竹本健治
<牧場智久シリーズ> |
囲碁殺人事件 (創元推理文庫) 将棋殺人事件 (創元推理文庫) トランプ殺人事件 (創元推理文庫) 凶区の爪 (光文社文庫) 妖霧の舌 (光文社文庫) 緑衣の牙 (光文社文庫) 風刃迷宮 (光文社文庫) |
<ノンシリーズ> |
フォア・フォーズの素数 (角川文庫) |
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囲碁殺人事件 |
ストーリィ
ゲーム三部作、第1弾。IQ208の天才少年・牧場智久、智久の姉でミステリィ通の典子、大脳生理学者の須藤信一郎が登場。囲碁のタイトル戦の二戦目、「碁の鬼」と呼ばれる槇野九段が首無し死体となって発見。小川道的の再来とまで称される智久(通称トム)は、槇野九段の大ファン。事件の解決を目指し、推理を展開します。典子,須藤の二人も、それぞれの見解から推理を導いていきます。
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感想
簡単ながら碁のルールまで説明してくれます。碁を数学的に考察したりもしていて、興味深いのですが、真剣に考えるのはちょっと大変かもしれません。勿論読み流しても全く問題はありません。「天才少年」が登場する作品は、往々にして人間離れした様を見せるものですが、本作は天才であっても普通の少年です。少年らしさを多分に見せるのは、新鮮にすら感じます。3人が仲良く推理を進める感じですね。どこかほのぼの。
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将棋殺人事件 |
ストーリィ
ゲーム三部作、第2弾。天才少年・牧場智久、姉の典子、大脳生理学者の須藤信一郎が登場するシリーズ第2弾。六本木界隈で流行っている噂話『恐怖の問題』。三人はその裏側をさぐります。詰め将棋の盗作問題、大地震、屍体発見。一体何が起こっているでしょう。
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感想
やっぱり智久は天才って云う感じではありません。我々の周囲にいても不思議がない程度の天才、と云ったら良いでしょうか。事件に積極的なのは姉の典子。今回も行動力に満ち溢れています。智久も親衛隊の力を借りて調査を進めますが、見返りを要求され…。須藤先生はそんな二人に比べると、一歩控えた感じです。ところが推理を進める上で絶対に欠かすことの出来ない存在。この辺りのバランスが良いのでしょう。
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トランプ殺人事件 |
ストーリィ
ゲーム三部作、第3弾。天才少年・牧場智久、姉の典子、大脳生理学者の須藤信一郎が登場するシリーズ第3弾。ブリッジ愛好家の4人。彼らがペアを入れ替えてゲームを進めたその日、メンバの女性が部屋の中から消失してしまった。やがて発見された、女性の死体。彼女は如何にして部屋を出たのだろうか。
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感想
智久の出番はとても少ない。シリーズ作品であることを忘れてしまうくらいです。ただ、シリーズ作品として捉えなければ、決してバランスの悪い作品ではありません。日本では珍しいトランプを楽しむ人たち。そのメンバであり、状況を綴る一人の精神科医。興味を惹く構成です。作品中、かなりのページをトランプ,ブリッジに割いています。懐かしい内容が多かったのですが、殆ど斜め読み。これを熟読しろと云うのは、少々無理があるのではないでしょうか。
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凶区の爪 |
ストーリィ
智久・類子シリーズ第1弾。若干17歳で、囲碁の主要タイトル・本因坊となった智久。その疲れを癒すため、記者の槇村、槇村の従兄弟の類子らと共に、四条家を訪れることに。しかし連戦の疲れに襲われた智久は高熱に倒れてしまう。
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感想
古い田舎の雰囲気。登場する大勢の美しい女性。と云えばいかにも「本格」っぽい感じですが、実際はもっと軽い感じ。謎解きとか、トリックとか、そういう展開ではない様に感じます。それは探偵がいないから。動き回る類子、考える智久。しかし、謎を解くとか、犯人を見付ける、とは何かが違う。巻き込まれてしまった。サスペンス的な要素が強いのではないでしょうか。
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妖霧の舌 |
ストーリィ
智久・類子シリーズ第2弾。若手騎士の登竜門・覇王戦。決勝まで勝ち進んだ智久の相手は、一癖も二癖もある桃井四段だった。ちょうどその頃、世間ではパソコンを使った怪文書が出回っていた。そして決勝の日、桃井四段は時間になっても会場に現れず、世田谷区では殺人事件が発生した。
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感想
怪文書。そこから凡人の類子が動きます。天才の智久はと云うと、早々に桃井四段が失踪するため、これまた早期に事件を直視。しかし、天才と雖も、探偵業に関しては凡人です。もう少し天才らしいキレを期待してします。こういうのんびり感のある作品も、決して嫌いではありません。が、智久は天才…と云うところを、囲碁以外で少し表現して欲しいと思います。
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緑衣の牙 |
ストーリィ
智久・類子シリーズ第3弾。星辰女子学園。人里離れた北海道の森の中。一般社会から隔絶されたその空間で、一人の女生徒が水死体で発見される。自殺。しかし一部の生徒はその死に疑問を抱く。一方、スランプに陥ってた智久は、脱出の兆しを見せ始める。タイトル戦の最中、類子が星辰の友人に会いに行くのに同行するが…。
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感想
女子校を部隊としたミステリィ。このシリーズは、本当に色々な部隊が用意されています。それは決して目新しい物ではなく、寧ろ王道的なもの。それを一つのシリーズで幾つもこなす辺りが挑戦だと思います。神秘的で閉鎖的で伝統が生きている空間。その部隊だからこそあり得る展開、結末ではないでしょうか。
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風刃迷宮 |
ストーリィ
智久・類子シリーズの外伝的ストーリィ。智久の姉・典子は爆発事故に遭遇するも、運良く無事に逃げ出すことが出来た。が、その後ストーカに付きまとわれ、精神的に追いつめられる。六本木では不可解な事件が頻発。そこで目撃される人物像は智久に似たものだった。
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感想
智久の出番が殆どありません。姿をちらっと見せるのですが、それだけ。それが妙に気になります。追いつめられる姉の典子。智久のファンの少女の行動、心境。どうもスッキリしない作品で、そこに魅力を感じます。智久の影ばかりがちらちらと。シリーズ作品でありながら、若干距離をとったスタイルが絶妙です。結末は好みでしょうけれど…。
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フォア・フォーズの素数 |
ストーリィ
ショートショートから、牧場智久シリーズまで。多岐にわたる作品が、ギュッとつまった作品です。
「僕の死んだ宇宙」、「熱病のような消失」、「パセリ・セージ・ローズマリー・そしてタイム」、「震えて眠れ」、「空白のかたち」、「非時の香の木の実」、「蝶の弔い」、「病室にて」、「白の果ての扉」、「フォア・フォーズの素数」、「チェス殺人事件」、「メニエル氏病」、「銀の砂時計が止まるまで」 |
感想
牧場智久シリーズはタイトルで一目瞭然「チェス殺人事件」。純然たる本格ミステリィです。それなりに面白く、しかし想像を超える程ではありません。逆に想像を遙かに上回ったのが表題作の「フォア・フォーズの素数」。フォア・フォーズとは数合わせゲームの名前。この作品は、果たして物語と呼べるのでしょうか。主人公は、どんどんゲームに熱中し、ただひたすら解いていきます。それが描写されているだけの、不思議なストーリィ。でも、さらに不思議なのは、そこに引きつけられるのです。魔法の様な作品ですね。
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