『障害者週間』記念のつどい in 名古屋

2005年12月4日、名古屋市と障害者と市民のつどい実行委員会が主催する「障害者週間」記念のつどい。
私たちリウマチ友の会愛知支部も実行委員として、今年のテーマである
「ゆたかに生きるために」〜わかってほしい私たちのこと〜と題した構成詩に取り組んだ。
構成詩とは各団体が自分たちの障害を、分かって欲しいことなどを各団体8分間の持ち時間で発表し、それを綴っていくと言うもの。

開演1分前。
私は胸にリボンを付けられ舞台上に座っている。
隣の席には知的障害を持つ青年がしきりに汗を拭いている。「緊張するね、緊張するね」「昨日寝れなかったよ」
と話しかけてくる。「大丈夫だよ。はい、深呼吸して〜はい、吐いて〜」と私。
青年は「ありがと、お姉さんも緊張したら、僕が助けてあげるね」と言ってくれた(^-^)

そして式典が始まった。隣の彼は緊張が頂点に達していた。が、じっと我慢して座っていた。ガンバレ!
オープニングは知的障害を持つ中学生や青年たちによる鳴子おどりで元気よくスタート。

その後「名古屋手をつなぐ育成会」の青年たちによる主張があり
“人としてこの街で生きていくために、どうして欲しいのか”“自分たちはどう思っているのか”を
一人一人が伝えていく。はっきりと、自分の意思で。考えさせられる内容だった。

次に「日本自閉症協会愛知県支部」による、自閉症の特異性についての理解と日常場面での対処法について。
自閉症特有のこだわりを理解し、こちら側の言動に対してパニックを起こした場合にどう対処するのか。
自閉症を持つ人の“店内での接客場面”や“電車に乗車中の場面”を一人の男性による
パフォーマンスで分かりやすく説明。(その男性のお子さんが自閉症であるという)

次に「名古屋市精神障害者家族会連合会」による発表。
一人の青年が今までの自分を、そして今の自分を自分の言葉で発表した。
精神に障害を持ったということの認識。そして治療するという認識。自分で認めるということ。
そして、その青年の場合、どうして立ち直ることが出来たのかということ。
自分でBGMを選び、自分の言葉ではっきりと意見を述べた。時に言葉を選びながら、そして素直な気持ちを。

愛知県重度障害者の生活をよくする会、愛知県重度障害者の生活と権利を守る連絡協議会による発表の後、
いよいよラスト、私たち「日本リウマチ友の会愛知支部」の出番。

シナリオでお楽しみください。

出席者全員2列で舞台に上がる。
 前列には渡辺さん、山本さん、浅井さん、菊川さん(車いす)が自助具を持って並ぶ。

舞台端でナレーター(鎌田)
  「みなさん!関節リウマチという病気を知っていますか? お年寄りの神経痛?温泉に入れば治る?
   いいえ、違います。関節リウマチという病気は本当なら外からの攻撃である細菌やウイルスから
   身体を守るはずの免疫機能が、間違って自分自身を攻撃してしまう病気です。
   関節リウマチになると、身体の多くの関節で腫れや痛みを繰り返し、進行すると関節の破壊や
   機能障害を起こします。痛みに耐えながらの日常生活では不便なことも多く、例えば、
   渡辺さんの場合は肘の変形が進み、この位置で固まってしまいました。

渡辺さん(肘を上げながら)
  「食事をするとき、腕が曲がらずスプーンを口に運ぶことができません。
   もちろん高いところのものをとることも出来ませんので、このような孫の手を使っています(動作)
   指もこのように変形していますのでつまむ動作ができなくなります」

鎌田
  「ありがとうございます。次に山本さんですが頚椎に炎症があり、首にカラーをしています。
   頚椎を悪くすると、肩や肘、手首、指の動作が制限されるため洋服を着たり脱いだりが困難になります。
   そんな時はどうしているんですか?」

