漢中王劉備

曹操は魏軍敗れたとの報に接すると、憤りをあらわにし
自ら劉備討伐の軍をあげた。

曹操 おお、妙才(夏侯淵)。わしを置いて死んでしまったのか。
くそう、劉備のわらじ売りめ!!!
生かしてはおかん!!!!

曹操来襲との知らせを受けた劉備であったが、いたって冷静であった。

劉備 曹操が来たとて怖れる事はない。
漢中はぜったい手放しやしない。

劉備は漢中の要害を押さえ、曹操は攻めあぐんだ。
対峙は長期に及んだ。曹操軍中では脱走者が出てきた。

曹操 鶏肋。だ。
許渚 ????

曹操の側にいてこれを聞いた許緒は夏侯惇に尋ねた。

夏侯惇 ?なに?ケイロクの意味が分からない?
曹操様がそう言ってたって?
ふーん。分からんなあ。なんかの暗号かなあ。

それに対して、揚修はこう説明した。

揚修 ああ。それは、退却の合図ですよ。
鶏肋は、鶏の肋骨のこと。いい出汁を出すが、
それ自体は 捨てても惜しくはない。
曹操様は鶏の肋を漢中に喩えておられるのです。
今すぐ退却の準備をなさるがよろしいでしょう。

夏侯惇 なに!?退却だと!?
そんなことは有り得ん!
まだ妙才の仇を取っておらぬでは無いか!
わし自ら殿に聞いてくる。

揚修 お待ちください将軍。
あなたは長い間殿に仕えていて殿の気持ちもわからないのですか。
夏侯淵殿の仇を討ちたいと思うのは殿も同様。ですが、
敵は要害を固め、攻略することはきわめて困難です。
安易に退却すると言えば兵が動揺するだけでなく、
大国魏の威信にもかかわります。
事は隠密裏に運ばなければならないのです。

夏侯惇 そ、そうか。 うむ。
殿の言うことは時々分からぬ。
だが、貴殿はいつも殿の真意を当ててくださる。
貴殿に相談してよかった。


曹操軍は退却した。
劉備の配下はこれを嘉し、揃って彼を漢中王に推した。
漢中王とはかつて漢の始祖の劉邦が、称した名前であった。
劉備は漢の皇帝に上奏文を奉り、漢中王の位を受けた。
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