鯨統一郎


<波田煌子シリーズ>
なみだ研究所へようこそ! (祥伝社文庫)

<タイムスリップシリーズ>
タイムスリップ明治維新 (講談社文庫)

<マグレシリーズ>
「神田川」見立て殺人 (小学館文庫)
マグレと都市伝説 (小学館文庫)

<ノンシリーズ>
九つの殺人メルヘン (光文社文庫)
北京原人の日 (講談社文庫)
ふたりのシンデレラ (光文社文庫)
「神田川」見立て殺人 (小学館文庫)
ミステリアス学園 (光文社文庫)
みなとみらいで捕まえて (光文社文庫)
すべての美人は名探偵である (光文社文庫)

§ 感想へ戻る §


なみだ研究所へようこそ!
ストーリィ
「なみだ研究所」。サイコセラピストの波田煌子と会計士の小野寺さんにより運営されるメンタル・クリニックです。教授の推薦により、サイコセラピスト波田煌子の元で働くことになった松本清。一見単なる天然ボケキャラクタの煌子。しかし彼女は唐突に分かるのです。そして「涙」。3人の関係が徐々に変化していく様をユーモアで描いた連作短編集です。
感想
キュートな煌子とシャープな小野寺、そこに放り込まれた松本。この3人のやりとりを見ていると、どうしても神麻さん(西澤保彦作に登場)が思い出されます。煌子と神麻さん、両者の大きく違うところは容姿です。勿論第三者の述べるところですが、煌子は野暮ったいらしい…。でもそんな感じは全く受けません。とても可愛く表現されています。幼稚な受け答え、無意味な質問、本当にしょ〜もない発言。それらが何故か意味を持ってしまう、それこそが「分かった」とき。下らない受け答えは多いのに、下らない作品とは感じない。バランスが良いのでしょう。出来れば完結をしないでおき、シリーズ化して欲しかったと思います。
↑リストへ   感想へ戻る



九つの殺人メルヘン
ストーリィ
日本酒バーで話題に上る巷の事件。謎を解くのは若く美しい女性、桜川さんです。

 「ヘンゼルとグレーテルの秘密」:社会的に力を持った老婆が殺された
 「赤ずきんの秘密」:ちょっと変わった女子医大生と祖母が殺された
 「ブレーメンの音楽隊の秘密」:まっ昼間に男三人が焼死
 「シンデレラの秘密」:転落事故か、はたまた殺人か
 「白雪姫の秘密」:殺虫剤入りのアップルパイ…の前に殺される
 「長靴をはいた猫の秘密」:写真・時計・アリバイの典型的なパターンが登場します
 「いばら姫の秘密」:自殺した女性は二人分の毒薬を持っていたが…
 「狼と七匹の子ヤギの秘密」:保母さんが殺され、容疑者には鉄壁のアリバイ
 「小人と靴屋の秘密」:何が起きているのかが明らかになるということは…
感想
事件を、メルヘンに当てはめて考え、推理する作品。以前流行った「本当は怖いグリム童話」とかのミステリィな部分を上手く引用した感じです。謎解きは、アリバイものが多く、少々変化に乏しい感があります。しかし、事件の話以外が素晴らしく、単なる謎解き作品ではないところがポイント。庶民的な話題が沢山出て来て(古くて分からないものも多々ありますが)、とても入りやすい作品です。それにしても…予想外の作品でした。。。
↑リストへ   感想へ戻る



北京原人の日
ストーリィ
自称カメラマンの達也が編集部に出社する初日の道すがら、空から軍服を着た老人が降ってきた。落下してきた老人は行方知れずとなっていた北京原人の化石を持っていた。北京原人の化石を発見すれば賞金は二億円。落下事故のどさくさで老人の手帳を間違って持ってきたことに気付き、化石捜索の切り札と考えるが、その日の生活にも困る貧乏状態。当座の資金獲得を目指し、編集部で一日一緒だった女性記者さゆりに近付く。
感想
タイトルはいかつい感じですが、作品は軽い雰囲気で始まります。空から老人が降ってくる。SFではありません。ちゃんと降ってきます。ミステリィとしては魅力たっぷりの設定です。ポイントは、達也とさゆりのどたばた展開と、歴史的考察とのバランスです。展開の妙と歴史的な内容のバランス・調和がしっかりとれています。もう一つ、警察側の視点もあるのですが、個人的には不要に思いました。
↑リストへ   感想へ戻る



