岡嶋二人




開けっぱなしの密室
ストーリィ
本格ですが、オチがついていたり、「どっちもどっち」みたいな笑える短編作品集。

 「罠の中の七面鳥」:使い込みをした男と、昼夜の顔を使い分ける女の陰謀合戦
 「サイドシートに赤いリボン」:轢き逃げをした男が自殺
 「危険がレモンパイ」:レモンパイを塗りたくられて屋上から墜落?!
 「がんじがらめ」:保険金を狙い自殺を他殺に見せようとする男
 「火をつけて、気をつけて」:放火犯を利用した犯罪を企みます
 「開けっぱなしの密室」:大家迎撃作戦のはずが…
感想
いわゆるユーモアミステリィ。軽い雰囲気の作品ですが、どれもしっかりとした本格だと思います。トリック、構成とも非常にしっかりとしていて、読み応えも十分。「罠の中の七面鳥」が一番面白く読めました。笑えるというか…「どっちもがんばれよ〜」ってな気分です。「がんじがらめ」は結論が読めてしまいますが、それでも面白い。他の作品もそうですが展開的に魅力溢れているため、先が読めても面白さには影響しないのです。
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チョコレートゲーム
ストーリィ
引き籠もり。非行。イジメ。妻に告げられるまで、息子の異常に気づかなかった一人の小説家。原因を探ろうと語りかけるが、子供との距離を痛感させられただけ。学校で殺人事件が発生。息子と事件との関係は。不安になった父親は行動を開始するが、そこで耳にした言葉は…チョコレートゲーム。
感想
第39回、日本推理作家協会賞を受賞した作品。確かに面白いです。最初から最後まで、目を離すことが出来ない展開。息子が変わってしまった原因は? チョコレートゲームとは? それらの疑問がさらくに読み手を作品に引き込みます。そして一番のポイント。それは伏線です。最初から、多くの情報が提示されていたんですね。答えは最初から見えていた。でもそれに気付かない。ちょうど父親が息子のことを見ていながら、見えていなかった様に。
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ちょっと探偵してみませんか
ストーリィ
推理パズル作品です。25のパズル、種類も多岐に渡っています.。
感想
懐かしの推理パズル。一時期結構流行しましたね。どれもそれなりに面白いのですが、どうしても物足りなさは否めません。これがパズルでなく長編だったら…と考えてしまいます。それでもパズル作品だからこそって云う作品もありました。「煙の出てきた日」がそれ。解決を見た瞬間に笑いました。こういうのは、長編に出来ませんね。解説は新保博久で、なかなか面白いです。
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記録された殺人
ストーリィ
短編集です。

 「記録された殺人」:殺人現場の公園を写していたカメラが存在
 「バッド・チューニング」:プロダクションの仕事はとっても大変
 「遅れてきた年賀状」:正月をかなり過ぎてから届いた今年の年賀状
 「迷い道」:道に迷った二人の前に現れたのは…
 「密室の抜け穴」:警備員が遭遇した密室事件
 「アウト・フォーカス」:会社のカメラが何の関係もない殺人現場から発見
感想
すっきりとした短編集で、とても読みやすいです。中でも面白いのは「遅れてきた年賀状」。訳も分からず事件に巻き込まれてしまった会社員。勿論題名にあるとおり、年賀状の遅れと事件は関係しています。それがとても分かりやすい、簡単な理由なのです。オーソドックスすぎる展開の作品も、意外な展開の作品も収録されていて、ミステリィ初心者にもお勧めです。
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ツァラトゥストラの翼
ストーリィ
盗まれた宝石「ツァラトゥストラの翼」を見付けるゲーム・ブックです。犯人は誰なのか。密室も登場する本格仕立てです。
感想
懐かしのゲーム・ブック。先の展開が毎回違う、そのドキドキ感が最大の魅力。頭を使い、記憶力も必要です。何をするとフラグがたつのか…って。その一方で、何度も同じシーンを読み直さなければならなかったりして大変です。特にこの作品においては低からぬ敷居が存在するため、いつまでたっても読了不能な人も出てくることでしょう。これを是とするか非とするか。抜け道は必要だと思いますけどね。
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そして扉が閉ざされた
ストーリィ
目が覚めたら、そこは見たこともない部屋。しかも密室です。一緒に閉じこめられているのは3人の友人。彼らは一人の人間で繋がる仲でした。何故彼らは閉じこめられたのか。脱出を試みつつ、三ヶ月前の事故の真相について討論する4人。無事に脱出できるのか? 事故の真相とは?
