折原一


<倒錯シリーズ>
倒錯の帰結 (講談社文庫)

<黒星警部シリーズ>
七つの棺 (創元推理文庫)
模倣密室 (光文社文庫)

<○○者シリーズ>
沈黙者 (文春文庫)

<ノンシリーズ>
覆面作家 (講談社文庫)
水の殺人者 (講談社文庫)
黒衣の女 (講談社文庫)
鬼頭家の惨劇 (祥伝社文庫)
天井男の奇想 倒錯のオブジェ (文春文庫)

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倒錯の帰結
ストーリィ
→ ふと目が覚めたら舟の上。山本安雄の辿り着いた先は、通称「首吊り島」。宿泊先は島の有力者、新見家。其処には美しい三人の姉妹、雪代、月代、花代がいた。

 そして二つのストーリィが、一つに。

。…かのる来出がとこるす出脱。にとこるれさか書を説小、れさ禁監に室別のトーパアじ同。難災う襲を雄安本山すら暮で会都 ←
感想
倒錯シリーズの第3弾。前からは「首吊り島」、後ろからは「監禁者」が読める二部構成。凝った作りになっていますが、解決が袋とじになっているのは、どうにも好きになれません。袋とじを破って読む、そのことに抵抗のある人もいるのです。そこを考えて欲しいのです。しかし、その中身は面白い。特に最後、全然気付きませんでした。問題は…これを読んでも何のことか分からない人も結構いるのでは…ってことですね。
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沈黙者
ストーリィ
○○者シリーズ第4弾。些細な万引き事件を起こした男が、警察の取り調べに対して自分の名前を名乗らない。それは、検事と会っても、裁判になっても変わらなかった。何故、そこまで頑なに名前を名乗ろうとしないのか。名無しの権兵衛のまま裁判は進み、国選弁護人からも見捨てられた彼には、思いも寄らぬ判決が待っていた。一家惨殺事件と関わりがあるのだろうか。
感想
著者のシリーズの中では、群を抜いてリアリティの高いシリーズ。トリックよりもなによりも、その現実感を気に入っています。本作でもそれは健在。若干小説らしい雰囲気になってしまっている箇所もありましたが、やっぱり好きなシリーズです。名前を名乗らぬ被告人。和久峻三の名作もありますが、実際にそんな裁判もありました。名前に黙秘権はないと云いますが、そもそも黙秘権って、不思議な権利ですね。人が人を裁くというのも不思議ですけれど。
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覆面作家
ストーリィ
事故により大きな障害を身体に残した西田操。妻に勧められた彼は、リハビリのため推理小説を書くことに。その作品が見事新人賞を受賞。しかし次回作が思い浮かばず苦しむ操は失踪してしまいます。7年の時を経て戻ってきた操ですが…。何が現実なのか分からなくなる、作者お得意の展開です。
感想
折原作品を読み慣れていると「いつものパターンね」と感じる展開です。非現実性を感じる世界。その中で一人の作家の混乱が描かれますが、読んでいて感情移入することはほぼナシ。他人事…って感じで気楽に読めます。こういう作品も嫌いじゃないのですが、『冤罪者』みたいなリアリティのある雰囲気が好きです。作者の力がより発揮される気もするんですけどね…。
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水の殺人者
ストーリィ
殺人リスト。そこに書かれていた4人の名前。書き込まれた人は順に襲われ、殺害。さらにリストは更新され、書き加えられる新たな名前。そして事件。何故リストに載ってしまうのか。何故襲われ、殺されるのか。ミッシングリンクは存在するのか。帝都探偵社(伊達兄妹)が登場するサスペンス色の強い作品です。
感想
テンポの良い作品です。殺人リストに従って次々に事件が発生。その分かりやすい構成と、簡潔な表現でするする読み進むことが出来ます。そこでどんな結末が待っているのか。リストに載っている人は繋がりがありそうだったり、なさそうだったり。ちょっと不思議な感じです。最後まで読めば理由は分かりますが…幾らなんでも動機が弱すぎます。そんな視線でで作品を捉えていると、本当の面白さを見逃してしまうのかもしれませんが…。
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黒衣の女
ストーリィ
記憶を失った女が持っていたのは100万円と一つのメモ。メモには3人の男性らしき名前が書かれていました。その3人は次々と殺されます。現場に見え隠れするのは喪服らしき物を着た女性の姿。果たして彼女は何者で、3人の男とはどういう関係なのか。帝都探偵社(伊達兄妹)が登場します。
感想
ミッシングリンクがとりあげられています。例によって第三者的な立場から作品の世界を眺めている印象を受けます。作風なんでしょうね。折原作品にしては比較的まとまった印象ですが、ちょっとアンフェアかも。中途半端なままになっている部分があるのも気になります。
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鬼頭家の惨劇
ストーリィ
都会を離れ樹海の山荘に済む鬼頭家。そこで起きた悲劇とは何なのか。樹海で発見された男は記憶を喪失し、悲劇を記録したノートを所持していた。彼は一体何者なのか。真実は一体何処に…。
感想
400円文庫です。ページ数の制約がある中、二転三転を繰り返す展開。ちょっとごちゃごちゃしてしまった感もありますが、短い作品の中で一定のまとまりを生んでいる気はします。これだけ展開が変わると何が起きても免疫がついてしまいますね。
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七つの棺
ストーリィ
黒星警部、人は彼を迷宮警部と呼ぶ。大のミステリィファンである黒星。何でもない事件まで大きな事件にしてしまう困り者。左遷された先の町で次々起こる密室殺人に挑みます。処女作『五つの棺』に二作を加えた文庫版。

