桐野夏生
<村野ミロシリーズ> |
ダーク (講談社文庫) |
<ノンシリーズ> |
柔らかな頬 (講談社文庫) グロテスク (文春文庫) |
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柔らかな頬 |
ストーリィ
第121回直木賞受賞作。故郷を捨てた一人の女は、都会で一人の男性に見初められ、2人の子供をもうける。ある日、夫の友人であり、彼女にとっては浮気の相手でもある男性に、北海道の別荘に誘われる。双方の家族が集まる中、人目を忍んで肌を合わせる二人。そんな時、彼女の最も愛する娘が謎の失踪を遂げる。
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感想
力作って言葉がぴったりの作品です。主役の女性の心に、深い穴が空いている様な印象を強く受けます。また、中盤から登場する元刑事の描写も読者をひきつけます。末期癌に冒された彼の不安定な状態。病気で余命幾ばくもないと云う設定は、小説ではよくとりあげられますが、多くの場合、その描写は不十分。本作でも、まだ若干不足と云う印象を受けますが、苦しみや痛みや不安定な心は可成り伝わってきます。「俺、この子供探してやるよ」の一言が、一番魅力的な一言でした。
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ダーク |
ストーリィ
探偵をやめた傷心のミロ。獄中で死亡した男への思いが体中を駆けめぐり、一人その事実を知らなかったという想いが、義父の殺害へとミロを駆り立てる。ヤクザに使われるだけの男、義父の内縁の妻だった盲目の女性、義父の知人で幼い頃のミロをも知るヤクザ。終われたミロは韓国へ渡り、その身を現地のヤクザな男にゆだねる。
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感想
壮絶。その一言に尽きます。あまりに非道い内容で、面白いことは面白いのですが、心に重く何かがのしかかってきます。己の感情に従い行動するミロ。己のみを守るために何もかも投げ出してしまうミロ。ハードボイルドと云ってしまえばそれだけですが、それにしても、もう少し救いがないものでしょうか。こういう作品はちょっと苦手です。
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グロテスク |
ストーリィ
極端なまでの女性社会。名門の女子校にあり、途中入学による肩身の狭さ。しかし同じく途中入学の和恵はそんなことを感じもせず、半ばムキになって自己主張を繰り返す。彼女はどうしてそこまでムキになるのか。妹のユリコの存在がずっと大きかったから…。
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感想
冷静で高見から見下ろした様な視線の描写が、タイトル通り、重々しく読者にのしかかってきます。内容はドロドロで、かなり重い。それが逆に麻薬的な魅力を持っていることも事実です。登場人物もやはり魅惑的で、引きつけられるため、よりいっそう雰囲気の重さに襲われます。面白いのですが…つらいです。時間が経てば、また読みたくなるかもしれません。
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