感想
いきなり訳も分からぬ状況。こういう設定は読み手を引き込む力がとても強い。気付いたら作品にどっぷり浸かっていました。閉じこめられてしまったことによる異常な精神状態。その一方で少しずつ明らかになる事故の様子と個人の行動。両者がお互いを邪魔することなく、上手く絡み合っています。フーダニットの傑作と云えるでしょう。
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どんなに上手に隠れても
ストーリィ
テレビ局からアイドルが誘拐! 要求された身代金は1億円。警察、芸能プロダクション、CMのスポンサそれぞれの思惑が入り乱れる中、受け渡しが行われます。
感想
トリックは簡単…と思っていたら見事にやられました。作者の掌で転がされた気分です(ごろごろ) 身代金誘拐は受け渡し方法をどうするか、そこが焦点です。でもこの作品はそれだけではありません。犯人たちは相当なものですね。実に綿密な計画、これって実際にやられたら警察も騙されちゃったりしないかと不安になるくらい。でもマスコミ関係が出てくる話はやっぱりちょっと苦手です。
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タイトルマッチ
ストーリィ
元世界チャンピオンの息子が誘拐! 犯人からの要求は彼の義理の弟に、「二日後のタイトルマッチをKOで勝て」と云う奇怪なものだった。犯人は何を目論んでいるのか。様々なトラブルに見舞われながら、ゴングはならされます。
感想
意外な要求です。普通この手のパターンは「○ラウンドで負けろ」。八百長試合ですね。その逆をついてくるあたりが岡嶋二人。少し出来過ぎかと思う部分もありますが、意外な要求を最後まで持たせ、一つの作品としたところに拍手。誤魔化しのない一本道です。
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なんでも屋大蔵でございます
ストーリィ
曲がったことでなければ、何でも引き受けます。なんでも屋、釘丸大蔵。自分のことを「あたし」と呼ぶ便利屋が遭遇した数々の事件です。

 「浮気の合間に殺人を」:依頼人に渡された浮気調査書類が狙われる
 「白雪姫がさらわれた」:さらわれた猫はとんでもない場所にいた
 「パンク・ロックで阿波踊り」:記憶喪失に男がやってくる
 「尾行されて、殺されて」:なんでも屋を尾行していた男が殺され、現場から消失した
 「そんなに急いでどこへ行く」:どうしてなんでも屋が呼ばれたのか
感想
なんでも屋の語り口調がとても軽いので、どんな事件が起きても楽しく読むことが出来ます。謎解き風ではありますが、ポイントはそこではない気がします。例えば人間(?)消失を扱った「尾行されて、殺されて」。大きな謎です。本格物ならば、それを(少々)大袈裟にとりあげ、散々悩み、少しずつ糸を解していく。しかし本作は、比較的あっさりとその謎が受け入れられます。そして解明へ。その雰囲気が楽しいのです。結構、脳天気な大蔵さんでした。
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珊瑚色ラプソディ
ストーリィ
結婚式のため、シドニーから記憶した里見。しかし婚約者の彩子は、沖縄への旅行中、盲腸で入院していた。驚いて沖縄へ向かった里見だが、彩子は手術間直前の記憶を失っていた。周囲の話を聞くと、彩子は男と二人で旅行していたらしいことが判明。しかし彩子は友人の女性と沖縄へ来たと云う。真実は一体…。
感想
結婚式のはずが、盲腸で入院。しかも男と一緒?! 読み手を一気に作品へ引きずり込みます。典型的なサスペンスの展開で、その楽しさを存分に味わうことができる一冊です。隠された真実を知った時、何を思うでしょう。少なくとも私は許せませんね。
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解決まではあと6人
ストーリィ
異なる探偵事務所に次々以来を持ち込む女性。彼女の小指の付け根には大きなホクロが。彼女の依頼は情報が極めて少ないものの餅は餅屋。探偵たちは次々と情報を見付け、報告します。依頼の目的は何か。その背後に潜むものは。5W1Hの依頼が一本にまとまります。
感想
連作短編集の様な雰囲気の作品です。依頼の情報はほんとに少し。これでホントに情報なんて得られるの? 心配になってしまうくらいです。現実問題、こんなに上手く行くのかは別として、手掛かりを見付ける過程がスムースです。説得力もあり、作品のテンポも良し。終章のWHATは少々物足りず。もっともっと意外性に満ちた解決を…と求めてしまうのは読者の贅沢ってものでしょう。
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眠れぬ夜の殺人
ストーリィ
酔っぱらいに絡まれて、喧嘩と云う程でもなく。ただただ振り払っただけなのに。その酔っぱらいは死んでしまったのです。しかもその場面を誰かに見られたらしく脅迫を。どうやら同じ境遇の方もいらっしゃるようで。背後に潜むものを探るため、警察も捜査第0課を動員…0課?
