森博嗣




今夜はパラシュート博物館へ
ストーリィ
S&Mシリーズ、Vシリーズも含んだ短編集です。二つのシリーズが絡み合い、面白さを際立てます。

 「どちらかが魔女」:ストーカー(?)の謎に挑む萌絵たち
 「双頭の鷲の旗の下に」:ガラスに打ち込まれたのは散弾銃なのか?
 「ぶるぶる人形にうってつけの夜」:ぶるぶる人形を疑う美少女と練無
 「ゲームの国」:名探偵磯莉がちょっと変わった島で事件に挑む
 「私の崖はこの夏のアウトライン」:崖が持つ恐ろしさと、そこで起きた事件
 「卒業文集」:生徒たちが卒業文集に書いたのは森村満智子先生との想い出
 「恋之坂ナイトグライド」:巡り会った短い時間を楽しむ二人
 「素敵な模型屋さん」:模型好きな少年の視点で見える世界が伝える物
感想
S&MもVシリーズも、どちらも読めてしまうお得な作品。「どちらかが魔女」では作品の謎よりも油絵の釘が印象的です。例によって答えは書いてありませんけど…。「双頭の鷲の旗の下に」は人物を勘違いしてしまいびっくり。これは狙って書かれているのではないでしょうか。子供と大人の視点も面白いところです。「ぶるぶる人形にうってつけの夜」は分かりやすいストーリィですが、設定に妙ありです。「卒業文集」はひたすら生徒の作文が続きます。先生とは何か。教える立場のあり方についても考えさせられます。「素敵な模型屋さん」は立場の違いや考え方の違いなどで見え方が違うこと、徐々に忘れてしまう大切なことを教えてくれるエッセイ風の作品。考え方は作者の日記に近い物があります。
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虚空の逆マトリクス
ストーリィ
S&Mシリーズを含んだ短編集です。

 「トロイの木馬」:近未来の世界でおこるコンピュータウィルス事件
 「赤いドレスのメアリィ」:赤い薔薇のイメェジがぴったりの女性
 「不良探偵」:従兄弟のシンちゃんを作品の中で名探偵にした
 「話好きのタクシードライバ」:延々と話し続ける鬱陶しいタクシードライバ
 「ゲームの国(リリおばさんの事件簿1)」:回文を巧みに操るリリおばさんたち
 「探偵の孤影」:姉を探して欲しいと言うもののそれ以上の情報をあかさない
 「いつ入れ替わった?」:萌絵邸に集まる犀川・喜多先生と近藤刑事
感想
最も印象的なのは「ゲームの国(リリおばさんの事件簿1)」。アガサ・クリスティの名作を意識しているのでしょうか? この作品、とにかく回文が山の様に出てきます。長いものもあれば、短いけれどキレのあるもの、などなどなど。ストーリィそっちのけで魅入ってしまいます。「いつ入れ替わった?」はS&Mシリーズ。懐かしい気持ちが体中に伝わりますが、ミステリィとしてのインパクトは低い印象です。トリックもしっかりとした作品なのですが、それ以上に人間関係が気になってしまったせいですね。
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ウェブ日記レプリカの使途
ストーリィ
絶大な人気を誇った森博嗣の浮遊工作室でのウェブ日記。その内2000年にアップされたものをまとめた作品。シリーズの4冊目です。
感想
地元ならでは、見知ったところが山ほど登場します。そろそろ目新しさは薄れてきますが、「見せる日記」になっているあたりは流石。ゴシックにするタイミングが良いので、それだけ目で追っても何となく内容が分かります。9月の日記に、入院した時見舞いに来て欲しい人、欲しくない人という話題があり、ナカナカ興味深い。他にも当たり前だけど普段それと気付いていないこと、当たり前じゃないことに気付いていないことが沢山出てきて面白い。物事を見る角度が変わります。
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数奇にして有限の良い結末
ストーリィ
2001年、最後を迎える森博嗣のウェブ日記。最後の一年を、これまでと同じように最後まで綴った作品。シリーズの5冊目です。
感想
以前も云ったことだけど、という内容が多い様です。しかし、人は忘れる生き物。「あ〜、そんなお話もあったな」と、ある意味、新鮮にそれを感じることが出来ます。また、森氏の発言や考えが変わらず、一貫していることにも気付きます。ちょっと天の邪鬼なところがあるかもしれませんが、どんな発言にも一理ある様に思えます。読者が自分自身の考えや固定観念について見つめ直す切っ掛けも与えてくれるでしょう。
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工学部・水柿助教授の日常
ストーリィ
水柿小次郎は、建築材料額を専攻する工学部の助教授。ミステリィ好きの奥さんと、不思議な距離感で仲良くしています。彼の周囲で起こる、些細な謎。よくよく考えて、結末が分かってしまえばなんでもない。そんな謎がいっぱいです
感想
著者が自分をモデルにしたフィクションかと思ったら、モロに著者そのものでした。あれまぁ。でも、本人の名前を出さないところが、また面白い。誰が読んでも、水柿助教授=著者と分かるでしょう。が、そうはっきりさせないところが、フィクションとノンフィクションの中間地点に読者を連れて行ってくれます。古い日記を紐解いた、そんな感じの作品です。
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堕ちていく僕たち
ストーリィ
賞味期限ギリギリのラーメン。ふと見付けたそのラーメン。食べたら性別が変わってしまった。どたばたの5編を収録。

