辻真先
<キリコ・薩次シリーズ> |
仮題・中学殺人事件 (創元推理文庫) 盗作・高校殺人事件 (創元推理文庫) 改訂・受験殺人事件 (創元推理文庫) |
<ノンシリーズ> |
犯人 (創元推理文庫) |
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仮題・中学殺人事件 |
ストーリィ
犯人は読者である。冒頭からそう宣言されます。中学生の可能キリコ(スーパー)と牧薩次(ポテト)と、キリコの兄で記者の克郎がストーリィの中心。出版界で発生した殺人事件と女流作家のアリバイ。中学校で起きた生徒殺害事件。二つのストーリィが螺旋の様に絡み合い、読者は犯人となります。
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感想
「意外な犯人」のメジャなパターンがこの図式です。過去に何度か出会ったことがありますが、正直どれも好きになれません。どうしても誤魔化された様な気になるからです。その点本作は幾分良い様に思います。が、その図式に当てはめようとして、ストーリィに無理があります。全体的にとてもギクシャクした感じを受けます。よく云えば意欲作ですが、別にそんな図式に当てはめる必要があったのか、疑問です。
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盗作・高校殺人事件 |
ストーリィ
薩次・キリコシリーズ第2弾。薩次とキリコは高校生になっています。薩次が一人で映画を見に行った帰り、駅で爆破事件に巻き込まれてしまいます。幸い軽傷だったものの入院。同室になったのは同年代の三原恭介、上野武の二人。退院した彼らは彼女同伴で恭介の実家、鬼鍬村へ行くことになります。
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感想
今回も大いなる挑戦があります。が、それは不要に感じます。薩次とキリコのやりとりや推理は、それだけで十分に面白い。無論、挑戦することによって薩次たちのストーリィが損なわれているわけではないので、趣向を凝らすのも構いません。が、必要なものではないでしょう。展開の妙。どんどんひきこまれます。
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改訂・受験殺人事件 |
ストーリィ
薩次・キリコシリーズ第3弾。校舎の3階から飛び降りたはずの男子生徒が、影も形もなくなってしまう。しかも、それから数時間後、男子生徒は死体となって校庭に出現。ポテトとスーパーは事件を調べ始めめるも、第2の事件が発生する。犯人は誰なのか。
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感想
今回の特徴はポテトだけでなく、キリコの手記もあること。変化があるのは良いのですが、少々ごちゃごちゃした感じも受けます。一長一短。ストーリィは、消えた飛び降り生徒から事件が広がります。好みの問題かもしれませんが、「大きな一つの謎で一つの作品」と云うスタイルの方がすっきり纏まるのではないでしょうか。飛び降り事件だけで最後まで引っ張って欲しかったと思います。
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犯人 |
ストーリィ
若狭いさお。推理小説作家。筆が速く、多くの作品を世に送り出すタイプのベテラン。佐々木環。推理小説作家。遅筆ながらも、クラシカルな雰囲気の本格ミステリィを執筆する新人。相容れない二人の推理小説作家が、ある日決闘を行うらしきことを聞きつけた編集者たちは、若狭いさおの別荘へと向かう。
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感想
ミステリィ作家の決闘。その先には勿論事件が。作風の違う二人の作品も取り込み、重要な二人の人間像をイメージさせてくれます。事件が起きる舞台や、その背景、人物関係等、背景やディテールをしっかりさせようと云う著者の意識が伝わってきます。緊迫感はあまりないので、軽い気分で読みたい時に良いでしょうか。
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