古処誠二


<ノンシリーズ>
ルール (集英社文庫)
接近 (新潮文庫)

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ルール
ストーリィ
時は太平洋戦争末期。追いつめられた日本軍はフィリピンでも無意味な突撃を繰り返し、屍の山を築く日々。武器もなく、何よりも食料すらまともにとることができない状況。片耳を失った中尉の鳴神は敗残兵を集め、輸送物資を山岳地帯へ送る任務を命じられる。マラリアや飢餓に苦しめながらの行軍の途中、一人のアメリカ空軍大尉を捕虜とした。
感想
何の心構えも予備知識もなく読んでしまいました。まず、戦争の話だと思っていませんでした。しかも、ここまで過酷な話だったとは。戦争物は沢山読んできましたが、心の準備がなかったので、今回は相当きつかったです。飢餓の描写はかなりのもの。しかし飢餓の苦しみを延々と書き連ねているわけではありません。アメリカ人大尉の視点から、その苦しみを無理なく補足しているのです。露骨過ぎず、きちんと描写していて、これはかなり効果的に思います。後半は特に息苦しさを覚えました。目をそらしてはいけないことであり、現実に、たった数十年前の日本人が味わった苦しみです。色んな人に読んで欲しいと思います。
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接近
ストーリィ
日系二世のサカノ。寝言さえも日本語でしゃべるように順応した彼は、最前線の地、沖縄へと送り込まれた。安次嶺弥一。今年12歳になる国民学校の生徒であり、日本のために出来る限りのことをしようと云う意思に満ちた少年。二人が今、接近する。
感想
太平洋戦争の中でも苛烈を極めた戦いの地、沖縄。多くの住民を巻き込んだその戦いを描いた作品は少なくありません。本作は、その沖縄戦に、ちょっとスパイスをきかせた作品。サカノはスパイです。が、そんな感じはまった抱きません。寧ろ、戦況が悪くなり、どんどん統制が効かなくなっていく日本軍の様や、住民の不安と期待。そういった心境が実に上手く表現されています。
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