北村薫・宮部みゆき選


<ノンシリーズ>
推理短編六佳撰 (創元推理文庫)

§ 感想へ戻る §


七つの危険な真実
ストーリィ
平成7年度の創元推理短編賞を惜しくも逃した6作品が集録されています。

 遠田綾「萬相談百善和尚」:相談事を持ち込んだのは二流推理作家
 釣巻礼公「崖の記憶」:少年の日、弾みで犯した殺人の記憶
 永多正夢「試しの遺言」:莫大な遺産を巡って暗号を解く3人の兄弟
 永井するみ「瑠璃光寺」:指が奇妙に反り上がった画家の妻に惹かれた亮
 那伽井聖「憧れの少年探偵団」:近所でおきた密室殺人に挑む小学生たち
 植松二郎「象の手紙」:テレビコマーシャルを盗作と主張する脅迫状が届いた
感想
「萬相談百善和尚」はギリギリな感じの作品。和尚に持ち込まれた相談事の例を、もう少し(さわりだけでも)挙げてみたりとか…。和尚の解決もギリギリです。色々な意味で余裕が欲しい感じです。「崖の記憶」の記憶はすごい。が、「今」はどうなのでしょう。巻末で北村・宮部両氏が挙げている点も気になりましたが、過去の記憶と今の主人公や妻の存在などに結びついていないのが淋しいです。「試しの遺言」はひたすらパズルを解く無駄のない作品。それだけに3人の兄弟のキャラクタが弱い気がします。「瑠璃光寺」はもっとも完成度の高い作品。逆に言えば纏まりすぎていて面白味に欠ける感じです。「憧れの少年探偵団」は、月岡少年の子供離れした知能に違和感があります。小学生どころか、高校生ぐらいな雰囲気です。「こんな小学生いるわけないよ」と思わせない何かが必要と感じます。若しくは小学生らしいイヴェントを盛り込むとか。「象の手紙」は全体的にちぐはぐな感じがします。設定等、良い点は多いのですけれど…。何れにせよ、6作ともすごい作品ばかり。その作品の問題点を次々に挙げている北村・宮部両氏の拘りに脱帽。作家の大変さを少しだけ垣間見ることが出来ました。
↑リストへ   感想へ戻る