8/18.19 日本青年館
「アンナ・カレーニナ」

幕が開く前からチャイコフスキーの曲が流れ出し、幕が開きシンプルな柱のセットと椅子が横1列に並べられていました。
そして、今回単独初主演となった朝海ひかるさんのアナウンス…舞台に貴族達が出て来て従僕・凰希かなめちゃんの第一声。
貴族の晩餐会の様子なのですが、貴族達がイスに座り料理が次々と運ばれてくる(全てジェスチャー)のですが、その料理と同時に、主要な方達も登場します。それぞれの人物を料理に例えていてとてもユニークでした。

(スティーバ・美郷&ドリィ・森央)前菜「きまぐれサラダ夫の浮気風」辛口スパイスを効かせたドレッシング。
(カレーニン・貴城&アンナ・紺野)「ロシアの伝統的なスープ」家庭的でクセのない味付けが長く好まれる秘訣。
(ヴィロンスキー)メインディシュ「小羊のステーキ」爽やかな恋をイメージしてソースには薔薇の香料を…。
このヴィロンスキーが登場する時に、セルプホフスコイも深緑の軍服で颯爽と登場。
(コスチャ・立樹さん)デザート「ロシアの田舎風プディング」キャラメルには片思いのほろ苦さを。
この表現がとてもよく考えられていて、印象的でした。

ヴィロンスキーは母を迎えに行ったモスクワ駅で、アンナに会います。汽車から女性が1人降り立って、階段をおりる所でヴィロンスキーは何か感じる物があったのでしょうね、二人が見つめあった瞬間舞台上が無音になり、行き交う人々も静止、そっとアンナの手をとります。私も思わず息を止めてしまう程の静けさでした。

次は舞踏会、桂ちゃんはここでは紳士として黒エンビで登場。男役が横1列に並んで「今日はあの娘を射止めるぞ」と言う感じで、襟元やそで口を正したり、裾を気にしたりそれぞれポーズを決めます。この決めポーズの桂ちゃんが可愛かったです。私の場合、射止めるぞと言われる前にもう堕ちてますけどね(笑)。
入れ代わりで令嬢達も出て来て、今夜はあの人と…と言う感じでお化粧を直したりドレスを気にしたりそんなそぶりをして皆さん可愛らしかったです。
そして、その後舞坂さんとダンス。ワルツやマズルカを踊ります。

この場面ではコンスタンチンがキティに踊りを申し込むのですが、いざ手を取り踊ろうとした時に曲が終わってしまい、立樹さんの「へ?」と言う気の抜けた一言が笑いをとっていました。立樹さんのコンスタンチン、とても良さそうな暖かい人柄が出ていて、好感が持てました。
後で、傷心したキティを慰めようとしている場面でも、人柄の良さとキティへの一途な思いが溢れていてよかったです。

一方浮気が甲斐性(?)のスティーバ・美郷さん、奥さんのドリィ・森央さんをダンスに誘うのですが、「若い子と踊ったら」とあっさり言われてしまいます。しかし「マズルカはお前と踊ると決めている」と言う言葉にドリィは泣き出し、そこで「化粧がくずれるじゃないか」と言う所が、何気ないセリフですが笑ってしまうのはどうしてでしょう(笑)。
でも、スティーバさんは浮気はしても、奥さんの事を愛してるんですね。ハンカチを差し出したり、可愛いおじさまと言った感じでした。

マズルカが始まり、ヴィロンスキーとアンナも踊りだします、それを見たキティが傷心して部屋に閉じこもって、人形を相手に切ない気持ちを歌います。舞咲りんちゃん、お芝居も歌も上手な娘役さんですね、よくお化粧が…と言う事を耳にしますが、私はそれ程きにならなかったです。これからももっと活躍してほしいと思いました。

そして美穂さん扮するベッツィのサロンでは、水色の爽やかな軍服で、婚約者のナスターシャ(舞坂)と登場します。
ヴィロンスキーを見付けて声をかけます。「ペテルブルグにきてたのか?」とヴィロンスキーに聞かれて「ちょっとヤボ用でね」と答えるセルプホフスコイ、ベッツィがナスターシャのとの婚約が決まったことをつげるのですが、セルプホフスコイ照れて言えない様子でもなく、「婚約」と胸を張って言えない何かがあるのかなと感じました。
「将来の事を考えたら、そろそろ身を固めた方がいいと思って」と言う所なんかは、地位や名誉の為なのかと感じさせました。
セルプホフスコイがヴィロンスキーに釘をさすように。「…良くない噂を耳にした、エリートで地位も名誉も将来も約束されたお前が、色恋に道をはずすなんてバカげてる…」。旧友として今まで過ごして来て、進む道は同じ物と思っていたのでしょうか?複雑な心境だったのでしょうね。
最後にヴィロンスキーに「恋をしたことがあるか?」と投げかけられ、「あぁもちろん!俺には婚約者もいる」と笑いとばすように答えるセルプホフスコイ。「あぁ…そうだな」と自分につぶやくように言うヴィロンスキー。
決して悲しい場面ではないのですが、何が幸せなのか、これでいいのか…この二人の友情生きざま、心境が痛々しく思うシーンでした。

