時事(介護関係)

2004年12月6日
円滑な介護保険制度にするには

 身寄りのない人や身寄りが遠方にしかいない要介護者が老健・介護療養型医療施設・特養等の施設入所を拒否される現実があります。理由は「入院した場合の親族の同意がとれない」「他科診療の通院まで職員が付き添えない」「死亡した場合の対応ができない」等の理由なんですが、最終的には自治体の責任で対処するには明確な「措置に準ずる制度」の創設が必要だと思います。
2004年11月24日
ヘルパーを介護福祉士に 06年度から資格取得研修

  厚生労働省は13日、介護現場で働くための資格要件を国家資格の介護福祉士に一本化する方針を固めた。介護福祉士の資格を持たず既に介護職に就いているホームヘルパーなど23万7000人や新たに介護の仕事を目指す人について、2006年度から福祉士の資格取得に向けた研修を実施する。来年の介護保険制度改革の一環で、高い技術や知識を身につけてもらい、介護の質を高めるのが狙い。
  ただ高齢化が進んで介護需要が増える上、研修時間や費用の面で負担増となる可能性もあり、完全移行にはかなり時間がかかりそうだ。
  現在、政府はフィリピンとの経済連携協定締結交渉で介護に従事しているフィリピン人を受け入れる方針を示しており、国内の介護職資格を統一することで受け入れ環境を整備する狙いもあるとみられる。
2004年11月20日
痴呆」改め「認知症」 「蔑視的」指摘で厚労省変更へ
  「痴呆(ちほう)」にかわる呼称を議論している厚生労働省の検討会(座長・高久史麿自治医科大学長)は19日、代替語を「認知症」とする方向でほぼ一致した。12月24日の次回会合で正式に決める。厚労省は決定後、介護保険法など関係法令を改正する一方、来春までに行政文書などでも「認知症」への切り替えを目指す。

  「痴呆」という表現には蔑視(べっし)的な意味が含まれ、「何も分からず、何もできない」との誤解を招きやすく、早期診断などを妨げる一因との指摘があった。このため厚労省は6月から新たな呼称を検討してきた。

  厚労省が挙げた六つの候補に対し、国民からの意見募集(計6333件)では「認知障害」「認知症」の順で多かった。ただ、「認知障害」は精神医学ですでに使われているとの専門医の指摘があり、この日の検討会では「認知症」を推す意見が過半を占めた。

  意見募集では「痴呆」に対して一般用語や行政用語として使われる場合、不快感や軽蔑(けいべつ)した感じを伴うかどうかも尋ねた。その結果、「伴う」が56.2%、「感じない」が36.8%だったという。
2004年11月12日
縛る介護」の実態調査へ 特養など1万2千施設で厚労省

  お年寄りをベッドや車いすに縛り付けるなどの「身体拘束」が後を絶たないことから、厚生労働省は、特別養護老人ホームなど介護保険の入所施設約1万2000カ所を対象に、今月下旬から調査に乗り出すことを決めた。国による身体拘束の全国調査は初めて。

  00年度の介護保険の導入に伴い、国は介護保険施設などの運用基準で身体拘束を原則禁止。安全のため、やむを得ず拘束する場合も方法や時間、理由などを記録することを義務づけた。

  しかし、宮城県の調査(03年度)では回答した213施設のうち、緊急でやむを得ない場合も含む身体拘束はほぼ半数で行われ、拘束された人は全入所者(約1万1000人)の4%。神奈川県の調査(02年度)でも257施設の74%、全入所者(約1万8000人)の11%にのぼった。

  10月には群馬県鬼石町の特養で、昨年末から県の2度の指導後も、入所者を車いすに縛りつけるなどの身体拘束が日常的に行われていたことがわかったばかりだ。

  このため、厚労省は身体拘束について「減少傾向だが、いまだ多い」とし、お年寄りの人権擁護と介護の質を高めるため「施設における身体拘束状況調査」(仮称)を実施して具体的な対策に乗り出すことにした。

  調査対象は「介護保険3施設」と呼ばれる特別養護老人ホーム約5300カ所、リハビリで在宅復帰を目指す老人保健施設約3200カ所、病状が安定期にある要介護高齢者を対象にした介護療養型医療施設約3800カ所が中心。今月下旬にも都道府県を通して調査票を施設に送り、来年2月にも結果をまとめる予定だ。
2004年11月10日
厚生労働省は10日、東京都内で開いた都道府県担当課長との会合で、05年の介護保険制度改革で、ケアマネジャーの資格を5年ごとの更新制とするなど介護の質向上を図る対策を提示した。
  ケアマネジャーはこれまで資格の有効期限はなく、個人の力量にばらつきがあると指摘されていた。このため、5年をめどに定期研修を義務付け、研修を終えなければ業務継続を認めないようにする。有資格者は約30万人だが、実働しているのは約8万5000人にとどまっているため、休業中のケアマネジャーが仕事を再開する際にも研修を義務付ける。
2004年10月31日
薬に頼る 介護の現場 若年痴呆 家族の声から(1年ぐらい前の報道記事より)

 「強い薬でだんだん(夫の)体と頭が弱っていく、悲しい、苦しい、これが私の本音でした」――。若年痴呆(ちほう)の患者や家族を取り巻く状況について、特別養護老人ホームに夫が入所する千葉県のCさん(63)から、こんな文面の手紙をいただきました。在宅でも施設でも苦労する介護と、薬の使用について考えてみました。

 ◇入所2カ月 手震え話せず

  「他人に暴力を振るうので、穏やかになる薬を使っていますが、これからはもっと強い薬を入れます。相手は弱いお年寄りで、危険を回避できません。ご主人は殺人罪になりますよ」

  Cさんの夫(63)はアルツハイマー病で、昨年11月、特別養護老人ホームに入所した。当初から薬を飲み始めたが、わずか3週間で「もっと強い薬」の使用を医師から持ち出された。

  Cさんは「お任せします、と答えるしかなかった」と漏らす。在宅介護に疲れ、やっと見つけた施設だったからだ。

  その3日後、面会へ行くと、夫の様子がおかしい。ソファに座っていたが、手と顔が震え、目の焦点が定まらない。看護師に相談すると、施設のスタッフが駆けつけ、「暴力を振るっています。退所もあり得ますよ」と強い調子でいわれた。Cさんは思わず「殺してください」と言ってしまった。「退所」という切り札を出され、自宅介護の苦しさがよみがえったからだった。その場で泣き崩れた。Cさんにすれば、「暴力」といわれるほどの行為ではなかったはずなのだが……。

  夫は日を追って弱っていく。1月、施設から「食事をしない。足元もよたよた。外部の病院へ入院の手続きをします」と電話が入った。入院の日には自力で歩けず、話すこともできなくなっていた。施設入所から2カ月もたっていない。「これで夫の人生も終わりかも」と思った。

  病院では施設で飲んでいた薬をやめた。体調は快復し、何時間も散歩できるようになった。医師からは「看護する者が倒れたらダメですから気長に行きましょう」と声をかけられた。肩からすっと力が抜けた。

  夫は今、病院のベッドで拘束されている。食事の量が足りず、他の患者の食事を食べてしまうからだ。Cさんは夫の好物を作って病院へ通う。拘束を解くと、夫が喜ぶのが分かる。

  最近、次の行き先を探すよう、病院から暗に促された。Cさんは最初に入所した特別養護老人ホームも含め、5カ所ほどの施設に申し込みをした。在宅介護はもう限界だと思うからだが、今のところどの施設からも返事はない。

