恩田陸
<ノンシリーズ> |
MAZE [メイズ] (双葉文庫) 麦の海に沈む果実 (講談社文庫) ドミノ (角川文庫) ライオンハート (新潮文庫) 劫尽童女 (光文社文庫) 黒と茶の幻想 (講談社文庫) |
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MAZE [メイズ] |
ストーリィ
アジアの西の果て、丘の上には古代遺跡。内部は迷路で、周囲には遺跡を護るかの様に棘を持った植物が。遺跡に入った人たちは忽然とその姿を消してしまいます。否、消えないときもあるのです。消えない人もいるのです。いつ、何故、どのような人が、如何に消えるのか。今、4人の男たちが遺跡へと向かいます。
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感想
古代遺跡の作動する条件は何? どういうルール? 読んでいて思い浮かぶ作家の名前と云ったら西澤保彦をおいて他にはありません。勿論作家が違えば趣向も違う。果たしてどういう結末が、と思いましがた…成程。やっぱり人それぞれの結末ですね。陸らしい幕引きです。読み終えてみれば、いかにも恩田陸って感じもしました。それにしても作品の幅がホントに広いですね。
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麦の海に沈む果実 |
ストーリィ
理瀬が送り込まれたのは、外部と隔絶された学園。そこでは生徒がファミリィとして暮らしています。ファミリィの聖、黎二、同室の憂理、一日遅れで転入してきたヨハン、危険な魅力的の校長。彼らとの生活、学園が催す多くのイヴェント、そして事件が。そもそも理瀬は何者なのか、学園にあった一冊の本は何処に消えたのか。事件は何故起きるのか。
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感想
沢山の章に分かれた作品ですが、章の中でシーンがころころ変わります。移動シーンの描写は一切ありません。アドベンチャー・ゲームでストーリィを追っている様な感じで、作品の作り出す雰囲気に大きく影響しています。神秘的な、ファンタジー色に溢れた感じですね。章の終わり方は妙に意味深。連載小説だったためでしょうか。これが実に効果的で中弛みを防いでいます。最後はいきなり世界が変わってしまい、少々違和感を覚えましたが、それを除けば十分満足できます。未読の方は必ず『三月は深き紅の淵を』を読みたくなることでしょう。作品のポイントとしては「窓」ですね。
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ドミノ |
ストーリィ
東京駅。多くの人が行き交う日本の心臓部にある駅です。生命会社の社員たち、元暴走族、警察官、子役の少女たちとその母親、映画関係者、ミステリ連の大学生、警視庁OB、過激派などなどなど。それぞれが、それぞれの行動の果て、行き着いた先の東京駅。事件が起こるも解決するも、この場所です。
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感想
小さな世界が、それでもしっかりと構築されています。日本一大きな駅、私なんかはさっぱり分からない場所、東京駅。その舞台を演出するために、登場人物一人一人にしっかりと命が吹き込まれています。ただ、いきなり沢山の人物が登場するため戸惑ってしまうのが難。その辺りは作者も感じていたのか、人物の個性を強く持たせたり、エピソードに色を付けたりしている様です。が、それでもまだ少々苦しいかな。最も気になったのは終盤に入ってから、どんどんストーリィが軽くなってしまうんです。これだけの世界を作り上げ、その舞台で人物がまさしく生きていた。それをコメディっぽくしてしまったために、本の中の「お話」になってしまいました。勿体ない気がします。
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ライオンハート |
ストーリィ
一人の青年を捜す少女。彼女が青年に出逢ったとき、時を越えて、一枚のハンカチーフと心が渡されます。男の名はエドワード、女の名はエリザベス。二人の出逢いは短くも長く、永遠に。
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感想
時がテーマの作品といったら北村薫を思い出します。最初はちょっと似てる部分があるな、と思ったのですが、世界が全く違います。いきなり歴史ある海外シーンから始まったので戸惑いましたが、二人の出逢いが一気に読み手を作品に引っ張り込みます。様々なキーワード、オブジェクトが時と共に巡ります。時代や設定がころころ変わるため、ちょっと大変でしたが、それなりの纏まりを見せたためすっきりとした感じが残ります。
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劫尽童女 |
ストーリィ
優秀な科学者は、現代の動物を越える存在を作り出した。伊勢崎博士は娘の遙にその能力をうえつける。皆とは異なる、超能力を手にした少女の運命は、秘密組織ZOOから己の命を守ることから始まった。
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感想
一気に読ませる力のある作品です。5つの章に別れていますが、特に最初の章が秀逸。この不思議な世界の設定を説明しつつもそれを感じさせず、ドキドキの展開のままに読者を引きずり込みます。気になったのが、それぞれの章の繋がりが弱い事。ころっと展開が変わってしまうんです。ココに見ると面白いのですが、統一性に疑問を抱きます。短編集と割り切って読む方がベターかも。
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黒と茶の幻想 |
ストーリィ
学生時だの同級生だった男女4人は、時を経てそれぞれに人生を歩み、有る者は家庭を持ち、現在に到っていた。現在の当たり前の毎日へ幾日かのお別れ。4人は都会から遠く離れた島へと向かう。梶原憂理の存在を心に秘めたまま。
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感想
それぞれの人生、それぞれの想い。学生の頃は同じ様な道を進んだ仲間たちでも、卒業後の道はそれぞれ違っていたり、同じ方向を向いていたり。それぞれの人生にスポットを当てつつ、それを全体として一つにまとめ上げるのは、いかにも恩田氏らしい構成と感じます。ただ、少しインパクトが弱い気もします。もう少しまとまったイヴェントとしてのインパクトがあれば、この作品を一つのかたまりとして認識しやすかったと思います。
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