幻想少女〜昏き場所で光を待つ少女〜  ・・・昏い・・・  ・・・・・ここは何処なの?  ・・・・・・・何故私はここに存在する【いる】の? 辺りは昏く、圧迫するような暗黒。 「闇」  ・・・怖い・・・ 何も見えず、何も感じられない空間。その中で存在するものの精神【こころ】 だけは、確実に現していたといえる。 「闇」のなかで「精神」の持ち主は今までに感じたことのない、脅えと いう感情に「精神」乱されていた。  ・・・今まではこんな事、思ったこともないのに・・・ 「精神」の持ち主は、必死でその不安な感情を消そうと過去から、その 対処法を探ろうと記憶をたどる。しかし、その記憶さえ、「今まで」と 呼ぶことの出来る思い出はない。  ・・・・・何も・・・・・思い出せない・・の・・・? 全身から力が抜けていくのを感じる。 張り詰めていた気が緩み力を失う。しかし、不思議なことに力が弱まっ たと言うのに、空間が固定されたように「精神」の持ち主に対しても、 力場【フィールド】の固定を行使している。  何も、思い出せない。  何も、出来ない。  何故、ここに存在するの?  何故、動けないの?  私は、何のために・・・・・  私は・・・・・ 意識が無限のループに架かろうとすると、急に空間が明るみを通した。 橙色の暖かな、穏やかな光。 光と呼ぶにはあまりにも希薄で消え入りそうだが、その微弱の光を全身 にまとった「精神」の持ち主は力に固定されたまま、優しく抱きかかえ られ、寝かされる格好となる。 その奥、遠い場所から声も聞こえる。音も聞こえる。 声は、音は、確実に大きくなってくる。  ・・・・・・・・・・・・・・・ 「精神」の持ち主にとってはその光が、声が、音が、近付いてくる事が 知らず知らずに鼓動を早める要因となっていた。  ・・・ハヤク・・・ 声が漏れた。 刹那、 辺りを覆うばかりの「白銀」の世界が、「精神」の持ち主を包みこんだ。 しばらくして身体の自由がきくことに気付いた。 その包みこんだ白銀を抜け出す。 助けてくれた声に礼を言うためだ。 声の主と思われる男の子は肩で荒い息をしていた。 下半身も痙攣している。表情は満足とも憔悴ともとれる複雑な表情だ。  大丈夫? その顔と目があう。 「精神」の持ち主は精一杯の微笑みを向けていう。  愛を与えてくださってありがとう。 その言葉に男の子は面食らった様だったが、一つ微笑みを返し、言った。 「「本」に「愛」を与えて、「キャラ」にお礼を言われるとは思わなか った。しかも、愛しい少女に、ね☆」 男の子の手が伸び、私、「精神」の持ち主を包んでいた白銀を取り払う。 綺麗になった素肌から延びる緑透明な羽根が、なおも白銀の滴をひき、 輝きは薄れる事無く、愛によって「現」が「在」る・・・・・。                             End