ふたりのシンデレラ
ストーリィ
<O-RO-CHI>は小さいながらもスポンサも付いた劇団。看板男優・天野川敬介の妻は同じく看板女優の夕華。その夕華はメジャーデビューが決まっていた。夕華にとって<O-RO-CHI>最後の公演になるかもしれない「ふたりのシンデレラ」。主演は夕華と夏村芽衣のどちらに決まるのか。合宿を行っていた彼らだが、それぞれの思惑が、お互いの関係にヒビを入れていく。そして起こる惨劇。1人は死、1人が行方不明、そして一人は重傷の上、記憶を失っていた。
感想
ドキドキに満ちた展開。終始、読者に先を読ませ託させる辺りは流石です。だから最後まで一気読み。時々シナリオ調の部分があるのですが、(私はシナリオ調が結構苦手なのにもかかわらず)読みにくさを感じさせません。スピードのある一冊でした。物語としては面白かったのですが、トリックとしてはちょっと。そうならなければ良いなぁ、と思う方向へ進んでしまいました。予想が付いても無理がなければ良いのですが、これは無理でしょう。
↑リストへ   感想へ戻る



神田川」見立て殺人
ストーリィ
70年代の名曲に見立てられた殺人事件の数々…かどうかは定かでないが、そう云って事件を解決する間暮警部の事件簿。

 「「神田川」見立て殺人」:自宅のアパートで殺されていた女性は全裸だった
 「「手紙」見立て殺人」:画家が自宅で絞殺された
 「「別れても好きな人」見立て殺人」:娘婿が殺された事件の再捜査は…
 「「四つのお願い」見立て殺人」:自分の車に轢き殺された男性
 「「空に太陽があるかぎり」見立て殺人」:殺された娘のため田んぼを売り探偵社へ
 「「勝手にしやがれ」見立て殺人」:フリータが自殺したが残された女は殺人を主張
 「「ざんげの値打ちもない」見立て殺人」」:ボランティアを指揮した神父が殺害
 「「UFO」見立て殺人」:飛行機の中で起きた事件
 「「さよならをするために」見立て殺人」:妻が失踪して4日たち捜索願を出した夫
感想
依頼人が探偵社を訪れ、探偵社の3人が事件に関わる。すると登場する間暮警部。そして70年代の名曲をしっかり歌いきり、おもむろに一言、「これは見立て殺人です」とくる。そのパターンばかりなのですが、これが面白いのです。飽きません。間暮警部の言動はハチャメチャで、そもそも見立てと考えること自体が無茶。発言は名誉毀損だらけ。そのマイペースぶりが良いのです。さらに、語り手である探偵社の小林少年(と呼ぶのは間暮警部だけですが)の心の呟きが絶妙。タイミングと云い、冷めた感じと云い、嫉妬心と云い、完璧です。リズムの良さも生み出して、事件そのものよりも、彼らの漫才めいた会話を楽しめる作品です。登場人物の名前も過去の名作にリンクしていたりしていて、原作を考えるのもまた一興。この作品、是非テレビドラマ化して欲しいと思います。
↑リストへ   感想へ戻る



ミステリアス学園
ストーリィ
ミステリアス学園ミステリ研究会、通称ミスミス研。同人誌『ミステリアス学園』に綴られた事件のあらましは、創作なのか、それとも真実? マトリョーシカ人形の様に入り組んだ現実と創作は、前代未聞の結末へと繋がっていきます。
感想
本格ファン必読の一冊。この結末は、読者を満足させられるか疑問です。しかし、色々な講義や分類,評論は、ミステリィファンなら誰しも興味を持つことでしょう。メタミステリィであり、本格ミステリィであり、密室あり、アリバイあり、ダイイングメッセージあり、などなどなど。これ一冊で、一体どれほどの分野・トリックを網羅しているか、想像も付きません。
↑リストへ   感想へ戻る



