トラヴェルミステリィ



トラヴェルミステリィって何?
 20世紀後半、日本で隆盛を極めたジャンルです。簡単に云ってしまうと、都市に住む人間がちょっと旅行して事件に巻き込まれたりするのがこのジャンル。犯人が旅先で事件を起こしたりとかもあり非常に幅広いジャンルです。

 内田康夫浅見光彦シリーズなどが代表例ですが、特別なトリックが存在しなくてもこのジャンルは結構成立すると云う特徴があります。旅情ミステリィと云われる様な旅先の風景描写等を組み込むことにより、たとえトリックなしでも作品として十分な纏まりを見せることができるのです。

 一方、このジャンルで最も威力を発揮するのがアリバイです。アリバイトリックの中でも時刻表トリックと云われるものですね。これは日本が一番! と云うのも、日本のダイヤって潔癖なまでに正確。理由なく10分も列車が遅れるなんて殆ど考えられませんよね。日本人って凄いですね。だからとんでもなく緻密なトリックが成立するわけです。

 時刻表トリックの代表的な作家と云ったら勿論西村京太郎。ただ、最近西村京太郎はこのトリックを作品に使いません。何故でしょうか。それは以前発表された、ある作品に登場した人物の台詞から推し量ることができます。ざっとまとめると「コンピュータの発達と共にアリバイトリックを使う作家は消えゆくことになる」と云っているのです。実際、到着時間や出発点等を入力すれば何パターンもの検索結果を一瞬で返してくれる時代が到来しました。もう完全に終わってしまったトリックと云えるんでしょう。(残念)
 そうそう、肝心な作品を忘れていました。松本清張『点と線』です。日本のミステリィ史を語る上で欠かすことの出来ない作品ですね。



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