新本格ミステリィ



本格とはどこが違うの?
 本格と新本格。これは言葉の違いだけで、作品としてはどちらも本格なんです。ただ、新本格作家は読者の読み(推理)に対して、裏の裏をつこうとする傾向が稍多い様にも感じます。(そうとは限りませんけどね)
 新本格は完全に日本のみでしか通用しない造語です。乱歩以来続いた本格は、清張以後(って言葉もありますね)、社会派の波に完全に飲み込まれてしまいます。純粋な本格は売れない時代の到来です。売れるためには複雑で緻密なトリックはむしろ逆効果。そして売れない作品は出版されることすら殆どなくなってしまったのです。(淋しい…)
 そんな中でも細々と、或る意味頑固に、本格を書き続けた作家も居ます。鮎川哲也島田荘司などがそれに当たります。島田荘司が『占星術殺人事件』で乱歩賞の候補作にまでなりますが、結構あちこちから叩かれた様です。


そもそも新本格って何?
 そんな訳で、時代は完全に本格から離れてしまった、かに見えましたがやっぱり好きな人は好きだったんですね。懐古趣味とでも云いましょうか…昔ながらの本格を求める人たちが世の中にはちゃんといて、その間に放り込まれた作品が、綾辻行人『十角館の殺人』でした(島田荘司の推薦でデビュー)。
 『十角館の殺人』は離島の館で連続殺人が起きると云う、非常に本格らしい設定や雰囲気をとてもとても大切にした作品でした。が、まぁ、これまた凄まじい論争を呼び起こしてしまいます。 それらは主に、「これは本格と呼べるのか」と云うものと、(その後事ある毎に新本格作家が云われ続けた)「人間が描けていない」と云うものに大別されました。
 なにはともあれ、この作品以降の本格作品は新本格と呼ばれる様になります。もちっと正確に云うと、ある出版社の編集者さん(その方こそ有名な宇山さん)が販売目的で使った言葉なのです。(遙か昔は別の意味で使われたこともあります)


新本格はどうなって行ったの?
  そんな生まれ方をした新本格。一部の人からは非難囂々、一部の人からは大絶賛。その結果はと云うと…書店をご覧頂ければ分かりますよね(^^) (新)本格ばかりです。あ、でもでも、本の帯に「本格」と書いてあるのは余りあてにはなりませんです。「本格は売れない」時代から、「何でも良いから本格とうたっておけばOK」な時代へ突入してしまったのですね。だから本格じゃない作品にまで堂々と本格ってうたわれると。…それはそれでどうなんだ?(^^; そもそも本格ばっかりになるのもねぇ。。。



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