近藤史恵
<ノンシリーズ> |
ねむりねずみ (創元推理文庫) スタバトマーテル (中公文庫) 天使はモップを持って (文春文庫) |
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ねむりねずみ |
ストーリィ
言葉を忘れていく歌舞伎役者中村銀弥。日常の何気ない物の名前から、舞台の台詞まで忘れるようになっていき、ついには話すことも出来なくなります。それを支える妻。時を同じくして殺人事件が発生します。
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感想
歌舞伎の舞台や人々を描いた作品です。そのわりに一般人の描写とあまり変化がなくてちょっと淋しい。逆に役者の世界から一歩離れた銀弥の妻は上手に表現されている気がします。「役者」と云うものをもう少し表現した方が良かったのではないかと。
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スタバトマーテル |
ストーリィ
誰しも認める実力を持ちながらも、あがり症が故にプロになれない声楽家・りり子。昔から、何度も別れを繰り返した恋人の西との関係も、完全に終わらせることも出来ない状況。そんな彼女の前に現れた男性は、版画家・大地。彼は芸術でも生活でも母親から離れることが出来ずにいた。
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感想
劣等感や複雑な負の感情を表現した作品。りり子の不安定な心。それをしっかり把握している前の恋人・西。しかし西には別の恋人が…。このシチュエーションがさらに不安定さを読者に訴えています。大地の存在も最初から怪しさが漂う。知れば知るほどそれは深みを増す。それらを綺麗に纏め上げています。最後は少々蛇足気味。
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天使はモップを持って |
ストーリィ
社会人一年生のぼく・梶本大介が配属されたのは、社内のオペレータルーム。女性が多く、多の部署に比べればチョットのんびり。入社してから半月くらい、ぼくは一人の少女と出会う。彼女の名はキリコ。広いオフィスをたった一人で綺麗にしてしまう掃除の天才だ。それどこから、オフィスで起きる小さな事件の謎まで解き明かしてしまうのだった。
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感想
連作短編集ですが、起承転結がしっかりしていて、完成度も高い作品です。とにかく可愛くて、とっても女性的で、軽い雰囲気をもっているけれど、しっかりした日常のミステリィ。語り手の大介は、良い具合に「良い人」で、いかにもおもちゃにされるタイプ。オペレータルームのお姉様方から、そしてキリコから。その反面、大介はとてもしっかりとした部分を持っています。キリコのことを、キリコの仕事を本当に理解していて、その純粋な行動は作品の世界色を決める大きな要素になっています。
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