ケチな人が問題にしたのではなく,泡を量目に含めて売っているビヤホールは
「価格統制令」に違反するとして検察庁が訴えたのである。
この訴えに対し,昭和17年9月29日,東京区裁判所の大野判事の下した無罪
判決文にはこんなことが書いてある…
「開放常圧ノ状態ニ置カレタ生麦酒ハ其ノ本質タル泡沸性ヨリ持続性アル泡ヲ生ズ
ルコト敢テ説明ノ要ナキトコロナレバ,被告人等ノ如ク生ビールヲ酌器売スル場合
ニ於ケル実績価格ハカカル泡蓋ヲ容器ノ上縁ニ存置シタル侭ノ状態ニ於テ之ヲ判定
スルヲ最モ妥当ナリトセザルベカラズ」
読みやすいように書き直してみると…
「わが国においては明治32年8月,日本麦酒株式会社が新橋にビヤホールを開設し
て以来今日にいたるまで,生ビールをジョキに注いで客に出しているという事実は,
はっきりとした慣行であって,これと異なった販売方法はない」「生ビールは炭酸ガ
スを含有するから快適なのであって,泡を含まないビールを考えることができない。
客も泡の消える前に飲むというのが取引の実情である」
水1リットルが入るジョッキに注いだビールは泡とも1リットルと言っていのだ…
この件は上告されたが昭和19年にも同様の判決が宣告されている。
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