奥田英朗
<ノンシリーズ> |
邪魔 (講談社文庫) マドンナ (講談社文庫) イン・ザ・プール (講談社文庫) |
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邪魔 |
ストーリィ
2002年このミスで2位になった作品。九野薫は7年前に事故で妻を亡くした警部補。通常の捜査以外にも同僚の素行を調査し、恨みを買うことに。学校へ行かず街をふらつく少年たち。放火の現場を見掛け、入院した会社員。パート先の待遇改善を求め運動に参加するその妻。暗躍するヤクザ。多くの人が何かを失いながら、何かにしがみつきながら、行き着く先にあるものは…。
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感想
とてもリアリティのある作品。人間の、本当にどうしようもない部分がこれでもかと出てきます。それがちょっと耐え難い。感情移入できるような人物がいません。唯一移入したくなる九野警部補ですが、行動が奇異でついていけなくなります。皆が皆で八方ふさがりの状況を、己で作り出しています。この作品こそ「最悪」って題名が似合う様に思います。少しで良いから救いが欲しいです。
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マドンナ |
ストーリィ
日々働くサラリーマン、その中間管理職にスポットを当てた作品群。
「マドンナ」:新たに異動してきた部下に心惹かれる 「ダンス」:息子の進学問題と、同期の協調性の無さに苦しむ 「総務は女房」:異動になった総務部で当たり前となっていた横領を見過ごせない 「ボス」:女性の部長の下で板挟みとなりストレスをためる 「パティオ」:人が集まらない店舗に人を集めるべく奔走するが… |
感想
私だったらストレスで胃に穴が開きそうな展開ばかり。でも、決して悲惨なばかりの話ではありません。世の中の中間管理職は、皆これくらい当たり前にこなしているんですね。「マドンナ」はドキドキ感を上手く最後まで繋げた作品。夫婦の会話がポイントです。「総務は女房」は正しい事ができないジレンマと、染みついてしまった固定観念の難しさを表現しています。「パティオ」は最も明るいお話。最後がこういう話だと、ホッとできます。
お気に入りの一文
「そう。わたしが氏素性を聴かれているとき、あなたは席を立った」
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イン・ザ・プール |
ストーリィ
妙に明るく、暑苦しく、マイペースな精神科医・伊良部一郎。彼の元を訪れた患者は幸か不幸か…。
「イン・ザ・プール」:泳ぎたくて仕方ない! 泳がないと不安だ! 「勃ちっ放し」:勃ちっぱなしになってしまい、日々の生活にも支障が… 「コンパニオン」:誰かの視線を感じる。ストーカー? 「フレンズ」:ケータイが手放せない。ケータイがないと不安だ。ケータイが… 「いてもたっても」:火の始末が気になる。火事になるんじゃないか。不安だ… |
感想
楽しい作品です。これでもホントに医者なの? 医者と云ったら、清潔感があって、キリッとして、患者のことを第一に考える存在。現実的にはその通りでないかもしれませんが、理想像としてはそういう感じだと思います。ところがこの精神科医は、まったくの逆。患者のことよりも、自分の嗜好を優先させ、インフォームドコンセントなんてどこへやら。色白のデブで、髪の毛からも不潔感が漂っている。それを不快と感じる時もあれば、好感を抱く時もあります。不思議。結果的に患者が救われている様なので、これまた不思議。でも、無理はないところがまた不思議。
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