高田崇史
<QEDシリーズ> |
QED 東照宮の怨 (講談社文庫) QED 式の密室 (講談社文庫) QED 竹取伝説 (講談社文庫) QED 龍馬暗殺 (講談社文庫) |
<千葉千波シリーズ> |
試験に出るパズル (講談社文庫) 試験に出ないパズル (講談社文庫) |
<ノンシリーズ> |
麿の酩酊事件簿 花に舞 (講談社文庫) |
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QED 東照宮の怨 |
ストーリィ
QEDシリーズ第4弾。三十六歌仙絵を所持している人たちが次々と被害に。一人目は自宅に保管していたのを盗まれ、二人目は四肢を切り刻まれて殺害。無論三十六歌仙絵も奪われます。小松崎にひっぱられて事件に関わることになったタタルさん。わざわざ日光東照宮まで、三十六歌仙絵の調査に向かいます。折しも学薬旅行に来ていた奈々と合流。東照宮と三十六歌仙絵の、調査を進める彼らでしたが、遂に三人目の被害者が。しかも再び身体は切り刻まれていました。
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感想
題名にも登場する「東照宮」。今回はこれがメインか、と思っていたら予想していたよりは扱いが少ない。寧ろ三十六歌仙絵に関する検証が多い様です。タタルさんの推理は相変わらず凄くて、強引で、納得できるような出来ないような。それでも歴史好き、ミステリィ好きには堪らない展開といえるでしょう。奈々とタタルさんの出逢いにも少し触れています。
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QED 式の密室 |
ストーリィ
QEDシリーズ第5弾。タタルさんこと、桑原崇と小松崎の出会いを描いた作品。文学部の新入生・弓削和哉が持ち込んできた事件の話が切っ掛けで、陰陽師・式神・菅原道真に絡んだ謎に挑むことに。10年前の殺人事件の真相とは。
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感想
比較的短いお話のため、すっきりした印象。レギュラー人物の出会いをわくわくしながら読めるのは、シリーズ物の醍醐味です。とはいえ、蘊蓄だって勿論健在。説得力のある説も、ちょっと苦しいと思われる説もありますが、それもまた良し。「あれ、云われてみれば…」と思う指摘が多々あるのは事実です。
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QED 竹取伝説 |
ストーリィ
QEDシリーズ第6弾。竹が光るその場所で、交通事故が起こる。竹が光る。何故? その場所ではこれまでにも同じ様なことが。何故、竹は光るのか。何故、事故が起こるのか。『竹取物語』に隠された真実との関係は。タタルの推理が走る。
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感想
蘊蓄の量はシリーズの中でもトップレベル。殺人事件を扱ったミステリィとしてのQED、歴史を扱ったミステリィとしてのQED。そのバランスは1対1くらいでしょうか。二つの要素がバラバラでも成立するくらいの印象です。それを是とするか非とするか、とても微妙なところです。竹が光る謎はとても面白く、謎解きも悪くありません。その背景には歴史あり。むつかしい作品だと思います。
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QED 龍馬暗殺 |
ストーリィ
QEDシリーズ第7弾。タタルと奈々の現れるところ、事件は起こる。大学の後輩・全家美鳥の実家を訪れた面々は、土砂崩れで村に孤立してしまう。閉ざされた空間の中で起きた殺人事件。伝説に引きずられた雰囲気を持つ村で、何が起きているのか。そんな異常事態の最中でも、タタルと奈々の妹・沙織を中心に、坂本龍馬の暗殺に関する考察が進められた。
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感想
