小川洋子
<ノンシリーズ> |
博士の愛した数式 (新潮文庫) |
§ 感想へ戻る § |
博士の愛した数式 |
ストーリィ
私は家政婦。一人息子と二人で暮らしています。ある日を境に、私はあるお宅へ通うことになりました。博士は事故が元で記憶が80分しか持ちません。私が博士のところに通っていても、翌日には私のことを忘れてしまう。だから博士は体中にメモを留めています。私のことは「新しい家政婦さん」、私の息子のことは「ルート」。頭のてっぺんから足の爪先まで数学者であり続ける博士と私たちの物語です。
|
感想
もう、とにかく魅力的な博士。記憶が持続しないことが、博士自身にも、周囲にも、それはそれは切なくて、でも切ないのに不幸だとは思えない。その時々、新しく塗り替えられた記憶だけれど、今その時と、身体に留められたメモを頼りにコミュニケーションをとっています。何よりも博士を好きになれるのが、ルートに対する接し方。他の何とも異なるのです。博士が数学だけを考えている堅物ではなく、本当に、心の底から優しい人物であることを伝えてくれます。多くの数学的要素も出てきますが、別に知らなくても構いません。全然問題ありません。是非是非、色んな方に読んで欲しい一冊です。小さな表現のあちこちが、必ず感動を運んでくれますよ。
|
↑リストへ 感想へ戻る |