3月の声を聞くと、野鳥の多くは子孫を残すために産卵・子育ての準備に
入ります。
この時期になると、これまで地鳴きをしていた野鳥たちもウグイスに代表され
るように「さえずり」の声に変わり、美しい鳴き声が聞かれるようになってきます。
自然観察会でのこと、リ−ダ−のAさんから「鳥の卵の殻はいつできると思
いますか?」と質問され、考えたこともなかっただけに誰も回答できませんでし
た。
Aさんのお話によると、「1日で一つの卵の殻ができ産卵する」とのことです。
5〜6個の卵を暖める鳥たちは、毎日1個ずつ卵の殻が出来次第産卵すること
になります。
毎日のように卵を産み続けるように育てられている養鶏場の「にわとり」は、25
時間ごとに産卵するという報告もあります。午前4時に産卵した翌日は午前5時に
産卵し、その翌日は午前6時に産卵するということになります。ただし、正午過ぎに
は産卵せず翌日の早朝に延期するそうです。体内時計でそのように調整するよう
にでもなっているのでしょうか? いずれにしてもこれらの卵は無精卵ですから、
いくら暖めても雛に孵ることはありません。
野鳥の巣で産卵された卵は親鳥の抱卵によって、細胞分裂が始まり約21日前後
で雛に孵える鳥が多いようです。
雛に孵える時期を合わせるために、産卵が完了するまで本格的な抱卵を開始しま
せん。
雛に孵ってから巣立ちまでが短い小鳥たちにとって、一日の違いは誠に大きく、揃っ
て孵らないと子育てが難しくなるからです。
鳥たちの体温は高く、この体温を利用して産卵した卵の細胞分裂を促す訳ですから、
受精した卵を体内に長くとどめておくと、細胞分裂が始まってしまうので、卵の殻がで
きたらすぐに産卵して体外へ出すのだそうです。
鳥たちの中には、カッコウやホトトギスのように、自分では抱卵せず、他の鳥の産卵
した巣へ、自分の卵を産んで育ててもらう(托卵という)横着な鳥もいます。卵の殻がで
きたらすぐに産卵しなければならないだけに、前もって狙いをつけた巣を見つけ、育て
の親の産卵準備状況を観察するなど、それなりの苦労もあるのかも知れません。
このカッコウやホトトギスの雛は、親鳥から教えられた訳でもないのに、一緒に孵った
育ての親の雛を巣の外へ放り出して、育ての親からの餌を一人占めにして育つという、
誠に恐ろしい本性を持っています。
私の家の近くでは、「カッコウ」に狙われているのは「オオヨシキリ」が多いようです。
「モズ」に育てさせるものもいるようです。世の中にはカッコウやホトトギスのように、いろ
いろ事情があって自分の子供を自分で育てられない人もいるのでしょうが、できること
なら自分の子供は自分で「しっかり」と育ててほしいものですね。