タイムスリップ明治維新
ストーリィ
『タイムスリップ森鴎外』に続く、シリーズ第2弾。自分の世界に帰って行った森鴎外。少し歴史が変わってしまったけれど、これまで通りに日々生活をしていた麓うらら。ある日のこと、お風呂に入っていたうららを、友人の七海(?)が襲ってきた。そ〜ゆ〜趣味はないって〜! ふと気付けばココはどこ? 幕末です。素っ裸だったうららは、桂小五郎に助けられ、幕末を生きることとなったのです。無事に帰れるのでしょうか…。
感想
やっぱりこのシリーズは面白いです! 名作『邪馬台国はどこですか』の印象が非常に強い鯨氏ですが、現在ではそれに劣らない作品が多くの作家さんにより生み出され、巷に溢れています。そのまま黙っていられないのが鯨氏なのでしょうか? ちょっと趣向を変えたタイムスリップシリーズは、雰囲気が他の作品とは大きく違います。主人公のうららは軽いけれど、作品の中身は軽くない、そして楽しい。駆け足で過ぎた明治維新でしたが、或る意味新鮮に感じます。最近のミステリィ界の傾向として、とにかく詳しく詳しく、取材したことは細かいトコまで緻密に書く。そんな傾向が強く出て、懲りすぎている印象を受けます。それは必ずしも悪いことではありませんが、本作の様に、多くはないページ数で世界を表現する大切なだと思います。
↑リストへ   感想へ戻る



みなとみらいで捕まえて
ストーリィ
神奈川県警に出向してきた犯人警部…じゃなかった、半任警部。パートナーの女性刑事・南登野洋子と二人、事件を解決したいのですが、困った時は名探偵に相談しましょう。え? 名探偵じゃなくて酩淡亭? まぁ、どちらでも良いじゃないの。
感想
横浜はみなとみらいを舞台にした連作短編集です。名所が次々に登場するシーンは、ストーリィ的には必ずしも必要がなかったり、ちょっと強引だったり。でも、そこが良い味を出しています。登場人物の名前もとても凝っていて、作品の雰囲気作りに貢献しています。最後はちょっと強引な印象を受けましたが、それでも楽しく読み切れる一冊です。
↑リストへ   感想へ戻る



マグレと都市伝説
ストーリィ
何でもない事件を「見立てだ!」と騒ぎ立てるマグレシリーズ第2弾。

「マグレと郷ひろみと高速で走る老女」:仲の良い夫婦の実態は?
「マグレと太田裕美と白い糸」:列車から消えた女性が死体となって発見された
「マグレと高田みづえと死体洗いのバイト」:いる筈のない友人を発見して心配だ
「マグレと渡辺真知子と人面犬」:教師の結婚問題がバタバタと
「マグレと小泉今日子と膝が痛い」:神秘性を売りに人気が出た声優
「マグレと近藤真彦と口裂け女」:ボクシング部と相撲部の恋の戦い
「マグレと中森明菜とディズニーランド」:新進女流作家に会うことになったのだが…
感想
気楽に物語を読める人、ちょっと変わった設定を求めている人、細かいことは気にしない人、昔の歌を懐かしいと思える人、ミステリィなら何でもOKな人。あてはまるところが一つでもあれば手に取ってみてはいかがでしょう? 重厚さや緻密さを求める人には向きません。事件が起きれば、無理矢理「見立てだ!」と叫びながら登場し、曲を歌い、去っていく警部。毎回同じパターンで、毎回相当無理があります。それを拘らずに読み進めると、この作品の面白さが実感できます。んなバカな! と毎回ツッコミを入れたくなる楽しさがそこに待っています。
↑リストへ   感想へ戻る



すべての美人は名探偵である
ストーリィ
 
感想
 
↑リストへ   感想へ戻る