 ◇在宅3年半 医師らから助言なく

  9月2日朝、神奈川県に住むDさん(26)の母が、自宅でひっそりと息を引き取った。61歳。アルツハイマー病だった。

  Dさんが母の痴呆を疑い始めたのは00年4月。フライパンで麦茶のティーバッグをいためたことからだった。

  最初に訪ねた病院ではてんかんと診断され、発作止めをもらった。問題行動が多くなり、いくつかの病院を転々。昨年10月、公立のX病院精神科にたどり着いた。

  暮れから今年始めまで1カ月間は、精神科専門のZ病院に入院した。Dさんは仕事を辞めて在宅介護でがんばってきたが、母が怒りっぽくなり、昼夜逆転や徘徊(はいかい)も激しくなって、これ以上は無理だと思ったからだ。

  Dさんの手元に、X病院とZ病院で処方された薬の記録が残る。医師や薬剤師から薬の詳しい説明を受けたことはない。

  痴呆の専門医に見せると、統合失調症患者への典型的な処方だった。抗精神病薬が2種類。抗精神病薬の副作用として出るパーキンソン症状を抑える薬が1種類。長時間眠る強い睡眠薬。それぞれの病院で4種類ずつの薬を飲んでいた。

  母の徘徊はZ病院退院後、しばらくして再び増えだした。6月からは自分で食事ができない日が多くなった。一日中眠っている日もあった。痴呆を疑い始めてから約3年半。病状に応じた介護の方法について医師らからのアドバイスは、一度もなかった。

 ◇介護環境が第一 薬は最後の手段

  Cさんの夫のように「会話ができたり、自由に動けたりする人が、わずか1〜2カ月で寝たきりになるほど痴呆が進むことはない」と老人医療センターで痴呆の患者を診る医師は指摘し、薬が原因、と疑う。

  某県の医師も「介護の負担を軽くするため、薬で動けなくしてしまう医師が多い。過剰投与で寝たきりになった人もいる」と話す。

  一方、施設や病院の中には「人手が足りないので、歩き回る患者をみていられない」「若年痴呆の人は体力的に元気。お年寄りにけがをさせたら、施設の責任を問われる」と、薬物依存を説明するところもある。

  また、Dさんの母親の場合のような統合失調症向けの薬は、痴呆の患者に向かないものもあるとされる。抗精神病薬を多用するとパーキンソン症状が出るが、その副作用を抑える薬の中には、痴呆症状を悪化させるものもあるという。

  某医師もこれらの薬を処方するし、「薬物療法は必要」という立場だが、「できるだけ使わない方がいい。痴呆患者への対応は、第一に介護の環境を整えることであり、薬物療法は最後の手段。薬の使用量は介護施設の質の指標になる」と話す。

  医師等がアドバイスするのは、介護の工夫や環境整備だ。
 「妄想めいたことをいっても『そうじゃない』と説得するのは逆効果。本人のプライドを傷つけてはいけない。」水泳や散歩でエネルギーを発散したり、社会との接点を重視して施設内で軽い仕事をしたり、活動性を持たせることが重要だという。 また、介護家族へのアドバイスや指示も不足している。「医師や看護師、介護現場の人たちが、痴呆の患者をよく知り、介護と医療のレベルを上げることが必要です」と話している。
2004年10月31日
好評「家庭的で落ち着く」 大津 民家改修型のデイサービス施設
民家改修型デイサービス施設で体操をするお年寄り(大津市真野4丁目)
 
  介護保険のサービス事業者として、古い空き家を活用した「民家改修型」デイサービス施設が、大津市内で次々と開設されている。「家庭的で落ち着く」と好評で、すでに10件の施設があり、11月には新たに2カ所がオープンする。利用者にとっては、サービスの選択肢が増す一方、事業者からは競争激化を懸念する声もある。
  ■サービス選択肢増す 業者は競争激化懸念
  田園風景が広がる真野地域に、軒先につるし柿が揺れる古民家がある。築65年の日本家屋を改修した施設「歩歩(ほほ)」(真野4丁目)は、地域に溶け込んで、看板がなければ見過ごしてしまうほどだ。
  NPO法人(特定非営利活動法人)が運営する。理事長の冨永和子さん(65)=坂本6丁目=が「自宅と似通った造りの民家なら、安心して利用してもらえるのでは」と思い立ち、3年前にオープンした。
  昼どき。食事中の利用者に、介護スタッフが「その服、似合うね」。普段は無口な84歳の女性が「そうどすな」とうれしそうに応じる。ご飯をこぼすと、すぐさまスタッフの手が伸びた。
  民家改修型の施設は、新築に比べて建築コストが安く、「中古」建物が醸し出す温かみと、小規模施設ならではのきめ細かいサービスが、利用者にうけている。2001年度から、空き店舗や空き家など既存の建物を活用した介護施設に、県や市町村が改修・設備購入費の3分の二を補助する制度ができたのも、民家改修型施設が増えた要因だ。
  ただ、どこも経営面では厳しさを抱えている。施設に所属する介護支援専門員(ケアマネジャー)がいない所が多く、利用者数が安定しないためだ。
  歩歩も、開設1年目はスタッフの給料を賄うのに苦労した。利用者が増え始めた2年目からようやくトントンに。だからこそ、冨永さんは施設の急増による競合を懸念する。「利用者の奪い合いにならないだろうか」
  11月8日に、商店街の一角でオープンする「長等ほたるの家」(長等2丁目)のわずか150メートル東には、今年4月に開設されたばかりの同様施設がある。
  所長となる立入道夫さん(49)=湖南市中央4丁目=は「地域密着型の特徴を打ち出せば、共存できる」と言う。ほたるの家は定休日に施設を開放し、介護を必要としない元気なお年寄りのサロンを開く予定だ。サロンを訪れる高齢者が介護サービスを要したとき、スムーズに施設に移行してもらう意図もある。
  2000年に開設した「はな」(坂本5丁目)は、市内の民家改修型施設の草分け的存在で、宿泊も受け入れている。運営するNPO法人の林淳子理事長(61)=日吉台1丁目=は「デイだって商売。あかん施設は、つぶれた方がいい。だからこそ工夫できる」と力説する。
  民家改修型の施設が珍しくなくなった今、より利用者の視点に立ったサービスの提供が必要になっている。
2004年10月28日
白浜町のボランティア団体が、高齢者の心のケアに注目されている「回想法」で、高齢者施設の入所者に少しでも元気になってもらおうという活動を始めた。

  回想法は、高齢者が昔の物や写真を見て、若い時のことを思い出し、脳の活性化を図る療法。1960年代に米国の精神科医が編み出した精神療法で、痴呆(ちほう)症のケア方法として各地の高齢者施設で取り入れられている。

  白浜ロータリークラブ(南勝弥会長、18人)の片田和雄・社会奉仕委員長(45)が、回想法をインターネットで知り、白浜町内の昔の写真を収集している「白浜の古風景に学ぶ会」(鈴木喜徳郎代表、10人)に協力を呼び掛けた。

  21日、初めての回想法の活動が、同町中の特別養護老人ホーム「百々千園」(柏木卓園長)で行われた。白浜シニアパソコンクラブが用意した1922(大正11)年から55(昭和30)年までの白浜の写真をプロジェクターでスクリーンに大きく映し出した。古風景の会の玉田伝一郎さん(46)が、一枚一枚解説した。

