宮部みゆき


<ノンシリーズ>
ぼんくら (講談社文庫)
模倣犯 (新潮文庫)
ブレイブ・ストーリー (角川文庫)
あかんべえ (新潮文庫)

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ぼんくら
ストーリィ
江戸の長屋で次々と発生する事件。殺し屋が出た,博打の型に娘が取られる,迷子の子供,色事の尽きない女,などなど。差配人は若造に変わってしまい、長屋を出て行く家族が続出。同心・平四郎も調査を進めるが…。長屋で暮らす人々や、この時代を過ごしている人々が作品のなかで生きています。
感想
次々と発生する事件は短編の様な感じで、個々に完結しています。「連作短編集?」かと思ったら、一つの長編が始まりました。ちょっと変わった、面白い構成です。著者の作風の広さは流石。人物に特徴があり、確実に生きているのを感じます。時代小説ではありますが、どんどんミステリィの謎解きに近い雰囲気になっていきます。
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模倣犯
ストーリィ
公園のゴミ箱で発見された女性の片腕とハンドバッグ。マスコミに届いた情報は、片腕の持ち主と、ハンドバッグの持ち主は違う、とのこと。毎年数え切れないほど発生する失踪事件の関係者は、自分の娘が被害にあったのではないかと怯える不安な日々を過ごす。発見者の少年、失踪事件を追うルポライタ、事件解決に向け地道な捜査を続ける警察。やがて第2、第3の事件が発生する。
感想
作品の中に社会全体を作り上げてしまった大作です。特定の「主人公」と云う存在はありません。読者が「この人」と思った人物こそが主人公。読者一人一人、違う主人公が存在することでしょう。表現はとても繊細で、リアリティに満ち溢れています。犯人から生放送のテレビ局にかかってきた電話。ボイスチェンジャを通してお茶の間に届く犯人の肉声。ところがそこで定刻通りにCM放送が割り込んできます。そのもどかしさと苛立ちは、まさしく現実世界で感じる物と同じ。ただ、リアリティに満ちているからこそ、この作品は小説としての存在意義に疑問を感じてしまいます。ノンフィクション作品を読めば良いのではないか、と。写実的な絵画に一瞬の魅力を感じても、それなら写真で良いのでは、と疑問を抱くのに似ています。素晴らしい作品であることは間違いありませんが、だからこそ面白味に欠けた面もあったのではないでしょうか。
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ブレイブ・ストーリー
ストーリィ
建設途中のビルに、出るらしい。そんな噂を聞いた三谷亘は、友人のカッちゃんと共に深夜のビルに忍び込む。幽霊は出なかったが、その後もビルを訪れる亘。そんな何気ない小学5年生としての日々は、両親の離婚を切っ掛けとして一気に失われた。転入生の美鶴の存在が、亘を幻界(ヴィション)へと導いた。
感想
ゲームのRPGそのもの。その印象が全てです。感動的なシーンも沢山ありますが、ゲームの中の様な印象が、「何とかなるだろう」と感じさせるのが微妙です。ゲームとしてのRPGは結構好きなのですが、小説だったら違った形でドキドキを感じたい。この作品自体は確かに面白いと思いますが、小説として読む必要性をあまり感じませんでした。逆に、映像や音楽との相性が良さそうなので、映画は楽しそうだと思います。
お気に入りの一文
「信じて待ってて」
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あかんべえ
ストーリィ
恩人である七兵衛の夢でもあった料理屋を開くことになった太一郎夫妻。娘のおりんと共に深川で新しい一歩を踏み出そうとしたのだが、おりんを襲った病魔。生死の境から何とか舞い戻ったおりんだが、亡者の姿を身近に感じられる様になっていた。料理屋は上手く行くのであろうか。不安と期待が入り交じる中、最初のお客をもてなす機会が訪れた。
感想
時代小説です。ホラーです。でも、それを良い意味で感じさせません。時代小説が苦手な人でも、ホラーが苦手な人でも、きっとこの作品ならすんなり読めることでしょう。人物に対する愛情の注ぎ方は、やはり宮部作品です。この雰囲気は独特のものですね。暖かく、柔らかく、包み込んでくれる様な世界が読者を待っています。
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