水溝に視線を戻した。 (goa) !!! もう一度振り返って見て驚いた。 先ほど猫だと思ったのは猫耳の女の子だったのだ。 しかも、マニアの方に大好評なメイド服(謎) 「おくすり・・・落ちてたにゃ」 少女は小さな手のひらに錠剤を乗せてこちらに差し出す。 (JENNIFER) 小さな手のひらには乗っているのは2錠。 確かに小瓶に入っていたものと同じ物。 「ありがとう。」 手のひらに乗っていた錠剤を取ろうとしたとき もう片方の手の銃が僕に突き付けられた。 (夕月 勉斗) 「くっ! 目からビームを出すんじゃないのか?!」 (舞奈) 「それはパチモンにゃ。」 「パチモンはお前だろ?」 (goa) 「まだ、自分の置かれた立場が分かっていないようにゃ?」 少女は銃のロックを解除して引き金に指をかける。 「待ってくれ!いったい君は何者なんだ?どうして僕が狙われなければい けないんだ?」 思いついた疑問を少女に問う。 少女は薄笑いを浮かべて答える。 (夕月 勉斗) その薄笑いは僕を戦慄させるのに十分だった。 少女は何もかもを知っているような口調で、もう一度僕に問うた。 「自分が何をして来たのか、もう一度思い出してみるにゃ。」 (GOA) 僕のしてきたこと? ・・・角のたばこ屋のおばあちゃんがお釣りを間違えたときにそのまま、 ネコババしたこととか・・・・ 「まさか!?コインランドリーで中を確かめずに洗濯物を入れて洗って、 家に帰ってから他人の下着があったことに気付いたけどそのまま捨てちゃ ったことか!?」 言った後でなんとなく違うことに気が付いた。 「・・・・・・長い説明、お疲れにゃ。でもちがうにゃ・・・」 少女が呆れた顔で僕を見下ろして答える。 「じゃあ・・やっぱりたばこ屋のおばあちゃんが・・」 「違うって言ってるにゃ!!」 少女の否定によって僕の言葉は遮られる。 「自分の行いが分かっていないようだにゃ。一緒に来てもらうにゃ!」 少女は言い放つとパチンと指を鳴らす。 すると、屈強な黒服の男が2人現れた。 「じゃ、早速お茶の水博士を捉えるにゃ!!」 少女が僕を指さして男たちに命令する。 あれ?お茶の水? 「誰だ?お茶の水博士って?僕はそんなヤツは知らないぞ!」 「嘘を言ってもだめにゃ、こっちには写真があるにゃ!」 少女は胸元から写真を取り出して僕に見せる。 しかし、その写真に写っているのは太っちょの白い鼻ひげを蓄えたじーさ んだった。 「待たんかいっ!僕じゃないぞ!その写真は!!」 「にゃ?ほんとにゃ・・・」 少女は写真と僕を見比べて考えている。 「間違えたにゃ!さらばにゃ!!」 少女はそう言い残すと黒服の男とともに走り去っていった。 (JENNIFER) ここはどこだ? 懐かしい風景だ。 どこかで見たことある。 どこで見たのだろう。 よくわからない。 あそこに立っている老人はだれだ!? こっちに向かって歩いて来るぞ。 この老人も見たことある。 そう、この少し太めの老人。 そう、この白髪の老人。 そう、この鼻ひげまで白い老人。 どっかでみたことある!!! (すけっち) 「じぃちゃん?」 (夕月 勉斗) 「ふぉふぉふぉ・・・久しぶりじゃのう。こんなところまで来るとはどう したんじゃ?」 鼻ひげを引っ張りながらじぃちゃんは尋ねた。だけど、聞きたいのはこっ ちのほうだ。 「解らないよ! 気が付いたら、ここに居たんだ!! 一体ここは何処な の? なんで、某社イメージキャラのパチモンに出会ってお茶の水博士な んて言う老人と間違えられるんだ? 教えてよ、じいちゃん!! 大体、僕はこのアルカロイドで・・・!!」 「ほぅ・・・アルカロイド? そんなものを何に使うんじゃ?」 うっかり口を滑らせた僕は慌てて口を被うが、遅い。じぃちゃんにはしっ かりと聞こえてしまった。 (JENNIFER) アルカロイド・・・ そういえばこのアルカロイドで何をしようとしていたんだ? よくわからない。 考えると頭が痛くなる。 だんだん目の前がぼやけていく。 助けて、じぃちゃん・・・・。 (すけっち) 僕はいつも、そこで目が覚める。朝の日差し。 何度となく、この日常がくりかえされる。 「そう、じいちゃんをアルカロイドで殺してから・・・」 逃れられない悪夢。                         (終り)