  写真は昭和初期の御幸通りや、丸公園、白良浜、綱不知などの風景写真で、入所者には懐かしい風景。同ホームの入所者70人のうち、比較的、視力や聴力のある約40人が参加し、見覚えのある写真を見ては、「あー。わー」と小さな歓声を上げていた。

  片田委員長は「回想法は痴呆症の進行を遅らせたり、問題行動の軽減などの効果が期待されている。各家庭でもお年寄りとの交流を深めてもらいたい。回想法の活動を続けていきたい」と話した。
2004年10月26日
痴呆支援
 尊厳大切にしたケアへ
  厚生労働省が、「痴呆」という呼称の見直しを進めている。
 「痴呆」という言葉は、「あほう」から由来しており、侮蔑的意味合いが強く誤解を招きやすいからだという。

  同省の呼称見直し検討会は、「もの忘れ症」「認知症」「認知障害」「アルツハイマー症」「記憶症」などの案を挙げ、ホームページで国民の意見を募っている。

  年内に新しい呼び名を決める予定だが、呼称変更には賛否がある。

  大事なのは、単に言葉をかえるだけでなく、人間の尊厳を大切にする痴呆ケアへの取り組みではないか。

  「痴呆がある人は何もできず、何もわからない」というのは誤解だと、強く訴える会議があった。

  「高齢化社会における痴呆ケア」をテーマに十五日から三日間、京都で開かれた国際アルツハイマー病協会の国際会議で、世界六十六カ国から約四千人が参加した。

  八年前に四十六歳でアルツハイマー病と診断された豪州の女性は、「痴呆になったら空っぽの人という偏見が社会との壁をつくっている。いろいろなことが分からなくなっても、感情的なつながりは必要だ」と発言した。

  五十七歳の男性は「物忘れがあっても考えることはできる。あきらめずに生きていけるよう手助けしてほしい」と、不安や葛藤を語った。

  これまで介護者の側からしか語られなかった痴呆への取り組みで、患者自らが情報発信した意義は大きい。同時に、患者本人がケアに加わる新たな段階に入ったことを印象づけた。

  二〇〇二年時点で要介護認定を受けた三百十四万人のうち、百四十九万人が痴呆だと診断されている。

  県長寿社会対策室が七月に実施した調査では、県内の百歳老人の63・4%に痴呆があることも分かった。

  長寿社会で患者の増加は避けられない。日本一の長寿県である沖縄にとっては大きな課題だ。

  しかし国の高齢者介護政策は寝たきりなど身体介護が中心で、痴呆への取り組みは制度のすき間に置かれている。痴呆ケアの充実は〇六年度実施を目指す介護保険改革の焦点でもある。

  会議で発言した豪州の女性は「痴呆があっても、さまざまな活動に参加する選択肢を与えてほしい。当事者の意見を取り入れることなく、物事が決められるのは非倫理的」と強調した。

  どのようなケアを求めているのか、当事者の声に耳を傾け、どんな状況になっても自分らしく生きようとする人をサポートする、新しい痴呆ケアへの理解を深めたい。
2004年10月26日
お茶の飲用がアルツハイマー予防に効果=英研究チーム
  [ロンドン 25日 ロイター] 英ニューカッスル大学の科学者チームが25日、お茶の飲用はアルツハイマー病の予防になる可能性がある、との報告を発表した。ただ根本的な治療にはならない、としている。
  研究では、身体的に健康な人が定期的にお茶を飲用した場合、記憶障害の原因となる物質の増加が抑制される可能性があることが分かったという。
  研究を率いたエド・オケーロ氏は、「アルツハイマー病の治療法はないが、お茶は予防や症状の進行抑制に有効な物質の1つとなるかもしれない」と述べた。
  研究によれば、緑茶や紅茶はアルツハイマー病と関連のある物質の作用を抑制したが、コーヒーでは顕著な効果がみられなかった。
2004年10月22日
在宅サービス「評価」9割/県が介護保険実態調査
利用者「精神面も改善」

  在宅で介護保険サービスを利用している人の約九割が「精神面や日常生活に良い変化」―。県長寿社会対策室が、このほど実施した調査で、在宅サービス利用者の大部分が評価しているという結果が出た。一方、県民意識調査では、介護保険に関する情報が不十分だという回答が約七割に達した。二つの調査を分析した調査検討委員会は「介護保険サービスを有効に活用してもらうため、制度を周知する必要がある」としている。(
  両調査は昨年十一月に実施した。対象は、「利用者調査」が県内十五市町村の居宅・施設サービス利用者二千六百六十二人、「生活・福祉介護に関する県民意識調査」は、県在住の二十歳以上の男女三千六百人。

  利用者調査では、訪問看護などの在宅サービスを受ける人の約九割が「気持ちが穏やかになった」「笑うことが多くなった」「外出の機会が増えた」など精神面や生活面の改善を挙げ、サービスを評価した。

  「今後、どこで介護を受けたいか」という問いには、在宅者の約七割が「このまま自宅」を希望した。

  施設入所者の約四割も「施設を出て自宅や地域で暮らしたい」と答えたが、その多くが「家族に負担がかかるのが心配」としており、地域の受け皿づくりが課題として浮き彫りとなった。

  県民意識調査では、介護保険の情報について「伝わっていない」が25・8%、「伝わっているが十分でない」が41・4%で、合わせて67・2%が情報不足を指摘した。仕組みについても、利用者の一割負担を理解している人が四割、四十歳以上は保険料を納めることを理解している人も六割にとどまった。特に二十―三十代の理解度が低い。

  県は「高齢者や介護保険を支える担い手である若い世代の認識不足は大きな課題」として、今後は各市町村でのシンポジウムやマスコミを通した広報活動などで、周知徹底に力を入れる考えだ。
2004年10月21日
介護報酬の不正請求対策を通知 指導を強化で厚労省

 介護報酬の不正請求などが介護保険財政を圧迫しているとして、厚生労働省は事業者への指導監査を強化する。21日、介護給付適正化推進運動の取り組みとして都道府県に通知した。毎年10%程度の伸びが続いている介護給付費を、1ポイント程度引き下げるのが目標。
  訪問介護などを提供する在宅介護サービスや介護施設で、不自然な請求をしている事業者を絞り込み、受け取る報酬額が多い大規模事業者に対する指導監査を実施するよう求めている。特に、事業拠点が複数ある事業者や施設を優先することとしている。
  このほか(1)事業者にケアプランを提出してもらって市町村が内容をチェックする(2)利用者に介護給付費通知を活用して給付が適正に行われているか確認してもらったり意識改革を図る−−などで、効果を上げている市町村の取り組みを参考にするように通知している。
2004年10月21日
介護施設入所者の負担、月3万円増・厚労省見通し
 厚生労働省は21日、来年の介護保険制度改革に伴う給付と負担の見通しをまとめた。高齢化による給付増を抑えるため、症状の悪化を防ぐ介護予防を導入。さらに特別養護老人ホームなど施設入所者から居住費と食費を全額徴収する見直しを実施し、4人部屋など標準的な利用者の負担を月3万円強増やす。この結果、65歳以上の保険料(現在は全国平均で月3300円)は2012―14年度で4900円強と、制度を見直さない場合より1000円程度圧縮できるとしている。

