黒川博行


<大阪府警捜査一課シリーズ>
雨に殺せば (創元推理文庫)
八号古墳に消えて (創元推理文庫)
海の稜線 (創元推理文庫)
ドアの向こうに (創元推理文庫)
絵が殺した (創元推理文庫)

<ノンシリーズ>
切断 (創元推理文庫)
左手首 (新潮文庫)

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雨に殺せば
ストーリィ
黒木・亀田両刑事が活躍する黒マメコンビシリーズ。現金輸送車が襲撃され、1億円が強奪。捜査にあたる黒マメだが、関係者・容疑者が次々と死を。自殺? 他殺? マメちゃんが大活躍します。
感想
ちょっと展開が平坦な感じはします。事件は色々起こりますが、ドキドキ感がやや乏しい。黒マメコンビは相変わらず舌好調。特にマメちゃんの活躍ぶりはすごいですね。どっちが主役? ってな感じです。ストーリィは黒さんの視点ですが、完全に今回はワトソンです。
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八号古墳に消えて
ストーリィ
黒マメコンビシリーズ。遺跡の発掘現場で発見された教授の死体。土砂に埋もれていたため、事故か他殺かも不明瞭。考古学のロマンと共に存在する泥臭さ、権力争い。やがて新たな事件が発生。黒マメはやっぱり単独行動です。
感想
コンビなのに、二人の比重が結構違います。マメさんが常に存在感をアピールし続けているのに対し、黒さんは(メインキャラクタにしては)存在感が薄い。もうちょっと個性を持たせたり、エピソードを加えた方が良いのではないか…と思うのですが、そうすると作品の雰囲気を損なってしまうのでしょうか。黒とマメのキャラが衝突しちゃって共倒れになるのかな? シリーズ3作目ですが、どんどんマメさん一人が活躍する様になってます。
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海の稜線
ストーリィ
大阪府警捜査一課の「総長とブン」、そして東京から来た若手キャリアの荻原が事件に挑みます。走行中の車が爆発、連続する事件の背景を探りますが、ブンと荻原はどうにも肌が合わない。ことある毎に相手の揚げ足をとり合う二人に、総長もあきれ顔。こんなことで真相に迫れるのでしょうか。
感想
関西弁で埋め尽くされた作品。黒マメシリーズと殆ど同じ展開、同じ雰囲気の作品です。総長が黒さん、ブンがマメさんって感じ。どうして別シリーズで書く必要があったのか、とても不思議でした。最後のシーンを書きたかったが為ならば、もう少し関連イヴェントがあっても良かったのではないかと思います。もう少し主要人物の描写があると別シリーズとして、認識しやすいかも。
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ドアの向こうに
ストーリィ
総長とブン、そして若手の五十嵐が事件に挑みます。バラバラとなって発見された死体。脚部はミイラ化した状態で、頭部は完全に腐敗した状態でそれぞれ発見されます。続いて起こる心中事件。自殺か、それとも他殺か。ブンと五十嵐は適度に衝突しながら調査を進めていきます。
感想
例によって関西の色が強く出た作品。大阪のブンと、京都の五十嵐。二人のやりとりが終始作品を賑やかな物としています。ただ、黒川作品全般に云えることですが、主人公が少々弱い感じ、展開は堅実。良くも悪くもいつものパターンと云う感じでしょうか。一番問題なのは、オリエント急行のネタを不必要に割っていること。皆読んでいるだろう、と云う考えで名作のネタを割るのはやめて頂きたいです。
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絵が殺した
ストーリィ
大阪府警捜査一課、吉永誠一刑事の活躍。竹の子が押し上げた一つの髑髏。完全に白骨化したいだったが、比較的早期に身元が割れる。被害者は売れない日本画家。その交友関係を調べる捜査一課の面々。調査により徐々に明らかになったのは、絵画の贋作事件であった。
感想
例によって主役は地味です。そして例によって関西弁。そのテンポは好調です。大阪府警と云う一つの組織。皆が皆、同じ口調で話すものでしょうか。そこが疑問です。会話のテンポは抜群。でも、主役が変わったら、違うテンポになるのでは? 人物の風貌に関する記述も少ないため、誰が行動していても同じ様子。一人称が時々ややこしいのも気になりました。単純に会話を楽しむべき作品かも知れません。
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切断
ストーリィ
耳を削がれた死体が発見される。しかも、切り取られた耳の代わりに、他人の指が詰め込まれていた。猟奇性を帯びた事件は、その後も連続して発生される。何故、身体の一部は切り取られたのか。何故、他人の身体の一部が詰め込まれていたのか。
感想
連続殺人が、身体の一部をリンクさせることによって巧く繋がっています。全体的なバランスがとても良く、非常に読みやすい。事件の異常性と正常性。相反する二つの要素が絡み合い、収束へと向かっていく。事件背景もしっかり描かれていて、満足度は抜群です。
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左手首
ストーリィ
なにわのヤクザ者が関わった7つの犯罪。すんなり行かない犯罪、望まぬ犯罪が、彼らを誘っているかのようです。

「内会」、「徒花」、「左手首」、「淡雪」、「帳尻」、「解体」、「冬桜」
感想
ハードボイルドっぽい雰囲気の短編集ですが、どれも終わり方が私の好みから外れていきます。「え? これで終わっちゃうの?」とか、「これまでは一体なんだったの?」と云う感じ。純粋にハードボイルドに徹することもできず、登場する人間が小さく見えるのです。そう見せているのかもしれませんが、「面白い/つまらない」と云う以前に、肌に合わない作品でした。
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