2004年2月。アビーが6ヶ月のとき。

アビーにとって、生まれて3回目になる注射を打ちに行ったときのことでした。
聴診器でアビーを診察していた獣医さんが、こんなことを言いました。
「この子は、心臓に雑音がありますね。
子犬の雑音というのは、成長するうちになくなる生理的なものもありますが、
この子の場合は、しっかりした雑音なので、そういったものではなく、
先天性の心臓奇形の疑いがあります。」
こうして、アビーの心臓病が発見されました。
ほんとうに、信じがたい言葉でした。
だってアビーは、うちにきてから、家族みんながびっくりするぐらい元気で、
健康そのものだと思っていたから。
まだ、先代犬を亡くしてそんなに経っていないのに、
子犬のアビーに重大な病気があることを告げられ、
ものすごくショックで、私はふるえが止まりませんでした。
注射のあと、検査をすすめられ、レントゲンと、心電図をとりました。
心電図を見る限りでは、先天性心臓疾患の疑いが極めて強い、との事。
レントゲンでは、異常は認められないので、レントゲンで写らないもの
(血管など)がうまく機能していないのではないか、との事でした。
「PDAではないか、と私は思います」との先生の言葉でした。
この心電図の結果を持って、心臓に詳しい東京の先生にきいてきます、
と言われ、その日は家に帰りました。

東京の先生の意見を待つ一週間の間、
インターネットで、PDAについて、調べまくりました。
東京の先生の意見も、同じでした。
先天性の心臓奇形の疑いが極めて強いが、どこがどのように悪いのかは、
心電図だけではわからないので、東京に来て、精密検査を受けてもらいたい、との事でした。
私は知らなかったのですが、動物病院といえども、
心臓病の手術や、詳しい検査ができるところは極めて少ないのです。
アビーとラッテのかかりつけのお医者さんは、大きな動物病院で、
評判も良く、ほんとうにたくさんのわんこたちが集まります。
それでも、そこの病院ではレントゲンと心電図以上のことは
できないという事でした。 私は、すごく悩みました。
まだ、外でおしっこもできないし、音にものすごく敏感なアビーが
新幹線や車に乗って、東京まで行って、検査が受けれるのか?という事。
また、検査を受けても、手術や治療をしていくともなれば、
何度も足を運ぶことになるので、
私には仕事もあり、時間的に無理ではないか?という事など。
そんな私の心配に、獣医さんは、私さえ良ければ、
自分がアビーを連れて検査を受けさせてくる、とまで言ってくれました。
なかなか、そこまでやってくれる獣医さんはいないだろうと思い、
獣医さんの気持ちに涙がでました。
とりあえず、考える、ということでその日は帰りました。
 
 
 

東京に検査を受けにいくか、どうするか、の返事を
待ってもらっている間、私は、もっと近くで、
心臓病の検査や治療を受けられる病院がないかどうか
探してみることにしました。
インターネットで探しまわった結果、
愛知県内にもいくつかあることがわかりました。

そのうちひとつの病院に行ってみると、
そこでもたくさんのペットたちが診察を待っていました。
事情を話したうえで、診察してもらったところ、
やはり、しっかりとした心雑音が聞こえる、との事でした。
私もそのとき初めて聴診器でアビーの心雑音を聞きましたが、
私でもわかるくらいの「ザッザッ」というはっきりした音でした。
「今日、やれるだけの検査をしてしまいましょう」ということで、
レントゲン、心電図、カラードップラー(超音波検査)を行うことになりました。

1時間程して、診察室とは違う部屋に呼ばれると、
そこでは、アビーがカラードップラーの検査を受けていました。
先生が、カラードップラーの画面を指差し、
「ここで、弁の開き具合が小さいため、血流が悪くなっています。
アビーちゃんは、肺動脈弁狭窄症です。」と言われました。
アビーの病気は、PDAではなく、肺動脈弁狭窄症というものだったのです。
 
 
 

病名はわかったものの、狭窄の正確な位置や、どのぐらい狭窄していて、
どれぐらい深刻なものであるのかを調べるためには、
心カテーテルという検査と、さらに綿密なカラードップラー検査を受ける必要がありました。

心カテーテル検査とは・・・
左図のように、ちょうど首輪をかけるあたり、
または後ろ足の付け根(確か)を少し切り、
血管に細い管を入れて、
心臓内の様子をみる検査です。
小型犬の場合、血管が細いので、
一度、血管にカテーテルを通すと、その血管は
だめになってしまうそうです。
カテーテルを入れられる箇所は、
4箇所しかないそうで、
何度もできる検査ではありません。
アビーの場合、心臓造影剤を流し込み、
狭窄の様子もこの検査で調べました。
カラードップラー検査とは・・・
左図のように、血流の流れる様子や、
心臓の拍動の様子など、超音波によって
どのようになっているか調べる検査です。
血液の流れに乱れがあると、それが
カラーで表示されます。
心カテーテル検査
心臓造影剤検査
カラードップラー検査
(2004年3月)
左のグラフ:肺動脈の血圧
右のグラフ:左心室の血圧

重症の場合、その圧力の格差が50mmHG以上に
なるそうです。アビーは、10mmHGです。
肺動脈の狭窄している箇所を通るとき、心臓が
血液を送り出そうとして、大きな圧力をかけます。
そのため、血液の流れが速くなります。

右の青いグラフは、血流のスピードを表しています。
正常は、秒速1.5m。重症だと秒速6〜8m。
アビーは秒速4mです。
血流の流れる様子です。
正常な心臓は、右のように、
均一な青色で乱れがありません。
左がアビーの心臓です。血流に乱れがあるため、
均一な色ではありません、また、実際の動画を
みると、肺動脈弁の箇所で、血液が逆流して
いるのがわかります。
心雑音の様子。
矢印で示してあるところが、雑音の箇所です。
鼓動の後に、血液が逆流しています。
逆流する音で、波形が短く小刻みにふれています。
心臓造影剤を入れて、心カテーテル検査を
行ったところです。
赤の矢印で示されたあたりが、狭窄箇所です。
すこし、細くなっています。
診断結果
病名:先天性肺動脈弁狭窄症

この検査の結果を見る限り、現在の病気の程度は軽度。
だが、運動能力の高い犬なので、今後進行していく可能性が大きい。
肺動脈と、右心室の収縮圧格差が50mmHGになったり、
血流のスピードが秒速6〜8mになれば、
バルーンカテーテルによる弁の拡大術が必要になるでしょう。
現在のところ、このまま長期において無症状ですごせるか、
心不全の症状が序々にでてくるかどうかは予測できません。

精密検査の結果、すぐにでも手術が必要だとか、
もう手の施しようがないような重症ではないことがわかりました。
不幸中の、幸いでした。

今のところは、過度の運動を避けること、暑さ、寒さに注意すること、
心臓の負担を軽くする薬を毎日飲むこと、
2ヶ月に一度ほど、カラードップラー検査、心電図の検査を受けること、
これらを守るように言われているのみです。

でも、いつなんどき手術が必要になるかわかりません。
心臓バルーン手術というのは、その材料だけでも20万ほどかかるそうです。
その他もろもろを合わせると、40〜50万円になるそうです。
 
 
   
 
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