  同省はこの試算を同日の官房長官の下の「社会保障の在り方に関する懇談会」に提示した。試算では、現行制度を続けた場合、給付費は現在の年5兆5000億円から2012―14年度には年平均で10兆6000億円に膨らむとした。給付増を賄うため、3年ごとに改定する65歳以上の保険料も2006―08年度は4300円に伸び、さらに2012―14年度には6000円弱に達する。

  在宅介護との負担格差をなくし、保険料の急激な上昇を抑えるため、厚労省は来年に予定する制度見直しで給付を抑えたい考え。
2004年10月21日
障害者支援費制度と介護保険の統合反対を訴える障害者たち
  全国障害者介護保障協議会など障害者団体が20日、東京都港区の芝公園で、支援費制度と介護保険の統合反対を訴える集会を開いた。厚生労働省は身体、知的、精神の障害者施策を一元化する「障害福祉サービス法」(仮称)を来年の通常国会で上程する予定だ。集会では「サービス法は障害者に負担を強いる応益負担を導入するなど、介護保険との統合を前提にした内容だ」と、不満や懸念を述べる声が相次いだ。
2004年10月21日
65歳以上の介護保険料、8年後は倍近くに・厚労省試算
 厚生労働省は21日、65歳以上の月額介護保険料が、現状のままだと高齢者が急速に増える2012年度には、現在の平均3300円から、倍近い6000円に膨らむ見通しであるとの試算を政府の「社会保障の在り方に関する懇談会」に提示した。夫婦では1万2000円の負担となる。

  ただ筋力向上トレーニングや転倒予防などの介護予防対策の効果がかなり上がり、特別養護老人ホームなどの施設入所者から食費や光熱費の徴収が実施できれば、保険料は4900円にとどまる。

  現状のままだと、現在の5.5兆円から12年度は10.6兆円に膨らむと見込まれている給付費が8.7兆円程度に抑制されるためだ。

  予防対策の効果がある程度にとどまっても、12年度の保険料は5200円に抑えられる見通し。

  今回の試算は保険料の上昇抑制のため、現行40歳以上となっている保険料の担い手を若年層へ拡大することを念頭に、制度改革の柱に掲げている介護予防の断行に理解を得るのが狙い。
2004年10月21日
介護保険給付見直し、施設利用の個室負担は月6万円に

  厚生労働省は21日、介護保険の施設給付の見直しで、居住費と食費を保険給付から外した場合の新たな利用者負担額の目安を明らかにした。

  家賃や光熱費などの居住費の標準的な負担額は、個室の場合は月額6万円、相部屋の場合は同1万円。居住環境の整っている個室とそうでない相部屋とで差を設け、相部屋は光熱水道費のみの負担とする。一方、食費は一律月額4万8000円とした。

  これにより、施設サービス費用の自己負担分と合わせた利用者負担額は、月額3万円程度の増加になる。ただし、食費、居住費とも低所得者には一定の配慮を設け、負担が今より過重にならないようにする。2005年10月から実施したい意向だ。

  特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設の介護3施設における居住費は、現行制度では施設サービス費に含まれ、新型の特養を除いて9割が保険からの給付で、利用者負担は1割のみ。

  食費は、日額2120円の費用のうち、同780円の食材料費相当分のみ、利用者が負担している。

  しかし、在宅で介護を受ける高齢者は食費、居住費とも全額自己負担のため、施設入所に「割安感」が強く、施設志向の増大と給付費膨張を招いていると指摘されてきた。
 (読売新聞) - 10月21日22時59分更新
2004年10月10日
<介護保険調査>ケアマネジャーとかかりつけ医の連携不十分

  介護保険のサービス利用者に関する相談をケアマネジャーがかかりつけ医にしたことがないケースが38.9%に上るなど、ケアマネジャーとかかりつけ医の連携が十分でないことが、民間研究機関「医療経済研究機構」が東京都区部を対象に行ったアンケート調査で分かった
2004年10月09日
障害者福祉を一本化…厚労省が試案

  厚生労働省は、身体、知的、精神障害者の公的福祉制度を大幅に見直し、共通の制度に統合する改革試案をまとめた。ケアマネジメント(専門職による給付管理)などを導入して、障害の種別ではなく、施設やサービスの機能に基づいて再編・一本化し、施設・サービスが相互に利用できるようにする。

  来年中に「障害福祉サービス法」(仮称)を制定し、早ければ2006年度から段階的に実施する。

  試案によると、まず、身体、知的障害者が対象となる「支援費制度」について、すでに介護保険で導入されているようなケアマネジメントを導入。同時に給付基準を厳格化し、一部で必要以上の給付が行われている現状に歯止めを掛ける。

  さらに、利用者の自己負担も低所得者に配慮しながら引き上げる。現行制度では応能負担だが、利用量に応じて負担を求める。一方、財政基盤を強化するため、在宅サービスの費用に不足が出た場合、国と都道府県が必ず補うよう義務づける。

  支援費制度に入っていない精神障害者の福祉制度も同様の見直しを行ったうえ、障害の種別が違うと利用できなかった施設やサービスを、相互に利用できるようにする。

  支援費制度については、開始初年度の昨年度から、在宅サービスだけで100億円単位で国の予算が不足し、このままでは制度の維持が難しいと判断した。同制度は介護保険との一部統合が検討されており、見直しはこれを視野に入れたものだが、統合の有無にかかわらず実施する。

  同省では「本来なら、施行時から実施すべきことで、設計ミスと言わざるを得ない。欠点は早めに改めたい」(障害保健福祉部)としている。
 (
2004年10月08日
介護施設の食・居住費、保険給付対象から除外へ

  厚生労働省は7日、介護3施設と呼ばれる特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養病床での食費や居住費を、2005年度中に介護保険の給付対象から外す方針を固めた。

  食費については、在宅高齢者が利用する「デイサービス(通所介護)」や「ショートステイ(短期入所)」での自己負担化も検討している。介護保険改革は2006年度に実施予定だが、自宅で暮らす高齢者との負担の格差が指摘されている食住費については、前倒しして来年10月前後にも実施、保険料上昇の早期抑制を目指す。

  現行制度では、介護3施設での「基本食事サービス費」は日額2120円。うち780円の食材料費は利用者負担で、残りを保険から給付している。家賃や光熱費などの居住費は、1割の自己負担を除く9割を保険から給付している。

  これに対して、自宅で介護を受けている高齢者はどちらも全額自己負担している。施設介護の割安感から施設志向が増大し、給付費膨張の一因になっている。

  見直しでは、食費、居住費ともに保険給付から外し、料金は事業者が自由に決めるようにする。すでに居住費の一部自己負担が始まっている新型の特別養護老人ホームでは、標準的な居住費の額は月額4―5万円。また、食費は、現在の自己負担額(月額約2万3000円)より3万円前後の負担増と予想され、合わせて7、8万円が新たな負担額の目安となると見られている。

  ただし、低所得者には国が一定の基準を設け、負担の軽減を図る。また、相部屋の場合は、自己負担を光熱費にとどめるなどの対応がとられる見通しだ。
2004年07月15日
不正加担ケアマネに罰則 介護保険見直しで厚労省