競馬場では、赤いベストに黒いパンツ、白いシャツ姿。ムチを持って馬にまたがっている姿勢です。「行くぞ、セルプホフスコイ、お前には負けんぞ!」とヴィロンスキーに言われ「望む所だ!」と答えるセルプホフスコイ。軽快な曲に乗りながら、抜きつ抜かれつ競馬のダンス、「ハッ!!」と言うかけ声も…桂ちゃん自身もとても楽しそうに踊っていて、セルプホフスコイとしても旧友と一緒に、勝ち負けだけじゃなく競馬を楽しんでいるようでした。

ヴィロンスキーを観戦しているアンナ、その姿を見ながら歌うカレーニンさんがとても切なくて可哀想でした。「こんなに近くにいて手の届かない、こんなに長く居て心の届かない…私の知らないもう1人の女」と…地位や名誉の為に一生懸命で世間体を気にするちょっと高慢な人だけれど、本当はアンナをとても愛しているんだと感じさせられました。

その後ヴィロンスキーが落馬、観戦していたアンナは感情が押さえられなくなり、カレーニンさんに向かって「彼を愛してる」と言ってしまう。

怪我したヴィロンスキーを手当てする為に、セルプホフスコイが肩をかして舞台奥を横切って行きます。セルプホフスコイは「取りあえず手当てを!」と…親友思いのかっこいい桂ちゃんです。

一部の最後はヴィロンスキーとカレーニンとアンナが苦悩している様子を歌とダンスで表現。途中でカレーニンさんはいなくなるのですが、セリョージャ(山科)が出て来て「ママー!!」と叫びます。私はこの「ママ!」に弱いんです、どうしてこんなに可愛い子を置いて行ってしまえるのか…また山科愛ちゃんが上手なだけあって、とても可哀想になってきます。

セリョージャと家の息子が同じ年なのですが、6〜7才の子はもっとふてぶてしいです(笑)、時代も国も違いますがちょっと設定が子供っぽいかな?と言う気はしました。でもおもちゃで遊ぶ仕種、座ってる時に足をパタパタ揺らしている所なんかは思わず「そうそう」とうなずいてしましました。

そして2部は、1部の最後「ママー!!」と言う全く同じ所から始まります。そしてベッツィの歌…ゆっくりとした振り付けで、セルプホフスコイくんも上手から下手へ横切って行きます。本当に美穂さんの歌は上手ですね、お芝居でも重要な役で、自分のサロン内の出来事周りの出来事を全て理解しているような重要な役を見事に演じ、かっこいい女性でした。

ヴィロンスキーを選んだアンナ、耐えかねてセリョージャを連れて家を出るカレーニン、雨の降るモスクワの駅でコンスタンチンがため息ばかり…と歌う中、傘を下ろし天をあおぐ姿がなんとも言えない…どうしてこんなイイ人を捨ててしまったんだろうと思うとても切ないシーンでした。

その後、コンスタンチンは両親の陰謀もあって、キティに再会。再度プロポーズをして今度は受け入れられる。一方アンナはヴィロンスキーとの子を産み、体調を崩して死にかけてしまう。
そこに駆け付けたカレーニン、ベッドに横たわりながら必死に許しをこうアンナにカレーニンは手をとって許しをこうのは自分の方だと全てを許してしまう…

勝手に出て行ったのに、なんて心の広いカレーニン氏でしょう…最初は冷たく感じるカレーニンでしたが、本当は奥底の心の中ではアンナを愛していたのですね。
でも、映画よりカレーニンさんがイイ人に書かれているなと感じました。カレーニンはヴィロンスキーに「ここにいてやってくれ」と言いますが、二人の姿を見て、アンナを苦しめて自分の無力さにピストル自殺をはかってしまいます。

そしてベッツィのサロン。セルプホフスコイとナスターシャの婚約祝いで乾杯、そこに未遂に終わったヴィロンスキーも現れます。ヴィロンスキーは職を手配してもらっていたようで、パシュケットへ任務に行く事になる。任務に戻ってくれる事を喜ぶセルプホフスコイ、仕官学校時代は負けたく無いと必死だった事を語ります。

そのまま黙って行ってしまおうとするヴィロンスキー、もう会わないと決めたアンナ…しかし最後の別れに来るヴィロンスキー。
距離を置いて話す二人、別れを告げて行こうとするヴィロンスキーですが、最後になって断ち切る事が出来ずにまた二人で家を出てしまう。イタリアへ…

軽快な音楽に合わせて、仮面を付けて(付けたり外したり)踊る桂ちゃんは、飛び跳ねてとても楽しそうでした。
ガラっと曲調は変わり、波の音…同期と組んで今度は華麗なダンス…ここでは難しいリフトも頑張っていました。見ていてドキドキハラハラ、担ぐ桂ちゃんも上に乗る娘役さんも耐えてるぞ〜と言う雰囲気はあったものの、顔は笑顔でした。そしてコムさんとまひるさんのデュエットダンスはとても綺麗で息もピッタリな所を見せてくれました。
ピエロ(山科)が出てくるのですが、セリョージャと面影が重なり切なくなったアンナは、モスクワに戻る事にした。

