天帝様がお忍びで下界へおくだりになり,土地神の案内で民情をご視察になった。
ある家の前までいくと,天帝様は足を止められた。
天 帝 「この家には重病人がいるようだ。助けてやろう」
土地神 「あれは,病人ではございません。夫婦が房事をおこなっているところでございます」
天 帝 「房事とはなにか?とにかく,中へはいって視察しよう」
天帝様は中へ入ってごらんになりながら
天 帝 「これが房事と申すものか。人間というものは奇妙なことをするものだな。
夜は休養すればよいのに,なんのために息を切らしてまでこんなことをするのだ」
土地神 「子どもをつくるためでございます」
天 帝 「ほう,かようなことをして子どもをつくるのか。いったい一年に何人くらいつくるのだ」
土地神 「年にひとりがせいぜいでございます」
天 帝 「なに,一年にひとり?それならもっとゆっくりやればよいではないか。
なにもあんなにせわしなくすることはあるまい…」
|