山本さん
   「家では家族に手伝ってもらったり、時間は掛かりますが(リーチャーで上着を脱ぐ動作をしながら)
    自助具を使って行います。こうすれば脱ぐことは出来ますが、着ることは出来ません。私は全身が悪いので
    物を拾ったり、洗濯物を出す時にもこのリーチャーを使っています」

鎌田
   「ありがとうございます。カラーは夏には暑く、食事をする時にも不便ですが、頚椎を守るためには
    大事な自助具となります。次に浅井さんです。その手に持っているものは何でしょうか?」

浅井さん
   「孫が作ってくれた車のハンドルの模型です。腕や指に変形があっても車を運転し(ハンドルを回しながら)、
    行動範囲を広げていますが、腕が伸びないために高速道路や駐車場のチケットが取れないことがあります。
    係りの方がいてくださればいいのですが、大声で呼んでも来てくれない時は、両方の腕を使って努力するか
    一度車を降りて、チケットを取ります。後続車に申し訳ないですが・・・」

鎌田
   「そうですね。私たちは身体のあちらこちらに制限されることが多いのですが、車は私たちの大事な足に
    なってくれますからね。街にも人にもバリアフリーを望みたいところですね。
    そして菊川さんですが、関節リウマチが進行すると、足や手に人工関節を入れる手術になります。
    そのために、落ちたものを拾うことが困難になり、和式のトイレは使えません。菊川さんが持っている
    その道具はなんでしょうか?」

菊川さん(車いすのままブラシを使いながら)
   「髪を整えるにもこのような自助具を使いますが、変形によって不便ですし、思った髪形にすることが
    出来なくて残念です」

鎌田
   「人工関節の手術をしても関節リウマチは治りません。それは関節だけでなく身体全体の病気だからです。
    そして進行すると車いすの生活になることもあります。しかし、菊川さんのように外出もしたり、
    不便ではありますが台所仕事もこなします」


   「リウマチは原因不明で治療法も確立していません。今日この舞台に上がっている人たちも、みなさん
    長い闘病生活があり、薬に頼る毎日ですが「今」があります。関節リウマチは長期治療を要するために、
    将来への不安や手術など精神的、金銭的負担も大きくなります。私たちは家族や周りの人に
    「関節リウマチ」という病気を正しく理解してほしいと思っています」


   「最後に全員で「明日があるさRAバージョン」をコーラスします。聞いてください!
   (後列の人も前列に入りテープにあわせて歌う。3番まであり、最後繰り返し)


   「ありがとうございました!」

歌い終わったら、舞台片隅により、他団体が入場し全員で「世界にひとつだけの花」をコーラスする。

                                            [ 完 ]

そして最後に視覚障害者を中心としたラテンバンド「アンサンブル・アミー」のコンサート。
ラテン音楽にあわせた華やかな色の衣装で全盲の方、弱視の方、視野狭窄(見える視野が狭い)の方など
皆、笑顔で演奏されていた。中心MCの山田さんは以前、名古屋福祉教育セミナーに参加した時、
私たちグループの司会をされていた方だった。演奏が終わり舞台袖へと移動する。視力のある方の肩に手を置き
並んで歩かれる光景を見ない限り、視覚障害があることさえ感じない迫力ある演奏だった。
すばらしくて、何度もアンコールとなった。


今までは、講師の先生をお招きし講演会をしたり、パネルディスカッションをしたり、客として参加する立場だった。
しかし今年は、障害者である私たちが私たちの手で作り上げ、参加者500名の方々に訴える形式を試みた。
初めてだった。各団体の主張を初めて知った思いだった。おなじ「障害者」と言われている私たちだって、
他団体のことはまったくと言っていいほど、知らないことばかり。勉強させられました。

会場を出ると、雨。式典で一緒だった彼が私に傘を差しかけながら「僕、バスで帰るよ。お姉さんも一緒に帰る?」と
誘ってくれた。「バスでは帰らないよ。それに私はおばさんだよ」と言うと「じゃ、おばさん、一緒に帰ろう」と言う。

個々に障害は違うけれど、私たちの向かう道はひとつかもしれない。そう思った一日だった。