蘇部健一


<ノンシリーズ>
動かぬ証拠 (講談社文庫)

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動かぬ証拠
ストーリィ
一枚の絵が全てを説明付ける短編集。

 「しゃべりすぎの凶器」:やくざに殺人の罪をなすりつけようとする
 「再会」:生き別れた一卵性双生児の兄弟がアリバイトリックを
 「転校生は宇宙人」:コンビを解消した漫画家の明と暗が引き起こす殺人
 「逆転無罪」:ついつい偽りのアリバイが口をついてしまったが…
 「天使の証言」:頭の上がらぬ妻の女社長を殺そうとする部長
 「サム・スペードの憂鬱」:酒を飲んでいた相手を女のことで突き飛ばしてしまう
 「逃亡者〜片腕の男」:ダイイングメッセージはカタウデノオトコ
 「リターン・エース」:テニスとサッカーの試合と殺人と
 「宇宙からのメッセージ」:ミステリーサークル製作を目撃され恐喝
 「宿敵」:重役の娘と結婚するため、水商売の女を殺す計画を立てる
 「変化する証拠」:ダイイングメッセージはどれが正しい?
感想
展開は単純。登場人物も実に在り来たりで余分なところを見せない。読者はストーリィをすんなり受け入れられる。そして…最後に一枚の絵が登場! 上手く行けば可成り面白い作品です。一番初めに載せられた「しゃべりすぎの兇器」は、もっともこの試みが上手くいった作品でしょう。なるほど、と、この短編集のルールが分かります。中には絵で説明付ける必要が必ずしもない作品も含まれています。が、文章で説明するより一瞬で読者に理解させる。その挑戦は或る程度の成功が感じられます。このシリーズ、続けても面白いと思いますが、再読しようとは思えないのが一つのハードルでしょう。
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