樋口有介
<柚木草平シリーズ> |
彼女はたぶん魔法を使う (創元推理文庫) 初恋よ、さよならのキスをしよう (創元推理文庫) 探偵は今夜も憂鬱 (創元推理文庫) 刺青白書 (創元推理文庫) |
<ノンシリーズ> |
風少女 (創元推理文庫) |
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彼女はたぶん魔法を使う |
ストーリィ
元刑事のちょっとさえない主人公・柚木草平。フリーライタの片手間に、元上司の冴子から持ち込まれる事件を処理する影の私立探偵。何故か行く先々で、綺麗な女性が待っている。別れた妻、その妻に引き取られた娘、愛人でもある冴子、依頼人も女性、被害者も女性、その友人も勿論女性。轢き逃げされた女子大生は果たして事故だったのか。その真相を探るドキドキ、ぞろぞろ登場する女性たちにもドキドキ。
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感想
ずいぶん男性的な作品だと思います。ちょっとさえない主人公なのに、何故か周りは美女ばかり。しかも色んなタイプの女性が登場します。相手は子供…なんて軽くあしらっているのに、すっごい表面的なのが見え見えで、或る意味うまく表現されています。ただ、この主人公は、別れた妻との間に子供がいることを隠しません。だからそんなに不快には感じないんです。むしろ背中を押したく(蹴りたく?)なる感じ。テンポも良く、非常に面白い作品です。ところで、このステキなタイトル、一目惚れに近い衝撃でしたが…魔法って一体何だったんでしょう?
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初恋よ、さよならのキスをしよう |
ストーリィ
柚木草平シリーズ第2弾。娘との約束を守るため、やむなくスキー場を訪れた柚木草平。思いがけず初恋の女性・卯月実可子とばったり遭遇。再会の約束をするが、実可子は何者かに殺害されてしまう。実可子の姪から依頼を受けた草平は己の青春と向き合いながら、捜査を進めていく。
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感想
1作目に比べて登場する女性の数が減った上、女性とのやりとり自体もあまり多くありません。娘との対話も最初だけで、ちょっと華やかさに欠ける印象。しかし、人間関係や心理描写が比較的しっかりとしているため、物足りなさはさほどでもありませんでした。
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探偵は今夜も憂鬱 |
ストーリィ
柚木草平シリーズ第3弾の短編集です。
「雨の憂鬱」:悪い男に付きまとわれ何とかして欲しい、とのこと 「風の憂鬱」:消えた元アイドル歌手を探して欲しい、とのこと 「光の憂鬱」:死んだはずの旦那から手紙が来た、とのこと |
感想
短編集のせいか、「冴えない中年男が、動き回る先々で美女に出逢い、こんな嬉しいことがあって良いのだろうか」という設定は殆ど感じることができません。一応、それぞれの作品で美女は出てくるのですが、あまり特別な印象を受けません。短編推理小説としてはそれなりに面白いのですが、シリーズ作品の中の1作としてはもう一つでしょうか。
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刺青白書 |
ストーリィ
柚木草平シリーズ第4弾。中学生の雰囲気そのままに、ちょっとぼんやりしたまま大学4年生となった鈴女(スズメ)。街で偶然出会った当時の同級生が、その日の夜に変死体となって発見されたことに衝撃を受けるが、直前に起きたアイドル殺人の被害者も中学の同級生だった。スズメと草平はそれぞれの視点から事件を開始した。
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感想
本作の視点は主にスズメにあり、草平はちょっと脇役です。これまで草平からの視点で、ちょっと軽い雰囲気が感じられましたが、端から見るとどうなのか。少しハードボイルドな印象も受けます。全体的に構成がしっかりしていて、ミステリィの要素もバランス良く埋め込まれているため、非常に読みやすく、読み応えも十分です。
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風少女 |
ストーリィ
父の死で帰郷した斎木亮は、中学生の時に憧れていた同級生・川村麗子の妹・千里に出会った。千里の口から麗子が変死したことを聞かされた亮は、ざわつく心を抑えるため、麗子の死の真相を探り始める。同級生の元を訪れ、過ぎ去った時間の大きさを実感しつつ調査は進む。
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感想
紹介文には「青春ミステリ」の文字があります。いかにも青春らしい雰囲気の作品で、多感な時期、濃密な時間をしっかりと感じさせる作品です。少し荒削りな感もありますが、完成度は比較的高く、かつ、非常に読みやすいのは樋口さんの作品全般の特徴です。土地が特定されていて、世界もあまり広くないため、作品の雰囲気が一定していて、それもまたベターです。
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