それは、先代犬・レオを亡くしたことからはじまります。
うちでは、以前、黒いラブラドールレトリーバーを飼っていました。
レオが13回目の夏を迎えたとき、だんだん大きくなってきた右足の腫瘍から、
癌細胞が体中に転移していることがわかりました。
前から、腫瘍があることはわかっていました。
でも、高齢のために、手術に耐えられないだろうとの獣医さんの判断で、
右足の腫瘍を放置せざるを得なかったのです。
そして、癌になった。それが、すごくくやしかった。
それからは、癌に効くという水や、薬を飲ませてみたりして、一進一退の日々が続きました。
元気そうな日もあれば、一日中うつろな瞳で寝ているときもありました。
でも、だんだんと後ろ足が立たなくなってきてしまいました。
大型犬なので、体重は33キロもあり、介護は大変なものでした。
家の中で排泄をしないので、折を見て、2人でかかえて庭でおしっこさせたり、
家族4人がかりで病院に運んだときも多々ありました。
11月に入ってからは、おしっこが出なくなってきてしまい、
それまでよりも、もっと苦しそうな表情をするようになりました。
尿毒症になってしまうのでは、と家族内に焦りが生じてきました。
入院させるか、家でそっとしておくか、どちらがいいのか家族ですごく悩みました。
私は、最期まで家に居させてやるのが、レオにとっての幸せだろうと考えました。
そして、最期の日。
夜中から、レオは血便を何度も繰り返し、呼吸も浅く、苦しそうでした。
父が会社を休んだので、私と姉は涙をこらえながら仕事に行きました。
帰ってきたときには、冷たく、動かなくなったレオの姿がありました。
虹の橋へ逝く瞬間、笑ったような顔をして、父の顔を見たそうです。
次の日、会社を休んで、私と母でレオのお葬式をしましたが、
あとからあとから涙がでて、何を見てもレオを思い出していました。
窓やドアをみると、レオが中に入りたがっているような気さえしました。
そして、しばらくそんな状況が続きました。
レオのいない生活に、耐えられない父と私は、新しい家族を迎えることを考え始めていました。
あのやさしい瞳のレオの代わりは、どこにもいないけれど。
レオには、足が立たなくなってから、獣医に行くだけでも
、大変な思いをさせてしまったので、レオよりも小柄な犬を探すことにしました。
私は、ワイヤーフォックステリア。父は、イングリッシュコッカースパニエルが希望でした。
でも、興味本位で行った自家繁殖をしているペットショップにいたイタグレに、
母も姉も、私も、ひとめぼれしてしまいました。
父は、大反対でした。
反対を押し切って、迎えたのがつぶらな瞳の男の子、アビーです。
一ヵ月後、吸い込まれるような瞳と顔立ちをした美犬の女の子、ラッテも、うちの家族になりました。
今では、父もアビーたちにメロメロです。
イタグレという犬種を迎えてから、レオとの違いに戸惑うことがすごく多くて、びっくりの連続です。
でも、この二匹を迎えて、うちの家では、レオが亡くなって、止まった時間がまた動き出しました。
アビーの心臓病がわかって、私はまたすごく落ち込みましたが、
きっとレオが、あえて、アビーと私をめぐりあわせたのだろうと思って、
アビーとともに、闘病していきたいと思っています。 |