日本の若者が最も国のことを想い、それぞれの立場で精一杯頑張った時代、幕末。魅力ある人物が大勢いますが、その中でもトップクラスの人気を誇るのが坂本龍馬です。私もご多分に漏れず好きです。龍馬がいたからこそ、今の時代があり、龍馬があのタイミングで暗殺されたからこそ、今の時代があります。暗殺されたことは悲しいことですが、たとえば龍馬が暗殺されず生き延びたら、今の日本の姿は全く別の物だったかも知れません。精一杯激動の時代を生きた彼らに対し、高田氏がしっかりと尊敬の念を抱いている空気が文章から伝わってきます。色々な考察がなされても、たとえそれが好きな人物が悪者になるような内容であったとしても、不快感を覚えることがありません。だから好きです、QED。
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試験に出るパズル |
ストーリィ
千葉千波シリーズの第1弾。語り手のぴいくん(八丁堀・本名不明)、眉目秀麗の千葉千波、警察官の息子饗場慎之介の3人が、パズルや事件に取り組みます。
「9番ボールをコーナーへ」:麻薬取引の場所を示す暗号は? 「My Fair Rainy Day」:消えた黒真珠を探す3人 「クリスマスは特別な日」:爆破魔が次に事件を起こす場所を考える 「誰かがカレーを焦がした」:交代でカレーの火の番をした筈が… 「夏休み、または避暑地の怪」:すいか泥棒の少年を追う |
感想
一編ごとに事件とパズルが組み込まれた作品。パズルは千波が出す論理的な思考を要求される物と、ぴいくんが好きな直感力を要する二種類があります。どちらも面白い。そんなところに事件です。更に歴史的な事象を引用したり。とにかく色んな意味で面白い作品です。問題なのは、パズルが出るとそこで何分も読書が止まってしまうこと。ついついストーリィそっちのけで考えてしまいます。
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試験に出ないパズル |
ストーリィ
千葉千波シリーズの第3弾。浪人生活を送るぴいくんは、従兄弟の千波君、友人の慎之介と3人で、パズルや事件に取り組みます。
「山羊・海苔・私」:ひったくりを追い、2人しか乗れない舟で四苦八苦 「八丁堀図書館の秘密」:図書館で行われる麻薬取引の顔合わせ 「亜麻色の鍵の乙女」:千波君の学園祭に参加するぴいくんと慎之介 「粉雪はドルチェのように」:クリスマスと教会と雪と子供たち 「もういくつ寝ると神頼み」:互いの名前が正しく云えない老人たち |
感想
千波君と慎之介が好きな「純粋論理的パズル」と、ぴいくんが好きな「直感的パズル」、それらを加えた上で一つのミステリィ短編集に仕立て上げてしまうところは流石です。例によって、パズルを考え出すと、ストーリィ的にはピタッと停滞。今回も川を渡ろうと必死になって考えてしまいました。論理的なパズルも、直感的なパズルも、ミステリィのトリックも、どれも同じ楽しさがあります。
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麿の酩酊事件簿 花に舞 |
ストーリィ
名門・勧修寺家の当主・文麿。家族は祖母のまつゑと、執事の大原。祖母はことある毎に、「結婚しろ」と云う。そりゃ、結婚したいのは山々なれど、婚姻家訓なるものが問題なんですが…。お酒に弱すぎることとか、他にも問題はあるけどね。
「ショパンの調べに」:ピアノ教室に通うことになった文麿は先生に一目惚れ 「待宵草は揺れて」:祖母の代わりにお茶会に行くことになった文麿 「夜明けのブルー・マンデーを」:女性バーテンダ目当てにバー通いの文麿 「プール・バーで貴女と」:ビリヤードの常連客になった文麿と女性ハスラ |
感想
マンガを読んでいる様な感覚を受ける作品です。酒にはめっぽう弱いのに、酔いが過ぎると覚醒して、見事な推理で女性を目覚めさせる文麿。目覚めた女性は文麿の元から消えていく。そんな展開ばかりですが、これが侮れません。ピアノ,茶道,カクテル,ビリーヤードと、全然違う世界の女性が登場しますが、妙に専門的だったりするのです。嫌味ではない程度に。文麿の推理は、根拠をすっ飛ばし、かなり飛躍した想像です。でも、そういう展開って、純粋に楽しいもの。同じ展開の作品が並び、リアリティは欠如していて、先が読めるストーリィですが、それでもワクワクする何かがこの作品に潜んでいます。文麿はシティ・ハンター・冴羽リョウに似ている気がしますが…気のせいでしょうか?
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