  厚生労働省は14日、介護報酬を水増しするなどの不正請求・受給で介護事業の指定を取り消された悪質事業所の再申請を一定期間認めず、不正に加担したケアマネジャーに業務停止などの罰則を科す方針を固めた。また現在都道府県だけが持っている指定取り消しの権限を市町村にも持たせる。介護保険全般を見直すため来年の通常国会に提出する介護保険法改正案に盛り込む。
  不正請求・受給の増加が介護給付費を押し上げ、保険財政の圧迫につながっている可能性があり、不正に対する処分を厳しくすることで、参入規制が緩く不正の起こりやすい制度上の問題解決につなげたい考え。
  介護保険制度は2000年度にスタートしたが、不正請求などで03年度までの4年間で232事業所が指定取り消しを受け、報酬返還額は29億円に上った。(
2004年06月27日
独居痴呆老人狙った訪販トラブル激増 成年後見制度普及が処方箋

 無防備な財産管理 取消権、抑止力に
  お年寄りのために財産管理の代行などをする「成年後見制度」。だが、日本の風土に合わないのか、制度は欧州のように普及していない。大半の財産管理が無防備になっているスキをつくかのように増えているのが、独り暮らしの痴呆老人を狙った訪問販売のトラブルだ。全国の被害はこの六年間で四倍と激増している。専門家は「成年後見制度が普及すれば、悪質な訪問販売の被害が減るのに」と訴えている。(草下健夫)
 ≪“車の両輪”≫
  成年後見制度は介護保険制度と並ぶ“車の両輪”の一つとして、四年前にスタート。判断能力が衰えたお年寄りをはじめ、精神障害、知的障害の成人の財産管理や身の回りの保護、契約などの法律行為を本人に代わって後見人が行う制度。
  最高裁によると、後見人の利用を申請する申し立ては昨年度までの四年間で計四万三千九百五十六件。しかし、痴呆性高齢者は百五十万人程度いるとされ、制度を必要とするこうした人にはほとんど行き届いていないことが分かる。
  日本成年後見法学会の新井誠理事長(筑波大大学院教授)は「独仏英では人口の1%が利用している状況からすると、日本は百二十万人の利用があっていいはず」と指摘する。
 ≪不安つけこむ≫
  「アルツハイマーの母の家に二人組がやってきて、高額な浄水器を取り付けられ、無理やり押印させられた」「痴呆の母が和服、布団など多額の契約を次々とさせられた」「セールスマンが八十代の母の家に来て、『家が腐る』と床下換気扇を買わされ、三百万円の支払いが残った」…。
  国民生活センター(東京)など全国の消費相談窓口に寄せられた、契約者本人が七十歳以上の相談は、平成九年度の約二万三千件から昨年度は約八万九千件と、わずか六年間で急増している。
  同センターは「貯蓄や年金を狙い、健康、住宅、生計といった老後の不安につけこんで契約を迫る例が後を絶たない」(情報分析部)と深刻な現状を訴えている。
  だからこそ、成年後見制度の普及が求められている。業者が痴呆性高齢者に高額な商品を売りつけても、後見人があとでそれを知って無効にできる「取消権」があるからだ。ただ、財産の管理を家族が他人にまかせたがらない風潮が普及のネックとなっている。また、後見人となった親族が預貯金約四千万円を着服した事件が埼玉県内であり、制度不信を一部で招く要因ともなっている。
  丸尾直美・尚美学園大学教授(福祉政策)は「わが国では高齢者を主に家庭が支えてきたが、いまは、契約に基づいて公的に支えるシステムに移行する過渡期にあたる。成年後見制度が浸透していないため、高齢者受難を招いている」と話している。
      ◇
  成年後見制度 家裁が申し立てに基づいて、後見人の選任を行う制度。後見人には親族のほか、弁護士、司法書士などの専門家が就くことが多い。老人らの見守り役として介護や医療、法律問題などで調整を図る。法定後見は老人らの症状の重い順に「後見」「保佐」「補助」の3類型がある。任意後見は本人が健康なうちにあらかじめ信頼する後見人と契約しておくもの。(産経新聞)
2004年05月11日
有料老人ホームなどで情報開示義務づけへ 厚労省

 厚生労働省は、有料老人ホームなどの介護サービスについて、全事業者に、不都合な情報も含めた具体的な情報開示を義務づけるべきだとする中間報告をまとめた。第三者の調査員が確認する仕組みも設け、利用者がサービスを選びやすくするとともに質の向上もめざす。04年度にモデル事業を行い、早ければ06年度から順次導入する。

  対象は介護サービスのうち、訪問介護、訪問入浴、通所介護、福祉用具貸与、有料老人ホーム、特別養護老人ホーム、老人保健施設の七つ。

  開示する情報は、事業者が自己申告する「基本情報」と申告に基づき調査員が確認する「調査情報」で、「基本情報」は法人の運営状況や職員体制のほか、キャンセル料の有無や入所を制限したりサービス提供を断ったりする場合の条件など、事業者にとって不都合な情報も含む。

  たとえば有料老人ホームでは、食事や排泄(はいせつ)の介助、買い物代行など31のサービスについて、実施の有無や別料金の有無、痴呆(ちほう)で介護が必要となって居室や施設をかわる場合の場所や条件なども対象とした。

  「調査情報」は地域との交流・連携や苦情対応システムの有無など20〜40項目。判定基準を設け研修を受けた調査員が年1回程度、2人一組で2日間かけて確認する。
2004年05月08日
障害者や高齢者安心の「旅情報」を愛知県が5千部発行、社福協などに配布


 バリアフリーの観光モデルコースを載せた冊子「あいちおすすめ旅情報」
  障害者やお年寄りに安心して観光を楽しんでもらおうと県観光交流課は、バリアフリーの観光モデルコースを載せた「あいちおすすめ旅情報」を作った。五千部発行し、県社会福祉協議会、県観光協会、県内市町村の社会福祉協議会などに置いてある。

  観光コースは日帰りの8コースと1泊2日の2コース。写真が豊富で身障者用トイレの写真は30枚余掲載されている。

  「未来をうつす見学会と自動車の歴史を知る」と名付けたコースでは、地下鉄名古屋駅を起点に藤ケ丘駅で下車して名鉄バスに乗り換え、愛知青少年公園停留所で下車。200メートル進んで愛・地球博(愛知万博)の建設工事見学会(予約制)を見てタクシーで長久手町のトヨタ博物館に行き、バスや地下鉄で戻る。

  地下鉄、バス、タクシーの所要時間と運賃、乗り換えする場所の地図、身障者の人が利用できるルート上のトイレの写真、見学施設の写真などが掲載されている。

  このほか、日帰りコースでは、安城産業文化公園デンパーク(安城市)、ランの館(名古屋市中区)、へきなんたんトピア(碧南市)、瀬戸市マルチメディア伝承工芸館、三州足助屋敷(足助町)、博物館「酢の里」(半田市)などを取り上げている。1泊2日のコースの「城下町犬山の散策と博物館明治村を訪ねる旅」では、犬山祭でひかれる山車を展示しているどんでん館やからくり展示館、日本ライン下りなども紹介している。
2004年05月07日
愛知県安城市の老人ホーム内
67歳女、交際男性絞殺  中日新聞より

  愛知県安城市和泉町大北の同市養護老人ホームで入所者の男性を殺害したとして、安城署は6日、殺人の疑いで同ホーム入所者の無職○容疑者(67)を逮捕した。同署は○容疑者が男性との親しい関係を続けられないと思い込み、犯行に至ったのではないかとみて調べている。

