有栖川有栖
<作家アリスシリーズ> |
絶叫城殺人事件 (新潮文庫) スイス時計の謎 (講談社文庫) 白い兎が逃げる (光文社文庫) |
<ノンシリーズ> |
作家小説 (幻冬舎文庫) 作家の犯行現場 (新潮文庫) |
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絶叫城殺人事件 |
ストーリィ
火村先生と作家アリスが登場します。6短編が収録されていますが、題名はどれも「○○○殺人事件」です。
「黒鳥亭殺人事件」:旧友の画家に請われて訪ねることになったアリスたち 「壺中庵殺人事件」:密室で壺をかぶった首吊り死体が発見 「月宮殿殺人事件」:ホームレスが川原に建てた奇妙な家が放火される 「雪華楼殺人事件」:シンナを吸っていた少女は事件が切っ掛けで記憶が曖昧に 「紅雨荘殺人事件」:映画の舞台にもなった屋敷で女主人が死亡 「絶叫城殺人事件」:ゲームと類似した事件が発生 |
感想
クールだけれども、どこかお茶目な火村先生。その魅力が存分に味わえます。一番最初に収録されている「黒鳥亭殺人事件」が、それを十二分に伝えてくれます。事件の大筋は途中で推測できてしまいましたが、それは些細なこと。他の作家だったらこんな雰囲気で終わらせることは出来ないでしょう。色々な要素が柔らかく絡み合い、アリスならではの読了感をもたらします。<20の扉>は面白いですね。見せ方も上手いです。その他にも童話が出てきたりして、懐かしさの漂う作品でもあります。「月宮殿殺人事件」も綺麗に纏まっていますし、成る程と思わせるものがあります。そして「絶叫城殺人事件」。311ページ付近で、アリスが火村先生に関してちょっと発言しています。これはナカナカ興味深く、一読の価値あり。そして事件は動機ですね。これはかなり気に入りました。
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作家小説 |
ストーリィ
作家の苦労を色々な形で表現した作品。
「書く機械」:売れっ子作家を作り出す恐ろしい機械 「殺しにくるもの」:一人の少女が作家に当てたファンレターと巷の事件 「締切二日前」:締め切りまであと僅か! その悪あがきを描きます 「奇骨先生」:作家にインタビューを試みる高校生男女 「サイン会の憂鬱」:駆け出し作家が故郷でサイン会をすることに 「作家漫才」:二人漫才で表現する作家の思考の一端 「書かないでくれます?」:偶然であった作家と編集者がタクシーで移動する 「夢物語」:語り手の口から出るのは誰でも知っている有名な作品 |
感想
作家とは大変な職業。それを在り来たりではない、ちょっと変わった表現で読者に教えてくれる作品。苦悩、誘惑、悪あがき。その結末は多種多様。一番のお気に入りは「締切二日前」。作品全体で、最初から最後の最後まで、作家の苦しみを表現してくれます。でも、読了感がどんよりすることは無いでしょう。「サイン会の憂鬱」もすっきりした感じが好みです。
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作家の犯行現場 |
ストーリィ
ミステリーの舞台となった日本全国の「犯行現場」を、有栖川有栖が実際に取材に訪れる旅行記。多くの写真とともに、ミステリィ作家ならではの表現で現場を紹介します。
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感想
まず最初は有名な軍艦島。島の形が本当に軍艦そのもの、と云う島です。ここでいきなりやられました。さすがっ、と唸らずにはいられません。多くの場所が紹介されますが、それに併せて作品も紹介されているため参考になります。もっとも興味を引かれたのは「とりっくあーとぴあ那須」。是非行ってみたいと思いました。
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スイス時計の謎 |
ストーリィ
国名シリーズ第7弾。火村先生と作家アリスが出会った事件の数々。
「あるYの悲劇」:ロックバンドのギタリストが自分のギターで殴られて死亡した 「女彫刻家の首」:首を切断された女彫刻家。もめる夫と隣人。 「シャイロックの密室」:悪徳高利貸しを殺すことに成功。完全犯罪だ。 「スイス時計の謎」:同窓会のメンバが殺され、腕時計が消えた |
感想
殺人事件が起きたところからストーリィが始まることが多い、本シリーズ。そのスタイルを貫き続けているところが好きです。「あるYの悲劇」はアンソロジー『Yの悲劇』に収録された作品。「Y」を表現するために、苦労した様な印象を受けます。「女彫刻家の首」は短くまとめられていて、良いテンポのまま収束します。「シャイロックの密室」は倒叙。この1作だけでなく、短編集としてこの作品を見た場合にも、変化があって良いと思います。「スイス時計」はとてもストレートで、とても本格で、とても懐かしい作品です。
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白い兎が逃げる |
ストーリィ
火村先生と作家アリスが出会った事件の数々。
「不在の証明」:マヌケな泥棒が見た証言でアリバイが成立する 「地下室の処刑」:休暇中の刑事は大物テロリストに拉致されてしまった 「比類のない神々しいような瞬間」:現場に残された1101の意味とは? 「白い兎が逃げる」:ストーカに悩む女優を救おうとする計画が実行されたが… |
感想
相変わらず読みやすい、明るい雰囲気の本格ミステリィです。純粋な本格ミステリィなのに、どこか空気が明るい不思議な作品を書くのが有栖川氏の魅力。本作でも殺人事件がおこるものの、純粋に謎解きゲームをしている雰囲気を残しています。4編とも、それぞれに個性を持った作品で、確かなトリックに築き上げられた良質の短編集です。
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