連城三紀彦


<ノンシリーズ>
戻り川心中 (光文社文庫)

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戻り川心中
ストーリィ
第34回日本推理作家協会賞(短編賞)受賞作品。花に秘められた魅力で色づけられたミステリィ。

 「藤の香」:隣に住んでいる代書屋は事件の犯人なのか
 「桔梗の宿」:被害者の指の間には桔梗の花が握りしめられていた
 「桐の柩」:兄貴の手の代わりを務めることになり、やがては殺人を…
 「白蓮の寺」:幼い頃の記憶、母は確かに誰かを殺した
 「戻り川心中」:歌人の心中事件は失敗に終わり二人の女性が死んだ
感想
表題作はとても有名な作品で期待していましたが、作品の中に今ひとつ入り込むことができませんでした。それは歌のせい。主人公の回想と歌が、上手く結びついているのですが、挿入されている歌とか詩にたどり着くと、ストーリィ展開を早く知りたいがために読み飛ばしに近いくらい表面をなぞってしまうクセが私にはあるのです。損な読み方をしてしまいました。面白かったのは「桐の棺」と「白蓮の寺」。「桐の棺」はとても完成度の高い作品で、一切の無駄がなく、起承転結のしっかりした作品です。「白蓮の寺」は最もミステリィの要素が強い作品で、雰囲気がそれにマッチしています。
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