  調べでは、○容疑者は6日午前2時50分ごろ、無職△さん(68)の部屋に入り、眠っている△さんの首をひものようなもので絞めるなどして窒息死させた疑い。

  ○容疑者は1月ごろから△さんと親密に交際するようになり、△さんの身の回りの世話をするため、1人で暮らす△さんの部屋に頻繁に出入りしていた。○容疑者は調べに「交際を他の入所者らから非難されていると思った」と供述。同ホームでは定期的に部屋替えがあり、林さんが2人部屋になる可能性もあったため「(部屋替えなどで)別れるくらいなら殺してしまおうと思った」と話しているという。

  △さんは1996年12月、○容疑者は2002年7月に入所。交際するようになってからは老人ホームを出て一緒に住むために、2人で市営住宅の抽選会に出向くこともあったという。

  同日午前7時すぎ、老人ホームの朝食場所に2人の姿がないため管理人が部屋に行くと、△さんが顔にタオルを掛けた状態で亡くなっているのを発見、119番した。○木容疑者は同9時ごろ、約1キロ北の農道を歩いていたところを民間の宅老所の女性職員が見つけた。○容疑者は「老人ホームへ帰りたくない。人を絞めてしまった」と興奮して話したため、老人ホーム職員に連れられて同署に出頭した。

  ○容疑者は「一緒に住もうとしても思うようにいかず、△さんにはほかにも親しそうな女の人がいると思って、部屋替えで離れるくらいなら殺してしまおうと決めた」などと話したという

2004年04月23日
グループホーム急増 痴呆介護、後手に 徘徊する親、どこに
  痴呆(ちほう)高齢者向けのグループホームが急増している。住宅メーカー、建設会社、銀行などが「遊休土地の活用」をセールスポイントにグループホーム建設の営業を展開、自治体は総量規制に乗り出し始めた。背景からは、介護に悩む家族の深刻な現状が見えてくる。

 ◇住宅業者ら本格展開

  「アパートと違って空き室や家賃の値下がりの心配がありません。有益な土地活用法です」

  神奈川県の建設会社は、こう言って地主にグループホームの建設を勧める。2月に開いた地主向けのグループホーム見学会には5日間で300人近くが訪れた。駅から遠くても入居希望や家賃に影響はなく、自治体によってはアパートが建てられない市街化調整区域でも建設が可能なことが注目される理由だ。

  大手住宅メーカーも新たなビジネスチャンスに積極的だ。老人保健施設の建設などで実績がある大和ハウス工業は、00年2月から本格的な営業を展開。これまでに230カ所を建設した。03年度の受注額は120億円で、前年度比1.6倍の伸びだ。大手介護保険事業者から土地探しを依頼されることもある。積水化学工業も昨年から本格的に参入、3月には「高齢介護社会の新しい土地活用策」と銘打った地主向けセミナーを開催した。

  地主は自己資金で施設を建て、グループホーム事業者がそれを借り上げて運営する。住宅メーカーは、地主と事業者を引き合わせるコンサルタントもする。埼玉県を中心に21のグループホームを運営する「ウイズネット」(さいたま市)には、グループホームを運営してほしいという依頼が、月に30件以上くる。住宅メーカーだけでなく、最近は銀行も話を持ち込んでくるようになった。「グループホーム建設用ローン」を企画する銀行も出てきている。

 ◇設置規制、根拠薄く

  グループホームの事業所数が32倍になった青森県。県平均の65歳以上の介護保険料は昨年の改定で773円上がった。青森市は548円のアップ。このうち8割がグループホームの増加で膨れ上がるサービス費用を賄うための値上げだという。

  県は03年から事前の相談に来た事業者に自粛を求めている。「指定しない法的根拠がない」と手続きを迫る市議には、「介護保険財政が大変な事態であることを考えるべきだ」と譲らなかった。

  群馬県高崎市は昨年、市内のグループホームを調査した。入居者186人のうち、4割近くが市外から移ってきた人だ。神奈川県秦野市では49人(昨年末)の約半数が市外。入居者が市に住所を移せば、負担も移る。「負担増の予備軍」と同市の担当者は心配する。

  偏在も規制の一因だが、根拠が明確でないのが悩みだ。「訴えられることも覚悟しないと規制はできない」とある県の担当者。

  サービスの質の維持も課題だ。厚生労働省は、都道府県に、グループホームを訪れて介護の質などを調べる外部評価を義務づけているが、調査機関が少なく、評価・公開も遅れ気味だ。

  京都府は昨年、介護職員の数を水増し申請し、人工透析が必要な入居者を通院させないなど運営も不適切だとして、NPO法人の事業指定を取り消した。同法人は処分の取り消しを求めて提訴したが、先月の判決では府が勝訴した。府は「施設の内容をみて、事業者を選ばざるを得ない」と近く規制に乗り出す。
2004年04月23日
高齢者虐待調査 (厚生労働省が行った初の全国調査)

 介護する側の孤立浮き彫り 
 家庭内で虐待されている10人に1人が「生命にかかわる危険な状態」で、ケアマネジャーの9割近くは対応が難しいと回答。からは、介護の難しさや家族を取り巻く厳しい現状が見えてくる。

  ●虐待者の半数は自覚なし

  虐待を受けた高齢者と虐待をした人が同居している割合は89%で、接している時間も「日中も含めて常時」が52%を占める。虐待をした人の61%は主な介護の担い手で、このうち介護の協力者がいない人は39%、協力者も相談相手もいない人は18%と、半数以上が孤立した状態だった。

  虐待する要因(複数回答)では、「高齢者本人と虐待している人のこれまでの人間関係」が48%で半数近くあった。「高齢者の痴呆(ちほう)による言動の混乱」(37%)、「介護疲れ」(同)、「(介護の)知識や情報不足」(18%)、「ストレスやプレッシャー」(13%)なども目立ち、介護する側の悩みがうかがわれる。

  また、虐待をしている人の2人に1人は虐待の自覚がない一方、虐待を受けている高齢者の2人に1人は自覚があり、ケアマネジャーに話したり何らかのサインを出したりした人も49%に達している。虐待を受けていることを隠そうとする人も12%いた。

  ●71市区町村に専門チーム

  実態調査のほか、厚労省は虐待の相談や対応について全国の市区町村を対象に調査し、8割から回答を得た。それによると、過去1年間に自治体に寄せられた虐待を主因とする相談は6062件。高齢者虐待に対応する専門チームがある市区町村は71だった。

  独自の取り組みをみると、相談窓口の開設が155件で最も多く、一時的に虐待を受けている高齢者を受け入れるショートステイ事業が80件、介護事業者への研修会の開催が43件あった。

2004年04月23日
痴呆高齢者のグループホームが急増 11県市総量規制


 痴呆(ちほう)の高齢者が共同生活するグループホームが、介護保険が導入された00年4月直前に比べて18倍の4774カ所に増えていることが朝日新聞の都道府県・政令指定都市調査でわかった。65歳以上の介護保険料を押し上げ、介護の質が低下するおそれがあるとの理由で、11自治体が実質的な総量規制に乗りだし、6自治体が規制を検討している。家族の期待も高いサービスだが、想定を超える急増で規制に動かざるを得ないのが現状だ。

  朝日新聞が、グループホームを運営する事業者を指定する47都道府県と、13指定市を対象に3月時点の状況を調べた。

  00年3月に266だった事業所数(国庫補助対象数)は、今年3月で4774に。この1年間で約1900カ所が新設され、1日5カ所のペースで増えている。8割の自治体で、介護保険開始時に見込んだ05年3月末の入所者数を超えていた。