 「堕ちていく僕たち」:ラーメンを食べて女になってしまった大学生2人
 「舞い上がる僕たち」:即売会に向けマンガを描いていた2人の女性も…
 「どうしようもない私たち」:社長や部長や同窓生と仲良く過ごす女性も…
 「どうしたの、君たち」:性別の変わった大学生をレンズで追う女性
 「そこはかとなく怪しい人たち」:ピークを過ぎたバンドを追いかける女性も…
感想
ラーメン、それも鍋でコトコト煮て作る、あのラーメン。それをアイテムにするところが面白い。どこにでも転がっていて、誰でも一度ならず、何の気なしに食べるラーメンです。それを切っ掛けとしてとんでもない事態が発生すると云う設定、上手い! 作品の雰囲気は、S&MやVシリーズとは大きく異なります。遊び心と云うか、素のままの森博嗣、と云う感じです。
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スカイ・クロラ
ストーリィ
新しい部隊に配属された僕は、戦闘機のパイロット。冷静な女上司、遊びに連れて行ってくれるパートナー、殆ど口も聞かない寡黙な男、などなど。そんな人間関係の中で、僕は今日も戦闘機で仕事をこなす。黙々と。
感想
どこか平坦で淡泊なお話です。その雰囲気が結構面白い。また、それに反して、展開はコロコロ変わっています。ところがそれを感じない。いつもと同じ。そんな感じがするのです。それは終盤への伏線なのでしょうが、そのまま最後まで平坦な作品であって欲しかった、と思う私は変わっているのでしょうか?
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ナ・バ・テア
ストーリィ
僕はココのナンバー2。ティーチャには勝てないけれど、別に構わない。ティーチャは特別だから。人付き合いなんて、必要以上にする気もない。また戦闘が始まる。そこで墜ちれば、それまで。僕はただ、ずっと飛んでいたいだけなんだ。
感想
スカイ・クロラ同様に、淡々と進むストーリィ。まるで挿絵の様な感じの作品です。主人公の感情が乏しいため、そうした印象を受けるのでしょう。でも徐々に感情の表現が細かくなっていきます。だからせっかく神秘的だったのに、人間らしくなっちゃうんですね。やがて訪れる結末。完全に人間的です。最初の雰囲気のままずっと行ってくれれば…って、スカイ・クロラの時と同じ感想書いてますね…。
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アイソパラメトリック
ストーリィ
作家である森博嗣氏が撮った写真。それに付帯したショートショート。神秘の国へ、読者を誘います。
感想
写真は大学構内の物が多い様な気がしますがどうでしょう? 「あ、あそこの写真だ!」と思った方も多いのではないでしょうか。ショートショートはとてもむつかしいジャンルだと思います。主張すべきコトを丁寧に書く余裕はありません。しかも物語でなければなりません。森氏のショートショートはその両者がしっかりと棲んでいるから好きです。特に理系的な物事の考え方は、ニヤリとしてしまうのですが、著者は別に理系的とは思っていないのでしょうね。
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悪戯王子と猫の物語
ストーリィ
ささきすばる氏の絵に森氏が文章を付けた夫婦の合作。透明感と自己主張の強い色とを共存させたすばる氏の絵。唐突に不思議な世界を提供する森氏の文章と手を繋ぎます。
感想
森氏、すばる氏、それぞれの個性を保ちつつ、1つの作品として融合しています。ただ、森氏のこういう文章、私はあまり馴染めません。世界観が合わない感じがします。面白いと感じる作品もあります。ただ、1冊を通してみると、どうも宙ぶらりんに感じてしまいます。私の位置とは少々距離があるようです。
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ZOKU
ストーリィ
Zionist Organization of Karma Underground。略してZOKU。悪戯を目的とした非営利団体です。これにたいする科学技術禁欲研究会TAI。両者の争いは続く。
感想
文庫本のカバーには「長編小説」と明記されていますが、それはちょっと違う様な気がします。これは、たとえば、Webサイトでちょっと思いついたストーリィをアップした様な感じを受けます。ストーリィ性が乏しいため、ちょっと苦手な世界です。
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