 「密室の王者」:町力士が密室となった体育館で死亡。高さ2mから落下!
 「ディクスン・カーを読んだ男たち」:鍵穴のない書斎で発見された二つの白骨死体
 「やくざな密室」:やくざの抗争で、組長がシェルタ内部で呪い殺される?
 「懐かしい密室」:大作家の休筆宣言と密室。復活の場も密室。ところが…
 「脇本陣殺人事件」:もちろん本陣殺人事件を意識したストーリィ
 「不透明な密室」:建設会社に裏金が絡んで発生した密室
 「天外消失事件」:アベック用のリフトで発生した密室殺人、犯人は何処へ?!
感想
純然たる本格作品です。あまり本格のイメージが湧かない作家さんなので、ちょっとビックリしました。どれも相当のものです。トリック自体は比較的簡単な物が多い様に思います。というのは既存の(有名な)トリックが使われているから。そうそう密室の新トリックは生まれるものではありません。だから作家さんは見せ方を考えます。本作ではどれも展開に一ひねりしてあり、それが良い感じに効いています。題名や設定に古今東西の有名な作品を取り入れて、でもネタバレには決して近付かず。相当の精力を注いで完成させた作品と感じました。
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天井男の奇想 倒錯のオブジェ
ストーリィ
粘質的な厭らしさを持つ老女は、家の敷地内にゴミを撒き散らし、悪臭を放つ。その老女、「天井男が自分を監視している」と区の職員に訴えてやまない。はたして天井男は存在するのか。老女の住む木造住宅の二階は、若い女性が部屋を借りる。夫から逃れるため、身を隠すために。信じられるのは誰なのか。
感想
折原氏が得意とする展開です。江戸川乱歩の名作を意識して書かれたこの作品ですが、前半から中盤まではそこそこ面白いのです。何か変だぞ。どうもしっくりこないな。何故だろう。そう読者に思わせる妙。ただ、やはり今回も最後の結末が近付くにつれ、どんどん冷めた視線になってしまうのです。あっけないと云うか、「あ、そう」と一言で片付けられてしまう淋しさ。もっと一人の人物に集中して、その人生も深く掘り下げて描写すると面白いかもしれません。
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模倣密室
ストーリィ
とにかく密室が大好きで、何でもない事件まで密室事件にしてしまう、その名も黒星警部。一方、部下の竹内刑事は冷静沈着。明後日の方向に進む黒星警部を横目に、事件の真相に迫ります。

 「北斗星の密室」:消防車が現場に着いたのに火事は…あっ火が出た!
 「つなわたりの密室」:マンションで発見された人頭
 「本陣殺人計画」:横溝正史の名作を読んで実際に行動を起こすが…
 「交換密室」:前後不覚に酔ったその日、見知らぬ男から交換殺人を…
 「トロイの密室」:その家では、そこで寝ると必ず死ぬ部屋があった
 「邪な館、1/3の密室」:伯母の財産を継ぐことが出来るのは3人の内の誰か?
 「模倣密室」:逃亡した猿と虹子が持ち込んだ事件
感想
「ウヒョッ、密室だ」の声で喜びを表現する黒星警部。赤川次郎氏の大貫警部と同じ様なタイプの性格ですが、とにかく密室大好き。こう云う分かりやすい性格は読んでいて楽です。「本陣殺人事件」は展開が面白く、結末はいかにも折原氏らしいもの。「交換殺人」は全体的にもっとも折原氏らしい作品ではないでしょうか。気軽に楽しめるのが良いところです。
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