  調査によると、00年3月でゼロだった三重県は79カ所(945人分)に、静岡県は66倍の198カ所(1737人分)に増加。青森県は04年度末までの計画で定員を300人と見込んでいたが、2643人分に膨れ上がっている。

  グループホームは「地域で職員の介護を受けながら暮らす」在宅サービスと位置づけられているため、事業者に指定される要件は施設に比べて緩い。企業の参入も可能で、急増の一因になっている。

 調査では、青森、栃木、群馬、兵庫、山口、香川、熊本、沖縄の8県と福岡市など3指定市が、整備抑制や地域的な偏りを調整する規制を実施している、と回答した。

  栃木県では独自の要綱を策定。市町村が公募し、審査委員会が選んだ事業者だけを県が指定する方式をとっている。青森県や山口県では、市町村の介護保険計画の整備数を超えている場合、指定を申請した事業者に自粛を求める。在宅サービスであるため、自治体に設置数を規制する明確な法的規定はない。

  三重、長崎、京都府など4府県2市は規制を検討中と回答。実施・検討中と回答した以外の自治体でも、7割が将来は抑制策が必要と答えた。

  規制の理由では、財政面や介護の質の問題を挙げる自治体が多い。青森県は「保険料への影響が深刻」とし、京都府は理由の一つに「利益追求を動機とする事業者が参入して劣悪な介護が行われる危険性がある」としている。
2004年04月19日
高齢者・障害者の入所施設やグループホームの金銭管理

高齢・障害者施設の9割が金銭管理 うち2割は契約なし
 高齢者・障害者の入所施設やグループホームの9割以上が入居者の現金や通帳を預かり、その20%が金銭管理委託契約を結んでいないことが、国民生活センターの調べでわかった。知的障害者施設が同意なしに入居者の障害年金を寄付として受け取るなど金銭管理のあり方が問題になっているなか、施設側に利用者保護の意識が希薄なことが浮き彫りになった。

  特別養護老人ホーム、痴呆(ちほう)高齢者のグループホーム、知的障害者の施設やグループホームの計5000カ所を対象に調査(昨年10月時点)。2938カ所から回答を得た。回答率は58.8%。

  金銭を預かっているのは全体の92.5%。預かっている施設のうち、20.4%が入居者などと金銭管理委託契約を交わしていなかった。痴呆高齢者のグループホームでは47.8%が、特養ホームでは13.9%が契約なしに金銭や通帳を管理していた。さらに、預かっている施設の11%が預かり金管理の内部規定を作っておらず、特に高齢者と知的障害者のグループホームでは30%前後に達していた。

財産を預かる以上、契約は必要。印鑑と通帳を1人の職員が預かっている施設なども相当数あり、問題。最低でも、すべての施設で預かり金管理の取扱規定を作るべきである。
2004年04月09日
増える新型特養 家賃に大きな幅

全室個室の新しいタイプの特別養護老人ホーム(新型特養)が3月末で、39道府県、174カ所(約8410人分)に増えていることが新聞社の都道府県・政令指定都市調査でわかった。4人部屋中心の従来型特養の約5000カ所、34万人分と比べるとまだ一部だが、新しく造る特養は新型特養が原則になっていて、厚生労働省は従来型特養と半々になるまで増やす計画だ。新型特養は「家賃」をとることになっているが、ゼロから7万円台まで大きな開きがあった。徴収している123施設の平均月額は約3万2000円だった。この結果を利用者側はどう考えたらいいのか。1200以上の施設をみてきたNPO法人「特養ホームを良くする市民の会」(東京都)の本間郁子代表に聞いた。

  ――家賃分が負担増になりますが、やはり個室でしょうか。

  「隣の人を気にせずに眠りたいと訴える入所者は少なくありません。『昔の友だちが個室に泊まって交友が復活した』『働き盛りの息子と夜遅くまで話し込める』など新型特養に移ったお年寄りの評判はいい。個室は寂しいというのは思い込みです」

  ――新型特養の家賃の現状は。

  「同じサービスなのに、ゼロから数万円台まで差がありすぎ、利用者が納得できる基準が見えないことが問題です。一般に家賃は交通の便や部屋の広さ、設備で決まりますが、特養の場合は介護者の人数や設備とは余り関連がありません。光熱水費も個室にメーターを付けて計算する施設はまだ一部。どんぶり勘定のところも多いのです」

  ――低所得者にとって家賃は重い負担です。

  「特養には低所得者の安全網という機能があります。そうでなければ、有料老人ホームと変わりません。国や自治体は家賃を減額するための措置を拡充し、施設を運営する社会福祉法人も独自の減免措置を工夫するべきです。また、各施設の家賃を公表して比較できるようにするなど、市民が不当な値上げをチェックすることも大事です」

  ――厚労省は15年に新型特養の入居者が3割になると見込んでいます。

  「そのペースでは遅すぎます。高齢化した団塊の世代の受け皿が不足するのは確実。国は従来型特養を個室に改装するための支援策を強化すべきです。家賃を払う意思があるのに、地域に新型特養がなくて入居できないというのは不公平です」

  ――従来型特養でも家賃をとるべきだという意見があります。

  「相部屋は『住まい』とはいえません。家賃をとるなら個室が絶対条件でしょう」


  ●今月中に定員1万人突破

  調査によると、3月時点で新型特養が最も多いのは静岡県の14施設。4月中に新たに約80が開設され、高知県を除く46都道府県に広がり、250カ所、定員は1万人を超す見通しだ。

  174カ所の家賃を調べたところ、月額は500〜7万1300円とばらつきがあり、徴収していないところも3割あった。部屋のタイプで差がある施設もあり、滋賀県八日市市の「こぼしの家」では収納付き個室は5万5000円、トイレ付きは5万8000円、トイレ・浴室付きは6万2000円だ。


キーワード

 〈新型特養〉 相部屋の従来型特養に対し、全室個室で、10人以下のグループごとに共有のリビングがあるのが特徴。03年4月から家賃をとることが決められた。家賃には「個室やリビング部分の建築費」「備品費・修繕費」「光熱水費」などが含まれる。個室部分の建設費の国庫補助はなくなったが、経過措置で従来型と同じ補助を受けられた施設もあり、公費投入の差などが家賃の価格差の要因。低所得者には施設の介護報酬を加算することで、月1〜2万円の軽減措置がある。
2004年04月05日
遅れる在宅支援政策

 「通所介護も短期入所も断られた。母はどこに行けばいいのですか」

 呆(ぼ)け老人をかかえる家族の会宮崎県支部が運営するグループホーム「平和が丘ケアホーム」には、痴呆高齢者を介護する家族からのせっぱ詰まった相談が寄せられる。

  身体的な能力はそれほど衰えていない「動ける痴呆高齢者」は、徘徊(はいかい)など介護に手がかかるため、サービスを断られるケースがある。特別養護老人ホームなど入所施設は待機者が多い。吉村照代施設長(57)は「手のかからない高齢者だけを預かるようなホームが増えている」と嘆く。

  家族の会石川県支部の井沢恵美子代表(60)も「介護に疲れ、今日を乗り切れない家族には、問題があるグループホームでも、短期間なら利用を勧めることがある」。

  介護が必要な高齢者314万人のうち半数に痴呆の症状があり、動ける痴呆高齢者25万人のうち在宅が6割だ。しかし、自宅で暮らす痴呆高齢者を支援する政策は立ち遅れている。厚労省は昨年、通所介護や一時宿泊などを24時間提供する小規模多機能のサービス拠点をつくる方針を示したが、普及に向けた検討は始まったばかり。

