上野哲也
<ノンシリーズ> |
海の空 空の海 (講談社文庫) |
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海の空 空の海 |
ストーリィ
色々なエネルギィ。人のもつ内なるエネルギィを、角度を変えて描いた短編集です。
「海の空 空の舟」:人気のなくなった町から去る少年が引き上げた舟 「鯉のいた日」:世間は休みの大型連休、仕事に疲れて帰った家には鯉が居た 「雨を見たかい」:痴呆症が始まった母の世話をすることになった2日間 |
感想
表題作の「海の空 空の舟」は小説現代新人賞受賞作。中学生の主人公・辰雄は、溢れんばかりのエネルギィを持て余しています。それが色々な行動で表現されていて、変化に富んだ良作です。長編にしても面白かったかも。「鯉のいた日」は仕事に疲れ、周囲が鬱陶しく感じる前半の雰囲気。そして鯉。その後は少しずつ、表面から氷が溶けていくかの様。心の変化が興味深い作品。「雨を見たかい」は、視線の問題。目を背けるか、真っ直ぐ見据えるか。母の問題だけでなく、父が亡くなった時、受験の時、学生生活の時・・・そして今。やがて世界の重さが変わります。
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