浅暮三文


<ノンシリーズ>
ラストホープ (創元推理文庫)
嘘猫 (光文社文庫)
石の中の蜘蛛 (集英社文庫)

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ラストホープ
ストーリィ
釣具店「ラストホープ」を経営する藤堂と刈部、料理店経営の李。3人は昔からの腐れ縁。「ラストホープ」に届いた一枚のファックスに書かれていた内容は、「山女魚を釣って欲しい」とのこと。頑張って依頼を果たしたのですが、何者かに襲われ、山女魚は奪われてしまいます。そして再びファックスが届き…。一億円争奪戦が始まります。
感想
ユーモアミステリィ。キャラクタ的にも、天藤真を思い出させる雰囲気です。何度も襲撃されることになりますが、その手口は可成り酷い。前半は比較的お堅い感じです。ところが関係人物の輪郭がはっきりするに従って、何やらハチャメチャに。痛快で憎めぬ悪漢たち(?)が大勢登場。段々楽しくなっていきます。もう少し早くから軽い雰囲気にした方が、作品に入りやすかったかと思います。
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嘘猫
ストーリィ
青年・浅暮三文が東京に出て来てからの生活を描いた私小説。広告代理店に勤め、仕事仕事の日々。慣れぬ東京での生活。一人淋しく暮らす彼の前に現れたのは一匹の肥った猫。雨宿りをさせるため、猫を家の中へ。雨がやみ一端は外に出したものの、翌日ふたたび上がり込む猫。読書する浅暮氏。そして…。
感想
猫ですネコ! 猫好きだったら絶対読みましょう! そんな作品です。とにかく、面白い、可愛い、楽しい。浅暮氏は普通にネコと会話しています。きちんと躾けます。愛情があります。家族なのです。飼い主とペットの関係ではなく、同じ目線にいるのです。猫好きだったら、この作品を読まねば嘘です!
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石の中の蜘蛛
ストーリィ
アパートに引っ越してきた早々、交通事故にあった主人公。しかも、それがきっかけで、聴覚に異常をきたしてしまいます。とても過敏になってしまった聴覚。嵐の様に入り込んでくる音音音…。交通事故が、アパートの前住人に関係があると考えた彼は、其処彼処に残された音の痕跡を集めることにより、調査を進めます。
感想
残された音を、一つ一つ集めていき、見たことも会ったこともない人物を捜す。そのプロセスはとても興味深いものです。全体的に、すごく緻密な印象を受けます。そのせいか、若干ですが緊迫感が薄い印象。異常な状態に陥った主人公の心理描写に、もう少し触れて欲しかったと思います。井上氏の『オルファクトグラム』と読み比べるのも一興の作品でしょう。
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