  全国8000の会員が加入する家族の会は、グループホームや小規模多機能ホームなどを1万カ所以上つくるよう訴えている。高見国生代表理事は「過酷な介護を続ける家族の立場からすれば、まずサービス量を増やすことが重要。数を増やしつつ、どう質を改善していくか、国は方針を示してほしい」と強調する。


〈キーワード:痴呆高齢者のグループホーム〉

 住み慣れた地域で、5〜9人が家庭的な雰囲気で暮らすことで痴呆の症状を和らげる効果があるとして、「痴呆ケアの切り札」と期待されている。運営主体で最多が企業などの営利法人で45%。運営費の9割は介護保険から支払われ、利用者の負担は介護保険の1割負担や家賃、光熱費、食事代など月10万円から20万円程度。介護保険の費用は税金と保険料で半分ずつ賄われ、65歳以上の介護保険料の分は平均18%。費用が膨らんだ場合は、3年ごとに改定される介護保険料も上がる
2004年04月05日
住み慣れた地域で、5〜9人が家庭的な雰囲気で暮らすことで痴呆の症状を和らげる効果があるとして、「痴呆ケアの切り札」と期待されている。運営主体で最多が企業などの営利法人で45%。運営費の9割は介護保険から支払われ、利用者の負担は介護保険の1割負担や家賃、光熱費、食事代など月10万円から20万円程度。介護保険の費用は税金と保険料で半分ずつ賄われ、65歳以上の介護保険料の分は平均18%。費用が膨らんだ場合は、3年ごとに改定される介護保険料も上がる。
2004年03月30日
リストラ”寮転用を促進 老人ホーム向け投資ファンド

 企業が維持できなくなった社員寮などを買い取って、高齢化の進展で需要が急増しているお年寄り向けの住居施設に造りかえるビジネスが広がってきた。野村証券グループの投資会社、野村プリンシパル・ファイナンス(NPF)は29日、介護付き有料老人ホームを対象とする投資ファンドを設立した。約3年間で総額200億円程度を投じる予定。千葉市の幕張地区を手始めに、首都圏を中心に投資する。

  NPFが再生した有料老人ホームなどは、介護事業者に長期賃貸する。ただ、投資資金を早めに回収して利益を確保するため、他の企業などに施設を売却したり、証券化したりする考えだ。

  物件探しや老人ホームつくりのノウハウは、都市部で小規模な集合住宅開発を手がけているコンサルティング会社の都市デザインシステムが提供する。同社は社員寮を転用した老人ホームを証券化するビジネスのノウハウを持つが、資金調達などの面で難点を抱えるため、資金力があって、ハウステンボスの再建支援など企業再生に実績があるNPFと組むことにした。

  有料老人ホームやケアハウスは2月末現在で全国に750カ所近くあり、1年前より4割増。施設への入居を希望する高齢者が増えると同時に、有料老人ホームは株式会社も運営でき、介護保険の適用も受けられるようになったことなどが背景にある。

  ただ、介護事業者には不動産取得などの資金負担が重く、高齢者向け住居施設の需要急増に比べて供給が遅れている。一方、企業はリストラで社員寮売却を進め、マンションなどに建て替える動きが加速しており、老人ホームへの転用も有効な活用策となりそうだ。
2004年03月17日
新型特養の「家賃」高いの?安いの?

  全室個室で家庭的なケアを目指す新しいタイプの特別養護老人ホーム(新型特養)が増えています。厚生労働省の方針で、昨年4月から新型特養の入居者が「家賃」を払うことになりました。新設の特養は新型が原則です。家賃の現状はどうなっているのか。現場を訪ねました。

 ○ケアの質が理解のカギ

  兵庫県尼崎市にある特養ホーム「けま喜楽苑(えん)」。鈴木トシさん(85)の個室には、亡き夫が描いた油絵3枚が飾ってある。「自宅には部屋いっぱいに飾ってあったんです」とほほ笑む。テラスには夫が好きだった花が並ぶ。使い込んだ鏡台、ベッド脇にはお気に入りの洋服がかかっている。

  同苑は01年に開所した新型特養だ。55人の入居者は午前7時半から同10時まで好きな時間に朝食をとることができる。1人で入るヒノキ風呂。住むことを重視した環境は、4人部屋中心の従来型特養とは大きく違う。人気は高く、市外の150人を含め、約500人の入所待機者がいる。

  入居者は昨春から、家賃の3万円を払っている。それに先立って、同苑は家族会を4回開き、開設時に3億円の借金をしたことや職員配置が手厚いこと、光熱水費が従来型の1.5倍以上になることなどを説明、「家賃なしでは3、4年で赤字になり、ケアの質が落ちる」と理解を求めた。

  家族会は介護保険の仕組みについて苑側と勉強会をした。「生活が苦しい人はどうなる」など疑問の声も出た。苑は個人面談をし、家族を含めて負担が難しい数人については、独自に減免することを決めた。

  家族会長の村上義徳さん(60)は「親の表情が家にいるときより、目に見えて明るくなった。ずっと住み続けてほしいと思った」と家賃徴収に応じた理由を説明する。

  ホームを運営する尼崎老人福祉会の市川禮子理事長は「ケアの質が悪ければ、家賃請求は紛糾したと思う。負担に見合うサービスが求められている」と話す。

 ○平均は2万9000円

  NPO法人「特養ホームを良くする市民の会」(東京都新宿区)は昨年10月、30都道府県の新型特養100施設を対象に家賃などに関するアンケートをし、94施設から回答を得た。それによると、家賃を徴収しているのは6割弱(53施設)。家賃は月3711円から5万7000円と幅があり、平均は約2万9千円だった。同会(03・3358・9093)は結果を報告書にまとめている。

  ばらつきの理由の一つは補助金だ。新型特養では個室部分の建築補助はなくなり、原則家賃でまかなう。ただ、制度移行期のため、補助金を利用できた新型特養もあり、その分家賃は安くなる。独自に利子などを補助する自治体もあり、それも家賃に影響する。

  利用者などの事情に配慮して、低く抑えるケースもある。昨年10月にオープンした静岡県大須賀町の「おおすか苑」の家賃は3万円だ。建築コストや光熱水費などを反映させると5万円台になるが、「入居希望者の半数が低所得者で、5万円の負担は重い。法人の判断で引き下げた」と同苑。町有地の無償貸与を受けるなど、町の支援が支えになっているという。

 ○減免制度の拡充が必要

  滋賀県近江八幡市の「ふれあい」は昨年9月に開所した。「家賃を知って入所を辞退した人もいました」と加賀爪純子施設長。

  家賃は5万円台。「従来型に比べ、補助金が大幅に減ったので、利用者に負担をお願いせざるを得ない」。ある80代女性の場合、収入は国民年金の月約3万円だ。介護保険の1割負担や食費を含めると、自己負担は月12万円程度になる。「援助する家族の負担は重い」と加賀爪さんは話す。

  新型特養の家賃では、低所得者が入居している場合、施設の介護報酬が加算されるため、その分を家賃から差し引くことで月1、2万円の負担軽減になる。さらに施設が家賃を軽減した場合、一定割合を国や自治体が補填(ほてん)する制度もある。

 市民の会の本間郁子代表は「家賃を払っても質の高いケアを受けたいという意識は確実に広がっている。新型特養を急いで普及させる必要があり、減免制度を拡充させるべきだ」と話す。


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