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杉峠 No.19 当時は「わらじ」を知らず、革の登山靴で登りました。

鈴鹿
谷尻谷
1984/8/2〜3

Hiro、Hくん

夏休み。学校へ行き補習を受け、家に帰ってテレビでロサンゼルスオリンピックを見る、そんな毎日に別れを告げるべく、Hくんと近鉄に乗った。

8月2日 朝明でバスを降りて、まずは羽鳥峰へ。わずかな登りがえらい*1。靴にドロを付けながらヒロ沢を降りて、愛知川へ。鈴鹿で、これだけ水量のある川は初めてだ。
山腹の登山道を下流へ向かい、七丈淵あたりからは、川沿いに歩く。水たまりの中に、赤い腹のイモリ(Cynops pyrrhogaster,有尾目,イモリ科)を見た後、天狗滝の上へ。ここで昼飯をとった。沢沿いに歩いたので,水を飲み過ぎたのか、おにぎりがのどに入らない。

青々と水をたたえた天狗の廊下を俯瞰した後、天狗滝の下へ向かった。沢沿いに下ろうとしたが、微妙なへつりを必要とする場所があったので、一旦諦めて、上りなおして高巻こうとする。しかし、うまくいかなかったので、もう一度下へ降りた。残置ボルトに助けられて、へつりをこなし、二人とも濡れずに済んで、何とか谷尻谷出合へ着いた。アルパインガイド*2の写真と同じ景色だが、とても雄大に感じて、感動。

谷尻谷に入ろうとするが、とても沢沿いには登れず、左岸から高巻いた。しかし、ルートをミスって、Hiroはかなり大きく巻くことになりえらい目*3に遭った。Hくんと再会し、ホッと気がゆるんだとき、枯れ枝が足に刺さって、少し怪我をしてしまう。

一ヶ所、靴を脱いで渡渉した後、大休止。そのまま、のんびり日向ぼっこをした。その後、いくつかの小滝を、たっぷり楽しみ、北谷尻谷出合に着いた。このあたりは、谷が広がり、流れも緩やかになっており、西日がさし込んで明るくなり、いい感じ。
ツェルトをはって夕食。たき火に挑戦したが、あえなく失敗した。
疲れた一日だった。

8月3日 朝 6:15 発。小さいナメがちょくちょく現れ、右から支流を合わせるた辺りから、流れの上に枝がかぶさるようになり、うっとおしい。
しばらく行くと、約30mの大滑滝に着いた。黒い岩を、細流が絡むように流れ落る。二人とも感動の声をあげ、カメラの無いのを悔やんだ。

左岸からの高巻きに苦労した後、水を補給して、いよいよ源流への急登&薮漕ぎに取りかかった。だいぶ疲れてきていたのだろうか、Hiroのルートミスで、右へあがりすぎ、ブッシュの中を直登した。ススキと熊笹の混生地帯になったが、踏み跡はない。元気がなくなり、草に絡まってほどけた靴ひもを直すのも面倒くさくなってきた。トップをHくんに変わってもらったが、彼についていくのすらおっくうとなっていた。

Hくんの頑張りで、踏み跡に出て、ようやくイブネにたどり着く。へたり込んだ。レモンが美味い。
佐目峠の手前に、測量のヤグラがあったので、登ってまた休憩。
何とか佐目峠に出た、と思ったら、踏み跡が消える。仕方なく下重谷を一気に降りる。予想通り、コクイ谷から杉峠への道の途中へ出る。

途中でシカ(Cervus nippon,偶蹄目,シカ科)を見た。こちらに気づくや否や、急斜面をぴょーんぴょーんと駆け下りていった。

根の平峠で、大事にとっておいたオレンジを分け合い、朝明へと降りる。バス停で靴下を脱ぐと、ヤマビル(Haemadipsa zeylanica,顎蛭目,ヤマビル科)が出てきた。たたき殺すと、アスファルトに血がベターッと付いた。お子さまを連れたN先生にあった。

 

*1えらい……疲れた あるいはだるいことを表す方言
*2アルパインガイド……アルパインガイド38鈴鹿の山,山と渓谷社,1972,改訂第1刷,P111
*3えらい目……ひどい目


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Reference:杉峠 No.19, 1985
1st Updated : 2001/4/13