感想
謎の0課が活躍します。一見、知能犯と思えた犯人も、0課にかかると丸裸。それに連れて作品の雰囲気も変わってきます。どんどんコメディ的になるのです。だからとても読みやすい。敢えて云うなら犯人を追いつめていく様は面白いの反面、終わり方に少々難があるかも。あっけないですね。被害者に関しては最終的にどうなったのか、言及されておらず消化不良。起承転結はあるんだけれども少し平坦な印象です。
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クリスマス・イヴ
ストーリィ
クリスマスを祝うため山荘に赴く喬二と敦子。友人たちと6人でパーティです。ところが彼らを待っていたのは無惨に殺された友人の姿。一体何が起きたというのか。戸惑う彼らの前に姿を現す殺人鬼。他の友人たちは無事なのか。殺人鬼は一体何者なのか。喬二と敦子は生きるために必至の行動をとり続けます。
感想
サスペンスと云うよりはホラーと云った方がしっくりきます。とにかくテンポのよい作品。一気に読み切れてしまいます。殺人鬼に襲われるその恐怖。展開の早さ。先が知りたくてページをめくる手が大変なくらいです。これ程一気読ませるのは流石です。期待したストーリィとは少し違いましたけど…。
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七日間の身代金
ストーリィ
弟を誘拐されたことを示すヴィデオが届いた。犯人は2000万円の身代金を要求。姉は犯人の要求に従って、とある島まで受け渡しに向かいます。が、そこに待ちうけていたのは「密室」でした。千秋、要之介のカップルと、千秋の父(警察署長)やその部下たちを翻弄する犯人とは。
感想
誘拐と密室を一度に取り上げた作品です。どちらも非常に難しい。特に誘拐はパズル的要素もそれほど高くないため、良作も多くありません。本作ではその辺をちょっとぼかした感じでしょうか。密室もコテコテではありませんし。どちらかというと、千秋、要之介カップのテンポある行動がポイントとなるでしょう。
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眠れぬ夜の報復
ストーリィ
16年前、家族を強盗に殺されたプロボウラ。事件が時効を迎えた後、彼は強盗に盗まれたボウリングのボールを発見します。警察が時効を理由に動かぬ今、自ら犯人を捜すしかありません。やがて或る企業を脅迫することに。警察も密かに0課を投入して事件の処理に当たります。岡嶋二人による合作最後の作品。
感想
0課は登場しますが、『眠れぬ夜の殺人』とは幾分異なる点があります。それは0課の占めるウェイト。0課に集中的なスポットが当たっている訳ではなく、前半はプロボウラ、中番は0課と共に一人の社員にと視点が変わります。0課のシリーズを書くために作られた作品ではない。この作品のこの設定に0課がマッチしている、だから登場させた。そんな印象を受けました。(全然違うかも知れないけど…) 0課が活躍する度合いは幾分少ないけれど、不満を感じることはありません。そのバランスの良さが、シリーズ物に必ずつきまとうマンネリと云うものを感じさせないのだと思います。
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ダブルダウン
ストーリィ
ボクシングの試合中、ボクサーが二人とも死亡。死因は青酸による中毒死。事件を調べる出版部の麻沙美と中江、そしてボクシング評論家の八田。3人はボクサーが如何に毒を盛られたか、動機は何か。地道な調査を続ける内、事件の背後に潜んでいた物が徐々に姿を現します。
感想
作品をテンポが非常に良いため飽きにくく、すらすらと読めました。青酸はどの様にしてボクサーに盛られた(ハウダニット)、何故試合中に殺害せねばならなかったのか(ホワイダニット)、そして犯人は誰なのか(フーダニット)。3つの基本となる謎が作品をバランスの良いものにしています。インパクトがもう少し強ければ、と思うのは贅沢かな。
