池井戸潤


<ノンシリーズ>
銀行狐 (講談社文庫)
仇敵 (講談社文庫)
BT'63 (講談社文庫)

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銀行狐
ストーリィ
銀行を舞台にした事件を取り上げた短編集です。

 「金庫室の死体」:金庫室で見付かった死体と企業の倒産
 「現金その場かぎり」:窓口から消えた300万円の行方は…
 「講座相違」:間違った会社に送金してしまったことから意外な事実が明らかになる
 「銀行狐」:狐を名乗る犯人が銀行に対して次々と攻撃を加える
 「ローンカウンター」:若い女性が全裸の状態で殺害されていた
感想
銀行のシステム、金融業界の姿、その一面をしっかりと描いた作品です。元銀行員である作者ならではのリアリティでしょう。ミステリィとして単純に面白いのは「現金その場かぎり」。発生した事件の明解さ、誰を疑うのか、どの様に犯行が行われたのか。それらの謎がストレートに表現されています。
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仇敵
ストーリィ
大手銀行を追われた恋窪が、地方銀行の庶務行員として暮らす日々を描いた連作短編集。

 「庶務行員」:恋窪が大手銀行にいたことを知り同僚の松木が相談を持ちかける
 「貸さぬ親切」:5000万円の融資をするかしないか…
 「仇敵」:大手銀行に勤めていた頃のライバルから電話が入るが…
 「漏洩」:重要な資料が紛失し、情報が漏洩する
 「密計」:恋窪の昔の友人は窮地に立たされて利用される
 「逆転」:オフィス用品を扱う会社の窮状には原因があった
 「裏金」:経理部が把握していないお金の流通…裏帳簿
 「キャッシュ・スパイラル」:恋窪の仇敵も徐々に追い込まれ、対決の時が迫る
感想
銀行ミステリィと云ったら池井戸氏。本作では大手銀行から謂われなき不祥事で地方の、しかも庶務行員へ追われた恋窪が主人公。大手銀行での激しい争いからはじき出された恋窪は、闘争心や怒りの感情を完全に失っています。が、元ライバルだった男の死が、仇敵との対決を決心させる心境の変化が巧く描かれています。ただ、その戦いだけでなく、地方銀行の業務、とくに松木を中心とした融資のストーリィに重きを置かれているところが、作品全体のバランスをとっている様です。
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BT63
ストーリィ
BTとはBonnet Truckの略。現代での生活に破綻を来した主人公・大間木琢磨は、ふとしたことから父・史郎の若かった頃の記憶に入り込んでしまいます。父の過去は何故見えるのか。自分自身を捜す琢磨の歩みが始まります。
感想
意味不明なタイトル。それはトラックのことでした。しかし決して取っつきが良いとは思えません。あまり期待をせず読み始めることになりましたが、これが予想外に面白い。緊張感が維持され続けて、長編ではあるものの一気に読み切ることが出来ました。BTが良い味を出しています。ちょっと演出が強すぎる気はしましたが。
お気に入りの一文
あんなに幸せになれたんだからさあ。さすがは、父さんだ。
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