野沢尚
<ノンシリーズ> |
深紅 (講談社文庫) 砦なき者 (講談社文庫) 龍時01-02 (文春文庫) 反乱のボヤージュ (集英社文庫) 魔笛 (講談社文庫) |
§ 感想へ戻る § |
深紅 |
ストーリィ
小学生で家族を皆殺しにされた被害者の少女、奏子。その加害者を父に持った少女、未歩。それぞれが心に深い傷を負いながら別々の道を歩み成長します。加害者の死刑確定を切っ掛けにして、その娘の未歩の存在を知る奏子。二人が出会ったことによって、何が変わり、何が生まれ、そして何が起きるのか。
|
感想
4時間。これがキーワード。ちょっとした趣向を凝らした作品です。何気なく読んでいたら「ををっ」と思いました。展開に合わせたものであり、面白く読むことが出来ました。事件により多くの人が苦しみ、そしてそれを引きずっています。皆、それぞれの(異なる)処世術を身に付けて生きている、その辺りの描写も悪くないでしょう。もう少し簡潔な作品であっても良かったかな、とも思います。
|
↑リストへ 感想へ戻る |
砦なき者 |
ストーリィ
人気報道番組『ナイト・トゥ・テン』の現場ディレクタ、赤松。彼が受け取った電話は「これから殺される」と云うショッキングなものでした。番組と共に時を重ねる赤松と、その同僚たち。強大きな力を持つメディアに飲み込まれまいと、必至に頑張る赤松。しかしメディアは悪魔を生もうとしていたのです。
|
感想
報道番組、私の苦手な物の一つです。そんな世界で生きる人たちを描いた作品。マスコミというメディアに踊らされ、利用し、反発し。テーマ的にどうしても不快な気持ちで読んでしまったためか、作品の印象もイマイチです。特に3章〜4章が、どんどんイヤな展開に。作品としてよりも、現実的に受け付けないシチュエーションだったのです。1章〜2章は結構面白かったんですけどね。特に2章は好きです。
|
↑リストへ 感想へ戻る |
龍時01-02 |
ストーリィ
日本の組織的で守備的なサッカーと相性が悪い志野リュウジ。スペインU-17との親善試合で実力をアピールした彼は、オファーを受け、独りスペインへと旅立ちます。しかしスペインでも思う様なプレーが出来ず、周りとも上手くやっていけない。限られた時間の中で、リュウジは結果を残すことが出来るのだろうか。
|
感想
とても本格的なサッカー小説です。これは相当珍しい。実在する選手の名前も、沢山登場し、サッカーファンならそれだけで魅入られることでしょう。志野リュウジは、どこか屈折した部分を持つ少年。ストーリィ的にはありきたりですが、そう思わせない心理描写と、リアリティが、この作品にはあります。
|
↑リストへ 感想へ戻る |
反乱のボヤージュ |
ストーリィ
首都大学の学生寮である弦巻寮。寮存続を訴える寮生と、廃寮キャンペーンを行う大学。この対立に変化をもたらしたのがアメリカCNNの取材。マスコミに弱い大学は、舎監を置くことを条件に寮の存続を表面的に認めた。やって来た舎監は、50歳を越えているくせに、筋肉隆々の名倉さん。名倉さんは寮創設当時の入寮規則を持ち出して、寮生の締め付けを開始した。が、単に追い出しを目的としているにしては、釈然としない行動も…。
|
感想
大学での自治。と云えば格好良いですが、中身は色々。単に大学と対立したいだけ、生活のため、などなど。彼らと名倉さんの関係は、お互いにちょっと目障りで、でも足りないところを補填しあえる感じ。学生の甘さと名倉さんの厳しさが、バランスを取っています。6章に別れた作品ですが、一番好きなのは4章。主人公の坂下薫平の行動が、とても人間らしく感じられます。ただ、全体的に、特に後半は綺麗事が過ぎる感じも受けました。
|
↑リストへ 感想へ戻る |
魔笛 |
ストーリィ
新興宗教の教祖に死刑判決が降りたその瞬間、渋谷スクランブル交差点で悲劇は起きた。爆弾テロ。その犯人は、公安が教団の動向を探るために潜入させた、一人の女性だった。獄中に妻を持つ鳴尾刑事は、妻の助けを借りつつ、犯人に迫っていく。それは同時に、危険への接近でもあった。
|
感想
よく考えられた事件です。一見無意味に思えた事件にも、大きな意味があります。用意周到。完成度の高い作品です。視点は実行犯の女性と、鳴尾刑事の2つがメイン。その区別が若干分かりづらい箇所がありました。一人称、特に「私」と云う表現は、男女の区別も不可能なため迷いやすいものです。視点が細かく変わり過ぎているのかもしれません。
|
↑リストへ 感想へ戻る |