しかし、外に出れば不倫の仲なので白い目で見られ、オペラハウスでヴィロンスキーの母にもなじられ、その様子を上手く行かなくなる二人を心配げに見つめるセルプホフスコイ、アンナは倒れて「馬車を」と誰かが叫び、一目散に駆け出して行くのがセルプホフスコイでした。
いろんな不安な気持ちからアンナはモルヒネに手を出してしまいます。出かけなければいけないから後でゆっくり考えようと、アンナを残して行くヴィロンスキー、しばらくして彼を追い掛けようとアンナは駅へ…家を出る前に飲んでしまったモルヒネのせいか、「汽車に乗らなきゃ、行かなきゃ」とアンナは汽車に飛び込んでしまう…。

映画では明らかに自殺が目的で飛び込んだと思ったのですが、それではあまりにストレートすぎて嫌だなと思って、舞台ではどうなるのか気になっていた所でもありますが、薬のせいで?と言うか、自殺のような自殺じゃ無いような設定にしてくれた植田景子先生に感謝しました。
でも、モルヒネを飲まなければ…どうなったのでしょうね、悲しい結末でした。

そして最後の場面、桂ちゃんはプログラムの写真にもブロマイドにもなっている衣装。ヴィロンスキーがパシュケットに旅立つ所です。「いきて帰って来てくれ」と切に願った面持ちで告げるセルプホフスコイ、自分が紹介した任務先だけど旧友が遠くに行ってしまう寂しさが良く出ていました。

そして、アンナの日記を持って現れるカレーニン、その日記を読んでヴィロンスキーに嫉妬をした…そこには自分の知らない情熱的なアンナの姿があったから…しかし、その日記は君が持っていてくれと渡します。そして、アンナとヴィロンスキーの子は責任を持って育てると…ここにも心の広さや切ない思いが出ていてカレーニンを可哀想な人と思わずにはいられませんだした。

ヴィロンスキーが行ってしまった後に、セルプホフスコイがヴィロンスキーに対しての切ない気持ちを語ります。今にも泣き出しそうな表情で、昔から誰よりも秀でていて、地位も名誉もつかめるヴィロンスキーなのに、何もかもすてて自分には出来ない生き方、アンナが死んでしまって何もかも失ったのでは無くて「掴みたくても見出す事すら出来ない光」を彼は手にしたのだと…複雑な心境を語っていました。

ここの解釈は人それぞれにあるようで、私にはそんなヴィロンスキーがうらやましいのだと思いました。でも、自分にはそんなことをする勇気も度胸も無い。小さい頃からエリート社会を歩いて来たセルプホフスコイには、考えもしなかった事であって、ヴィロンスキーも同じ道を歩んで行くと思っていた。でもヴィロンスキーによってそんな生き方、愛し方もあるんだと気付かされ、自分はこれでいいのかと一瞬戸惑いがあったのではないかと思います。

その後に「でもこの世界(貴族社会)で生きて行くのよ」とベッツィに言われ、社交界の場面となりナスターシャが微笑んで手を差し伸べますが、素直に手を取れずに一瞬躊躇します。
何も知らずに微笑んでるナスターシャと、これでいいのかと悩むセルプホフスコイが相乗効果となって、ちょっと胸の苦しくなる場面でした。
でも結局は貴族社会でしか生きられない…それが一番いいのだと思ったのでしょうか?ナスターシャの手を取り踊ります。ここの芝居は一番難しかったのではないかと思います。

ナスターシャとは地位の名誉の為に結婚をしたと思うのですが、後からきっと愛情が生まれていったのだと私は思います。最初から全然愛情がなかったわけではなく、ナスターシャとなら…とどこかで思っていたのと、ナスターシャの暖かな微笑みにどんどん心を開いて、熱烈ではなくても暖かい家庭が持てたのではないでしょうか?

そしてフィナーレ…黒エンビで男役の群舞、かしげさんを中心に立樹さん、桂ちゃんと前列に3人で踊っていました。その後コムさんがセンター奥より登場、桂ちゃんは上手に移動し1人で♪ダバダと歌います。
ここはカッコよかったです、なぜか一番このダバダにハマった私でした(笑)。

とにかくこの公演、目立っていた桂ちゃんでした。コムさんと同期で自分の方が出世してしまう役、経験の少ない分一緒に並ぶと軍服の着こなしなど差が出てしまう所もありましたが、随分学年も離れているのに、その差を少しでも縮めようと本当によく頑張ったと思います。実際に差は縮まっていたと思います。他にもかしげさん、立樹さんとスターさんが出演している中で、頑張って食らい付いて行ったと言うのが私の印象でした。
そして、同期や下級生も上手な子が多いと言う事をあらためて認識しました。


桂ちゃん、本当にお疲れ様。この公演がまたステップアップに繋がるのでしょうね。