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殺人者志願
ストーリィ
借金の肩代わりをしてくれるオジサンのため、人殺しを引き受けた菊池隆友と鳩子(ポッポ)のカップル。人殺し、と云ってもどこかマイペースな二人。ターゲットの女性を監視するため、隣の部屋へ引っ越します。行動を探る内に、どんどん周囲と仲良くなっていく二人。もちろんターゲットとも…。しかし殺人を引き受けてしまった今、後戻りはできません。
感想
天藤真を思わせる雰囲気の作品。とにかく二人の会話、テンポが軽快です。ツーといえばカーって感じです。そして、とっても根が良いので、殺人を引き受けたといえども、全く憎めない存在。殺人計画も、少しずつ進行していきますが、そこから展開が急を告げる。作品全体のスピード調整も抜群です。
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コンピュータの熱い罠
ストーリィ
結婚相談所に勤める夏村絵里子は、恋人・輝雄の名前が登録されていることに気付く。簡単なアンケートに答えただけという彼のデータは、何故か詳細なものだった。疑問に感じた絵里子は、同僚から、結婚相談所の存在に疑問を抱く。
感想
コンピュータ犯罪。現在ではすごく身近な物となり、且つ、とても進歩の速いもの。そう云った意味では、この作品も急速に色褪せてしまうかもしれません。が、問題なのはコンピュータ犯罪の手法ではありません。若干の違和感は覚えますが、ポイントは人。絵里子の心が揺れ動く様。自分はドコにいて、何をしているのかと困惑する様。そう云ったところにポイントを置けば、何年経ってもドキドキさせてくれる作品だと思います。
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殺人! ザ・東京ドーム
ストーリィ
偶然にも猛毒と矢を手に入れた男。彼は東京ドームでそれを使用します。己の存在を認めさせるために。便乗しようとする輩、毒を日本に持ち込んだ張本人とその周囲、事件を調べる警察。一つの猛毒は多くの人生を狂わせます。
感想
猛毒を入手した男、彼はとても純粋です。何だかこういう人は可哀想になってしまうのが常。己の行動に意義を感じている様が特に悲しい。東京ドームと云う舞台で犯行を重ねると云う特異性が、作品のテンポを非常に良い物にしています。加速しすぎて(?)最後はちょっとあっけない感じも残ります。もう少し「その後」に触れてあったら印象が変わったかも、と思ったり。
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99%の誘拐
ストーリィ
三億円事件で世の中が揺れたその年、幼稚園児の誘拐事件が発生した。要求された身代金は5000万円。電子産業の世界で頭角を現しつつあった幼児の父親は、会社を建て直すため掻き集めた資金をそれに充てる。犯人からの要求に従い身代金を手渡した結果、子供は無事に保護される。時は流れ、それから19年。時効をとうに過ぎた誘拐事件が、今、再び動き始める。
感想
最初の手記、兎に角すごい! 末期癌に冒された父親が、息子のために綴る事件の顛末。どれ程必至に働いてきたか、どれ程に大切なお金だったか、どれ程に息子のことを考えたか。それが切々と語られるのです。時は流れ誘拐された経験を持つ子供も大人に。そして再び起こる誘拐事件。作品の大半を占めるのはこの新しい誘拐事件なのですが、昔の誘拐事件の描写が素晴らしいから、一層「今」が映えるのでしょう。
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