本格ミステリ作家クラブ
<ノンシリーズ> |
紅い悪夢の夏 (講談社文庫) |
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紅い悪夢の夏 |
ストーリィ
本格ミステリ作家クラブ編のアンソロジー。年に一度編集される「その年の優れた本格ミステリ短編」作品が集。2001年版です。
有栖川有栖「紅雨荘殺人事件」:映画の舞台にもなった館の首吊り死体 太田忠司「四角い悪夢」:久しぶりに見た猫の悪夢が示唆する物 加納朋子「子供部屋のアリス」:産婦人科で赤ん坊の面倒を見るアリスたち 北森鴻「邪宗仏」:聖徳太子はイエス・キリストだった?! 柄刀一「エッシャー世界」:宇佐見博士と不思議な絵画の世界 三雲岳斗「龍の遺跡と黄金の夏」:遺跡の中の死体と消えた犯人 小森健太朗「新・現代本格ミステリマップ」:アクロバット要素を加えたミステリマップ 鷹城宏「作者を探す十二人の登場人物」:「木製の王子」論 |
感想
本格ミステリ作家クラブの名に違わず、確かに本格を感じる作品集です。特に有栖川有栖の「紅雨荘殺人事件」は舞台も人物も雰囲気も、全てが本格らしい本格作品。映画のストーリィが素晴らしく、作品の世界構築に大きな役割を担っています。太田忠司の「四角い悪夢」は夢の謎を一つずつ解いてく展開。五里霧中の状態から真実を辿っていくのはドキドキ。加納朋子の「子供部屋のアリス」は暖かさと鋭さと優しさを兼ね備えた作品。著者のコメントがお気に入りです。北森鴻の「邪宗仏」は冒頭の聖徳太子=イエス・キリストが、最後まで読者の心を占め、有効に働いています。柄刀一の「エッシャー世界」は(或る意味本当の)絵画ミステリィ。柔らかな雰囲気の世界で、視覚的な謎解きと、論理的な解決が待っています。三雲岳斗の「龍の遺跡と黄金の夏」はSF&ミステリィ。SFと混じり合った世界ですが、化学的要素が有効でした。小森健太朗の「新・現代本格ミステリマップ」は島田荘司・綾辻行人の「本格ミステリー館」のミステリマップを新たな軸で作り上げたもの。納得できたり出来なかったりはありますが、こう云うのは見ていて単純に楽しくなります。鷹城宏の「作者を捜す十二人の登場人物」は麻耶雄嵩作品を論じています、が、麻耶作品未読者はネタバレ注意です。
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