太田忠司


<刑事失格シリーズ>
刑事失格 (講談社文庫)
Jの少女たち (講談社文庫)

<新宿少年探偵団シリーズ>
新宿少年探偵団 (講談社文庫)
怪人大鴉博士 (講談社文庫)
摩天楼の悪夢 (講談社文庫)
紅天蛾 (講談社文庫)

<ノンシリーズ>
さよならの殺人1980 (祥伝社文庫)

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刑事失格
ストーリィ
鴬橋派出所に勤務する阿南巡査。規則を遵守する彼は、同僚の坂崎巡査と警邏中に死体を発見。その後も大小様々な事件が発生。阿南は自分のポリシィに従った行動をとり続けます。やがて種々の情報が、ある人間の犯行を匂わせていることに気付きます。
感想
堅苦しくもぎこちなく、頑張って生きている阿南巡査は魅力的です。彼の持つ色々な過去、それをもっと深く掘り下げて欲しいくらいです。刑事志望ではあるものの、それを積極的に表に出すことには疑問を感じる。そんな性格の彼が巻き込まれた事件。町にたむろする少年たち、行方不明になった犬を探す少女、声を掛けてくれるお肉やさん、そして同僚たち。一つの世界が構築されています。非常に纏まった作品で、些細な事件でも重要だったり、無関係そうな人物でもちゃんと役割を持っていたり。ストーリィのテンポも悪くなく、なかなかの良作です。
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Jの少女たち
ストーリィ
刑事をやめてしまった阿南の元へ訪れた一人の女性、藤森。探偵社に勤める彼女から、阿南は巡査時代に衝突した孝昭が彼を捜していることを知ります。阿南の影響を受け入れ難くも受け入れ成長したらしき孝昭。その彼が失踪している事態に、阿南は目を逸らしつつも、足を踏み入れます。孝昭が残した手紙に書かれた「J」とは何なのか。阿南が目にとめたのは一冊の同人誌でした。
感想
阿南と云う人間の魅力。それを再認識させられます。刑事という職業が似合うとは思いますが、そこから離れても阿南は阿南です。特に最後のシーンは「いかにも」と云う感じで、おまけも付きました。そんな彼の魅力が何処にあるのか。一言で表現することはとてもむつかしいですが、ただ、彼は真っ直ぐです。真っ直ぐすぎるくらいに真っ直ぐです。作中で探偵社の藤森涼子が述べています。「阿南さんの言葉って、重いのよ」、と。
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新宿少年探偵団
ストーリィ
私立聖賢学園中学のはみ出し物、羽柴壮助。密かに想いを寄せる同級生の夢野美香にラヴレタを渡そうとした筈が、幼なじみの神崎謙太郎、長身の七月響子の4人でミスドへ。アイドルにスカウトとされた美香の相談に乗らされた彼らは、結局日曜日に付き添って新宿へ。ところが待っていたのは髑髏王と、そのしもべのθ。何とか襲撃を逃れた4人。いつの間にやら謎のな少年・蘇芳の配下となり髑髏王と対決します。
感想
探偵団って探偵はしないんですね…。数頁読んだところで「SFか?」と不安になり、更に読み進めると「純然たるファンタジー」であることに気付きました。何故ファンタジー文庫から出版されないのでしょうか。非常に謎です。対象年齢は結構低め(ファンタジーだから当たり前ですが)で、小学生中学年向けって感じでしょうか。主人公は中学2年生ですが、行動は小学生のそれ。ただ持っている能力は大人顔負けです。低年齢層が読みやすい様に考えられたためか、細かく章分けされていて、その繋ぎに工夫が見られました。
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怪人大鴉博士
ストーリィ
新宿少年探偵団シリーズの2作目。芦屋能満の一番弟子、大鴉博士が今回の敵。鴉を自在に操る博士は、鮮やかに犯罪を遂行。大きな宝石を連続して奪います。対応に苦しむ警察を尻目に、探偵団の4人はジャン・ポール、蘇芳と共に博士に迫ります。一番弟子の実力や如何に?!
感想
髑髏王の時と違い、博士は悪役らしくありません。盗みはしますが人を傷つけることも好まぬ性格。一応、現在の世の中を破壊したがっているらしいですが、怖さはあまり感じません。正義は誰の元にあるのか、蘇芳の存在が大きな謎のままになっているので、余計に不安。美香の別人格が徐々にその姿を形作って、今後に注目か。壮助は、一人だけしっかりとと青春しています。
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摩天楼の悪夢
ストーリィ
新宿少年探偵団シリーズの3作目。前回対決した大鴉博士のアジト、その不思議なビルを調査するのが今回の目的。世間はクリスマスだと云うのに、高いセキュリティを誇るビルに入り込んで調査を行う4人。パーティもそこそこに管理システムへの侵入を試みますが、その裏では着々と復讐の計画が進行していました。
感想
限られたスペース、新宿の大きなビルが舞台です。そのなかで繰り広げられる復讐劇。調査に来た4人はしっかりと巻き込まれてしまいます。その中で4人それぞれ得意とする能力を駆使して立ち向かいます。そして美香が徐々に真の姿を見せ始めた感じ。このシリーズのキーパーソンでしょうから、今後も目が離せません。
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紅天蛾
ストーリィ
新宿少年探偵団シリーズの4作目。今回の的は大鴉博士の孫・紅天蛾。無邪気に、悪戯気分で事件を起こします。性格は蘇芳と同じく傍若無人な唯我独尊。4人は一致団結してこれに当たりますが、今回は蘇芳も積極的に行動をとります。新たな勢力も顔を出しつつ、蘇芳の存在も気になりつつ。美香や響子の秘密も思わせぶりで、謎が深まります。
感想
能力はあるけれど幼い紅天蛾。無邪気なだけに相当タチが悪い相手です。徐々に変わり始めた探偵団の4人。ナイフを捨てた壮助、謎がさらに深まる美香、秘密があるらしい響子。謙太郎だけは変化が乏しいですが、これから何かあるのでしょうか。テンポ良く進むストーリィ、そこに上手く溶け込んでいるのが、事態を完全に達観している阿部警部補の存在。結構重要な位置にいる人みたいですが、今後どの様な役割を担うのか。興味があります。
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さよならの殺人1980
ストーリィ
ジョン・レノンが殺された日、あなたは何をしていましたか? 私は、人を殺しました。最愛の人を…。渡された原稿は大学で起きた殺人が中心なった物語だった。形だけの学生運動、恋愛、そして殺人。真実はどこにあるのだろうか。
感想
ストーリィの中心となるのは、渡された原稿です。その原稿の内容を読み進めていくってことなのですが、これがちょっと尻すぼみ。フォローはあるのですが、最後にフォローされるだけで良いのでしょうか。読者は大半を釈然としない物を感じながら読み進める訳わけであり、もう少し物語の中途で、納得,説得,特徴付けが必要ではないでしょうか。題材や設定はとても面白いだけに、勿体ない感じがします。
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